ドリコムが2014年8月から運営している学生向けスタートアップ支援プログラム「Startup Boarding Gate」が、発足から約半年を経て実を結びつつある。1月14日に開催されたDemo Dayでは法人化した6つのチームがプロダクトを披露した。
どのチームにもドリコム社長の内藤裕紀氏が貴重な時間を割いて毎週のようにアドバイスしたそうで、「ピボットしたり、喧嘩したり、本当にいろいろあった……」と愛おしそうに振り返った。とはいえ、その6チームの中にもプロダクトの完成度や目指すビジョンのインパクトに差はあった。この記事では筆者個人の目から見て特に輝いていた3つのプロダクトを紹介しよう。
スマホ版「Flash」目指す
まず1つ目はモバイル環境に特化したライブラリ「CodeNext」。電気通信大の脇田英さん、谷口泰史さんのチームだ。PCインターネットにおいては異なるブラウザで画像や動画などのコンテンツを提供するためにFlashが用いられているが、それのスマホ版を目指すという。つまりiOSやAndroid、およびそのバージョンの差異を吸収するようなライブラリである。
海外にはいくつかの競合がある。代表的なのは「moju」と「Fyuse」だ。しかしmojuはiOSのみ対応、FyuseはAndroid版でベータのみ。どのライブラリもAndroidに完全に対応できていない。CodeNextはいち早くきっちりとAndroidに対応することで差別化を図る考えだ。さらにスマホに搭載されている重力センサーなどをフル活用し、アプリ操作に応用するような仕組みも付随させる。
彼らはすでにオリジナルの動画アプリ「ParaPara」をリリースしている。動画を撮影してアップロードすると、スマホの傾きに合わせて動き出す画像が作れるというものだ。
これをECサイトに応用すると、スマホを傾けることによって商品写真を3Dでぐりぐり見せたり、ピアスなどのアクセサリーが揺れたりなどの表現が可能になるという。さらに実際にバナー広告に用いたところ、GIFとはまた違った表現力を見せ、クリック率で10%の改善があったそうだ。
自転車の変速をオートマ化するハードウェア
2つ目は専修大学の藤堂洋弥さん、青柳龍志さんのチームが開発した、ロードバイクの変速をオートマ化させるハードウェア「Canaria Bicycle Compenents」だ。ロードバイクは一般的にハンドル部に付いているシフトレバーでギアチェンジする。ギアを重くしたり、軽くすることで、ペダルの回転を一定に保ち、それによって効率的にスピードを出せるようにする。
そういったギアチェンジを、自動車のオートマ車のように速度にしたがって自動化するのが、Canaria Bicycle Componentsの果たす役割だ。すでにロードバイクの自動ギアチェンジシステムは製品化されているが、とても高額なコンポーネントを必要とするのが課題だった。
Canaria Bicycle Componentsはスマホアプリとロードバイクのギア部分に取り付ける小型機器で構成される。ペダルの回転数をセンサーで計測し、回転数が上がると自動で重いギアに切り替わる仕組みのようだ。いまどのギアを使っているかは常にスマホの画面で目の前に表示されるそうだが、この部分はデモでは見られなかった。またユーティリティソフトにより細くギアチェンジの設定が可能。走行データや設定データの共有も行えるようになるという。
自転車乗りを走行に集中させ、より安全なサイクリング環境を提供するのが目標だという。いずれはロードバイクだけではなく、いわゆるママチャリのような低価格な自転車にも対応させる予定だ。価格は当初3〜5万円を想定し、工賃なども含むと10万円程度かかる従来の自転車部品メーカーへの優位性を保ちたい考えだ。
デモでは実際にロードバイクが用意された。ペダルの回転数を上げると、たしかにシフトレバーに触れていないのに、ギアがガチャガチャと切り替わっていく。ペダルをこぐ足をゆるめると、再びギアは戻っていく。この感覚はとても新鮮だった。
動画版Gunosy!? 観たいはずの動画を人工知能が届ける
3つ目は人工知能による動画キュレーションサービス「Liaro」。代表の花田賢人さんはチームラボで働きながら自然言語、画像解析などを研究している。その他のメンバーも全員がエンジニアで、各々が何らかの解析、および人工知能分野の研究に携わっているそうだ。
Liaroは動画版Gunosyといったイメージで、オンライン上のあらゆる動画をユーザーの好みに合わせて毎日配信する。バイラルメディアの場合、1日の平均動画視聴時間は1〜2分程度だが、Liaro経由で触れた動画の場合はそれが1日19分にも拡大すると花田さんは話した。
今後はアルゴリズムの実装を進め、スマホアプリやPCビューの開発に取り組む予定だという。価値ある動画はまだまだ埋もれがちで、テキスト中心のウェブページと違い探す手段も限られる。人工知能によって価値あるコンテンツを発掘し、届けることができるのではないかと考えている。