ハイテク不動業のDomaもSPACブームに乗って3250億円の大型上場を目指す

サンフランシスコに拠点を置くハイテク不動産事業のスタートアップ、Doma(以前のStates Title)はCapitol Investment Corp. Vと合併することによって上場する計画を発表した。Capitol VはSPAC(特別買収目的会社)であり、買収額は株式、社債を含めて30億ドル(約3250億円)規模となるという。

CEOのMax Simkoff(マックス・シムコフ)氏は、2016年9月にく「住宅ローンを即時に成立させるテクノロジー主導ソリューション」を生み出すことを目指してこのスタートアップを設立した。当初は不動産取引にともなくリスクをカバーするタイトル保険の処理を主な目的としていたためためStates Titleという社名だった。しかし契約処理全般、またこれにともなくエスクロ(預託保証)など「不動産取引のあらゆる側面」を扱うことなってため事業内容に拡大し、社名も変項した。

Domaは特許を取得済みの機械学習モデルを開発した。このテクノロジーは、タイトル処理にかかる時間を従来の5度からわずか1分程度に短縮した。これにより住宅ローンの契約に関する期間を苦痛きわまりない「50 日以上」からわずか1週間以内に短縮することができた。スタートアップはChase、Homepoint、Sierra Pacific Mortgageなどの有力な金融会社をユーザーに持っており、すでに80万件以上の不動産取引をクロージングしてきたという。

社名の変項は上場後の将来を考慮に入れたもので、タイトル保険以外に住宅ローンやその保証などの分野に事業を拡大する計画だ。

上場によって得られる資金は「企業規模の拡大、新たな市場への参入、新しいプロダクト開発」などへの投資を継続、拡大するために利用されるという。

PIPE(上場資金を私募により拠出した投資家)にはBlackRock、Fidelity Management & Research Company LLC、ソフトバンクグループのメンバーであるSB Management 、Gores、 Hedosophia、Wells Capital.が運用するファンドやアカウントなどが含まれている。またDOMAの以前からの株主であるLennarもPIPEに参加している。Ziillowの共同ファウンダーで元CEOのSpencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏も個人としてPIPEに加わっている。

さる2021年2月中旬、DomaはHSCM Bermudaから社債による1億5000万ドル(約162億8000万円)の資金調達を完了したことを発表した。HSCMは2020年5月にDomaに対して6億2300万ドル(約676億3000万円)の評価額で1億2300万ドル(約133億5000万円)のシリーズCの大型ラウンドによる投資を行っている。

更新:Domaのビジネスの現状

同社の成長は2019年から2020年にかけては緩やかなものだった。GAAP基準による収入は3億5810万ドル(約388億7000万円)から4億980万ドル(約540億4800万円)に増加した。不動産エージェントに支払った保険料を除いた収入(留保保険料および手数料)は2019年に1億7980万ドル(約195億1000万円)に落ち込んだが、2020年に1億8970万ドル(約205億9000万円)になると予想している。2020年の数字は決算報告では「推定」と警告されている(ただし2021年3月の時点では2020年の確定数字は「推定」に非常に近いものになるとしているので概数として利用するのはさしつかえないはず)。

他のいくつかの指標もネガティブだ。Domaは調整後EBITDAが2021年に赤字幅が2020年の1900万ドル(約20億6000万円)から6660万ドル(約72億3000万円)に拡大すると予想している。しかし2023年については大幅に改善されると楽観的な見通しを立てている。

同社では2021年のGAAPベースの収入は4億1640万ドル(約451億9000万円)エージェントへの支払い後は2億2640万ドル(約245億7000万円)という緩やかな成長を見込んでいる。2022年と2023年にはさらに大きな大きな成長を予測している。だいぶ先の予想なので今のところこれらの数字は割り引いて考る必要があるだろう。

Domaはまた、2021年には決算数字が悪化すると予想している。保険料・手数料収入に占める調整後粗利益は、2020年の48.3%から2021年は39.5%に低下ししている。GAAP会計基準からだいぶ離れた数字を問題にすることになる点は注意しなければならないが、同社が財務実績の悪化が差し迫っていると公表している点には注目すべきだろう。

2020年のDomaの純損失は3510万ドル(約38億1000万円)だったが、費用支出が同等なら、2021年は1億310万ドル(約142億2000万円)に拡大する見込みだ。SPAC経由で株式上場を目指す他のスタートアップ同様、ビジネスに調整が必要な要素を残したまま市場にデビューすることになる。しかしDomaは新型コロナワクチンの入手が順調になってきたことにより近くパンデミックが抑え込まれると見ている。同社は将来展望については非常に強気だ。

つまり現在はプロップテック(proptech、ハイテク不動産事業)を始めるのに非常に良いタイミングだと考えている。

更新:SPACフェスティバル

Domaは株式公開を目指す多数のプロップテック企業の仲間入りを果たした。最近も16億ドル(約1737億1000万円)のベンチャー資金を調達した不動産仲介ビジネスのスタートアップCompassS-1上場申請書を提出している。

関連記事:ソフトバンクなどから総額約1710億円調達した不動産仲介スタートアップ「Compass」が上場申請

2020年にベンチャー投資家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)が創立した白紙委任会社(SPAC)、Social Capital Hedosophia IIはOpendoorとの合併を発表し、これによって非公開の不動産スタートアップであったOpnendoorを上場させた。

Porch.comも2020年12月にSPACを利用して上場している。また日本のSoftBankが支援するシリコンバレーのViewはSPACとの合併で米国時間3月9日にNASDAQに上場している。同社は、テクノロジーを利用した窓ガラスの製造と交換などを行うスマートウィンドウ企業の1つで時価総額16億ドルを目標として上場を開始した(Yahoo Financeでは時価総額はまだ判明していない)。

【追記】トップの小切手のイラストはSPAC企業が事業目標を示さないことから「白地小切手会社」と呼ぶことにかけたもの。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Doma不動産SPAC機械学習

画像クレジット:Lawrence Anareta / Getty Images

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo, Alex Wilhelm、翻訳:滑川海彦@Facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。