PCの登場、インターネットの興隆、モバイルへのシフトというように新しいプラットフォームが広がる時期には多くのイノベーションが起こる。次の大きなトレンドは何かというと、IoTとかウェアラブルというのがテック業界の緩やかな共通認識なんだと思うのだけど、同じぐらい見逃せないのが、急速な進展を見せている「UAV」(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)市場だ。
平和な日本ではピンと来ないところもあるが、UAVはもともと軍事目的で開発が進んでいて、無人偵察機や無人攻撃機などのゾッとする応用がある。翼のある飛行機型のUAVは開発も機体も高価だったが、そこにDIY市場のノリで安価で高性能なクワッドコプターが登場してきたことで、一気に盛り上がってきた感があるのはTechCrunch Japna読者ならご存じの通り。昨年のクリスマスに突然Amazonのジェフ・ベゾスCEOが「Amazon、無人飛行ドローンによる配達を実験中」と世間を驚かせたりもしたのも記憶に新しい。ヨーロッパからは兵器利用禁止に関する議論も聞こえてくるし、最低限のルール作りのもとに多くのスタートアップ企業が生まれて、実験的アイデアを試し始めているとも聞いている。
クワッドコプター、もしくはドローンと総称される複数のローターを搭載する小型の自動飛行デバイスは、UAV市場の一部でしかないが、室内でも飛ばせる機動性の高さと安定性、操縦の容易さなどから一気に注目を集めている。GoProのようなカメラの登場や、スマフォとともに発展した多数のセンサーデバイスの高性能化が相まって、ドローンは「空飛ぶ無人高性能コンピューター」という感じになってきた。
UAV市場では、例えば広大な農場を空からモニターするような応用や、商業地図制作、考古学の発掘調査といった応用がある。FPS的なUIを使ってピラミッドにドローンを潜入させるなんていいよね。MITの広大な複雑な大学キャンパスを飛びながら音声で案内するSkyCallなんていうドローンの応用も話題になった。商業利用や研究利用がある一方で、ホビイスト向けのDIY市場もある。そして、商業向けUAVとDIY市場をつなげようとするスタートアップ企業の「Airware」が多くの資金調達して注目されていたりする。Airwareは2011年にMITの学生だったジョナサン・ダウニー氏が創業した会社だが、2013年にY Combinatorに参加し、デモ・デイでAndreessen HorowitzやGoogle Venturesから1070万ドル(約10億円)の資金を調達するというY Combinatorの歴史を通しても最大のシード後の調達額を記録している。さらに2014年に入ってドローンの商業利用について、利用可能地域や高度などの法整備の議論が進む中、Airwareは2014年7月に名門VCのKPCBからシリーズBとして2500万ドル(約25億円)の資金調達をして、さらに注目を集めた。Airwareは異なる機体やセンサーを超えて、統一したプラットフォームを提供する開発ボードとソフトウェアを提供している。UAVの商業利用とDIY市場を結び付けるカギとなるのかもしれない。
AirwareのダウニーCEOは、ドローンが殺人マシーンを想像させる状況を変えるべく、密猟による絶滅危惧のあるサイの観察プロジェクトをアフリカで行うなど、テクノロジーそのものには善悪はなく、ドローンには良い応用が多数あると主張している。例えば山スキーの遭難客など災害時に被災者を捜索するようなこととか、ピザ配達など物流への応用、交通量調査に使う、農場管理に使うなどだ。懸念されるのは人身事故だが、ダウニーCEOは、稚拙な運用による死亡事故が発生する前に、きちんとしたルール作りが欠かせないとか、もし申請による認可方式にするとしても、スタートアップ企業によるイノベーションを窒息させるような、複雑な申請プロセスにしてはいけないということなんかを主張したりしている。つまり、GoogleやAmazon、そして新興のAirwareなど、シリコンバレーはドローンの応用にかなり前のめりで取り組み始めているのだと思う。Intel Capitalもつい先日、11月4日に総額6200万ドルの投資を16のスタートアップに行っているが、そのうち1社はPrecisionHawkというUAV関連の企業だ。
クアッドコプターによってUAVへの参入障壁を劇的に下げ、ハッカーや研究者、ホビイスト、ゲーマーを中心にコミュニティーを作り上げた先駆者が、フランス企業のParrotだ。2010年に初代機、AR.Droneをリリース。2012年にはAR.Drone 2.0として、センサーやカメラ、ソフトウェアを大幅アップデートし、今はAR.Drone 3.0となる「Bebop Drone」の発売を控えている。
AR.Droneといえば、4つのローターが対象に配置された平べったい機体を思い浮かべると思うけど、実はParrotは最近、ミニ・ドローンのシリーズとして「Jumping Sumo」や「Roling Spider」という変種も出している。Jumping Sumoは、以下のような感じだ。
Parrot社自体は、もともと車載向け無線デバイスや、UAV向けデバイスを事業として行っていて、近年はスピーカーやワイヤレス・ヘッドホン「Parrot Zik 2.0」をリリースしているほか、観葉植物観察ソリューションの「Parrot Flower Power」というのもリリースしている。DIY向け、ホビー向け、業務向けと幅広い。ちなみにノイズキャンセル機能を搭載し、耳のカップをなぞることで音量調整や再生コントロールができるParrot Zik 2.0は、11月12日から日本向にも販売を開始するそうだ。
このParrot社から、JPAC地域担当バイス・プレジデント兼マネージング・ディレクターのクリス・ロバーツ(Chris Roberts)氏をTechCrunch Tokyoにお招きして、デモと講演をお願いしている。UAV市場の全体像と、なぜ今ドローンがこれほど注目されているのかををお話いただくほか、同社の最新のデバイスを紹介してもらう予定だ。
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