サンフランシスコ発のスタートアップSense.lyが、この度シリーズBで800万ドルを調達した。同社は、さまざまな病状に悩む患者や病院のためのプロダクトとして、バーチャルナースを開発している。このプロダクトを利用することで、内科医は退院した患者とも連絡を取り続けることができ、再入院の可能性を低減させることができる。CEO兼ファウンダーのAdam Odesskyは、同社のプラットフォームを「人の健康状態に関する重要なサインを読み取ることができる、WhatsappとSiriの掛け合わせ」のようなものだと説明する。
まず患者サイドから見てみると、ユーザーはSense.lyのナースアバターが行う5分間の「チェックイン」を通して、毎日もしくは2、3日に1回、自分の健康状態をスマートフォンに記録するようになっている。ナースの質問には声で答えるだけでよく、文字を打つ必要はない。また、ユーザーが入力した情報は、医療機関の担当者のみが見られるカルテに記録される。レポートにはそれ以外にも、ユーザーが日常的に利用しているさまざまな医療機器やウェアラブルデバイス、その他のインターネットに接続された機器からSense.lyが引っ張ってきた情報も含まれている。
さらにSense.lyには、MindMeldやBeyond Verbal、Affectivaなどと似たAIが搭載されており、患者の症状や行動だけでなく、彼らの気持ちも感知できるようになっている。つまり、アプリはユーザーの話を親身になって聞けるようにできているのだ。この点についてOdesskyは、肥満や心臓病などについて真剣に心配している人に対して、冷たいロボットっぽい声やビジネスっぽい反応を返したいと思う人はいないと話す。感情を分析することで、Sense.lyは患者が精神的なケアを必要としていると思われるときや、処方薬や生活の変化から、気分が落ち込んだり不安を感じたりしているときに、医療機関にその状況を知らせることができる。
Sense.lyでは、さまざまな疾患や年齢層に対応できるように、慢性病の診断や治療に広く利用されている医療手続きを参考に、コアコードやルールベースのエンジン、アルゴリズムが組まれている。さらに同社は、主にパートナーシップを結んでいる病院やクリニックから入手した、新しい手続きなどの情報を常にプラットフォームに追加し、アプリが対応できる疾患や人の範囲を広げようとしている。
これまでにSense.lyは、60歳以上のユーザーをターゲットとして、肺気腫や心不全、肥満といった年齢と関係の深い疾患に悩む患者に向けてサービスを提供してきた。一方でSense.lyは拡大を続け、今ではイギリスのNational Health Serviceや、アメリカにある大手病院やクリニックにもプロダクトを提供している。同社の他にも、HealthLoop、Your.md、Babylon Healthなどの競合企業が、AIメディカルアシスタントを開発している。
Chengwei Capitalがリードインベスターとなった今回のラウンドには、Mayo ClinicやBioved Ventures、Fenox Venture Capital、Stanford StartXのファンドが参加していた。Chengwei Capitalでマネージング・ディレクターを務めるRichard GuはTechCrunchに対し、Chengwei Capitalは「中国戦略」がとれるようなスタートアップにだけ投資していると語った。つまり、投資先企業のプロダクトが巨大な中国市場でも通用するかや、中国でも再現できるかといった点をもとに彼らは投資判断をしているのだ。
「Sense.lyの中国でのビジネス拡大に向けて、キーパーソンと彼らを引き合わせることができるでしょう。ただ、今回の調達資金はコアとなる研究開発に充ててほしいと考えています」とGuは話す。さらに彼は、Sense.lyのテクノロジーによって、人はより健康に長く生きることができるばかりか、今よりも病院ではなく家にいる期間を伸ばすことができる可能性があると話す。またOdesskyは、アメリカ以外にも医療従事者数の減少で困っている国があることを考えると、Sense.lyによって高品質の医療をもっと安く、たくさんの人に届けられるかもしれないと言う。
一方でバーチャルナースは、人間の仕事を「奪って」しまうのだろうか?Odesskyは、その可能性を否定し「現在Mollyの仕事をしている人はいません。これだけの数の患者に電話をかけて、データを分析するというのは人間にはできないことです。Sense.lyはむしろ、医療従事者が効率的に業務を行うサポートをしており、彼らの生活を脅かすようなものではりません」と語った。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)