救命医療機器の国家備蓄が枯渇寸前の危機的状況の中、米国時間4月2日にトランプ大統領は、国家安全保障の重要な法律を活用し、新たな企業に人工呼吸器の製造を指示することを示唆した。
国内で新型コロナウイルスの蔓延を許した無数の初期対応の誤りを政権が正そうとする中、トランプ大統領が国防生産法(DPA)と呼ばれる法律の適用をためらっていたことは多くの人々を困惑させている。前例のない公衆健康危機は、米国で20万人の命を奪うと予測されている。
「本日私は、国防生産法に基づき、国内製造メーカーが国民の命を救うために必要な人工呼吸器を確実に作るための指令を出した」とトランプ氏が声明で語った。「保健福祉省長官および国土安全保障省長官に対する私の指令は、General Electric(ゼネラル・エレクトリック)、Hill-Rom(ヒル・ロム)、Medtronic(メドトロニック)、ResMed(レスメド)、Royal Philips(ロイヤル フィリップス)、Vyaire Medical(バイエア メディカル)といった国内メーカーが、ウイルスを打ち負かすのに必要な人工呼吸器の製造に必要な物資を確保するために役立つだろう」。
この指令によって、健康福祉省のAlex Azar(アレックス・アザール)長官は「あらゆる行政機関を利用して」製造の取組みを指示できるようになる。
「大統領は、米国の人々や医療従事者がPPE(個人防護具)や薬品など必要なものすべてを確実に入手できるために、DPAを使うつもりだ」とホワイトハウスのピーター・ナヴァロ大統領補佐官が木曜日の説明会で語った。
DPAに署名しながら実際に利用しないという大統領の意図を巡る当初の大きな混乱の後、トランプ氏は方針を転換したとみえ、米国時間3月27日にゼネラルモーターズに同法を適用した。同社は国家の指導がないときから人工呼吸器の製造を開始する意思を発表していた。その変容の二日前、トランプ大統領は、GMと人工呼吸器メーカーのVentec Life Systems(ベンテック・ライフ・システムズ)が最大8000台の人工呼吸器を製造する提携を結ぶことを発表する態勢にあった。その発表は、ホワイトハウスと米連邦緊急事態管理局(FEMA)がこの取組みの10億ドルという金額にたじろいだために中止されたと報じられている。
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トランプ大統領は、人工呼吸器、マスクその他医療用品の危機的不足状態について、再三疑問を投げかけていた。「一部で言われている多くの数字は実際よりも大きいのではないかと私は感じている」とトランプ氏が先週にFox NewsのホストであるSean Hannity(ショーン・ハニティー)氏に語った。「私には4万個とか3万個もの人工呼吸器が必要だとは思えない」。トランプ大統領はN95マスクやその他の一般的防護具の全国的不足についても繰り返し疑問を呈し、ニューヨークの医療施設はマスクを紛失したか、盗難を許したのではないかという根拠のない説を示唆した。,
国が今も命に関わる救命用品の不足と戦っている中、政府のDPAに基づく指令は、対象となるあらゆる企業が政府との契約を優先するよう強制することになる。同法はまた、連邦政府が力づくで、サプライチェーンに必要な物資をつくって提供させることも可能にする。この法の力の大部分は、国家的危機の中で物資を動員するために使われているが、指令が遂行されるためには、新たに選ばれたメーカーをトランプ政権が積極的に管理、調整していく必要があるだろう。
トランプ大統領がDPAに基づく指令を出し渋っていたのは、民間企業がホワイトハウスの指示を受けることなく、自力で立ち上がることに全幅の信頼をおいていたからだったのだろう。実際一部の企業はまさにそれを行ったが、新たな製造の取組みは需要を満たすにはほど遠く、流通が解決していないことは間違いない。感染拡大が国中の地域を襲うなか、多くの州は命にかかわる救命用品を持たずに戦っている。ニューヨークで次々と明らかになる深刻な健康危機は、悲惨な近未来の可能性を垣間見せている。
画像クレジット:Hiraman / Getty Images
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook )