ナイキのBreaking2は驚異的な身体の勝利であり、見事なマーケティングキャンペーンでもあった

ナイキのBreaking2イニシアチブは、2時間でマラソンを完走するという目標には達することができなかったが、それでもその結果を同社は大いに誇っている。

ナイキは2時間の壁を破るべく、3人のランナー、Eliud Kipchoge、Lelisa Desisa、そしてZersenay Tadeseと協力してきた。単にZoom Vaporfly Eliteシューズの特別バージョンを提供しただけでなく、様々なテストを通して彼らが最高のスピードを出すことのできるレース条件(正しいコースや日時の選択も含む)を探り出したのだ。

その結果は?Kipchogeが3人の中で最速だった。その2:00:25という記録は、彼自身のベストであった2:03:05を打ち破っただけではなく、もう少しで2時間の壁を破れるところまでに迫ったのだ。そしてそれは、Dennis Kimettoの持つ世界記録2:02:57を、2分も縮めるものだった。

Kipchogeは2時間を切るというゴールには至らなかったものの、このイベントによりナイキは十分な見返りを獲得した。ナイキはFacebookTwitterYouTubeにレースのライブビデオを配信した。そしてこの記事を書いている土曜日(米国時間6日)夜の時点で、Facebookのライブストリームは490万回視聴され、さらにKipchogeのフィニッシュをハイライトしたショートクリップは420万回も見られている(あなたは、そのクリップをフィーチャーした沢山の広告を見ることになるだろう)。

これがまるで単なるマーケティングキャンペーンであるかのように、このイベントについて眉をひそめる向きもあるかもしれない。しかしナイキの観点から見れば、それは当然の話だ。1日中伊達や酔狂で#Breaking2タグを使った広告をTwitterに流し続けたわけではない。

またナイキが3人のランナーたちに報酬を支払って今年のロンドンとベルリンのマラソンをスキップしてもらったことや、Kipchogeの記録は公式世界記録にはならない(何故ならBreaking2マラソンではペースを決め抵抗を減らすペースメーカーの配置が基準を満たすものではないからだ)ことを知れば、さらにがっかりするかもしれない。

しかし、だからと言って、全てがマーケティングのためだけに行われたわけではない。例えば、もしなるべく多くの視聴者の目をレースに引き付けたいのなら、金曜日の深夜、東部標準時で午後11時45分を選んだりはしないだろうし、会場の一般公開をやめたりはしないだろう。第一にそして最も重要な点として、ナイキは可能な限り速い記録を達成することに集中していたように見える。プロモーションはその結果に過ぎない。

少なくとも私にとって、Breaking2は、これまでナイキが到達しようとしてできなかったマーケティング涅槃(marketing nirvana)の境地に達したかのように思えるものだ。これはたまたま広告キャンペーンの一部でもあった、偉大な物語だ。

実際それは、少なくとも1つのシューズブランドが賞賛の声をTwitterでシェアしたほど刺激的なものだった(2017年は奇妙な年だ)。それにもし、他のマーケティング担当者がナイキの成功を再現したいと考えるなら、スポーツ研究者のチーム、何ヶ月にも及ぶトレーニングタイム、そして世界のトップアスリートたちを揃えなければならない。

以前Mayo ClinicのMichael Joynerが、人類に達成可能なマラソン記録の限界は1:57:58であると予測していた事実が、私のお気に入りだ。今日Kipchogeは、その「生理学的限界」から3分以内のところまで来たのだ。もしその偉業でNikeの靴が沢山売れるとしても、私は全く気にしない。

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(翻訳:Sako)

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TechCrunch Japan

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