Facebook(フェイスブック)のOculus(オキュラス)でミュージックインテグレーションを担当していたChris McGarry(クリス・マクギャリー)氏は、自身のスタートアップ企業であるAuthentic Artists(オーセンティック・アーティスツ)で、バーチャルな世界に音楽を導入するための新しいアプローチを展開している。
マクギャリー氏は、Lil Miquela(リル・ミケーラ)のようなバーチャル・セレブリティや、Travis Scott(トラヴィス・スコット)氏がFortnite(フォートナイト)で行った巨大イベントのようなバーチャルコンサートを、Authentic Artistsの舞台として挙げている。ある意味では、このスタートアップはこれらのアイデアを組み合わせたものであり、バーチャルミュージシャンを生み出して、それ自身がコンサートを行い、観客のリクエストに応えることを目指している。
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「私たちは意図的に、すでに存在するもののデジタルな複製を作ろうとはしていません」と、マクギャリー氏はいう。「新しいツールを使って新しいアート、新しい体験、新しい文化を創造したいのです。アーティストが観客とのコラボレーションを行うための手段となり、それによって観客はライブショーを選択的に形作ることが可能になる。それが魅力です」。
実際、Authentic ArtistsはすでにTwitch(ツイッチ)でいくつかの試験的なコンサートを行っており、平均視聴時間は35分だった。チームは「率直に言って、その反応に驚かされました」と、マクギャリー氏は言っている。
米国時間4月14日にTwitchで行われるコンサートでは、次世代のバーチャルアーティストが公開される予定だ。このコンサートでは、(人間の)Twitchストリーマーが共同で司会を務め、観客にこのコンセプトを紹介する。マクギャリー氏によると、将来的にはバーチャルと人間のスターによるさらなるコラボレーションの可能性もあるという。
Authentic Artistsのプラットフォームにはさまざまな要素が含まれている。アニメーションによるバーチャルミュージシャンが、音楽を生成し、さらに観客からのフィードバックに応えて、曲の強弱やテンポを変えたり、次の曲に早送りすることなどが可能だ。
「音楽は我々のビジョンの生命線であり、そのためにコアとなるオーディオエンジンに多大な投資をしてきました」と、マクギャリー氏はいう。このプラットフォームは人間が作曲した音楽ループを単純に組み替えるのではなく、それ自体が音楽を生み出すことを、マクギャリー氏は強調している。「私たちは、バーチャルアーティストに自律性を持たせ、リアルな存在にしたいと考えています」。
新しいアーティストについては、まだチームが最終調整を行っている段階のようで、筆者が実際にコンサートを体験することはできなかった。その代わりにマクギャリー氏と彼のチームは、これらのアーティスト(半分人間のサイボーグや巨大なイグアナなど)とバーチャルな会場のレンダリングを行い、さまざまなパラメーターを調整することによってその場で新しい曲を作り出す音楽エンジンのデモンストレーションを披露してくれた。「これらはすべてオリジナルの楽曲であり、人の手を加えることなく、私たちがここに座っている間に生成・制作されたものです」と、マクギャリー氏は語る。
Authentic Artistsは、OVO Fund(オーブイオー・ファンド)、James Murdoch(ジェームズ・マードック)氏のLupa Systems(ルパ・システム)、Mixi Group(ミクシー・グループ)、Linkin Park(リンキン・パーク)のMike Shinoda(マイク・シノダ)氏などの投資家から支援を受けている。マクギャリー氏は、今のところビジネスモデルよりもプロダクトマーケットフィットを見つけることに注力しているが、将来的にはブランド音楽や分散型金融 / NFT(非代替性トークン)などの手段で収益を上げる機会があると考えているという。
カテゴリー:ネットサービス
タグ:Authentic Artists、音楽、Twitch、バーチャルイベント
画像クレジット:Authentic Artists
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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)