パンデミックで生じたサプライチェーンの混乱にインテリジェンスを持ち込むCraftが10.6億円を調達

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで、サプライチェーンににわかに日が当たった。それは、誰も想像しなかったことだ。防護着や人工呼吸器、それに食料のようなありふれた物でさえ奪い合いになり、未だに大きな問題になっている。しかし、おそらくもうすぐ「サプライチェーンソフトウェア」という言葉に新しい意味が与えられるだろう。多くのプラットフォームが「空の状態」で立ち上がり、クライアントが自分のデータで満たすのを待つ。そんなユーザーインタフェイスは時代遅れになるだろうが、マニュアルの参照や手作業で苦労する部分はなくならない。そこで、そんな状態と戦おうとするスタートアップが現在、投資家たちの注目を集めている。

米国時間8月21日、エンタープライズインテリジェンスのCraftが「サプライチェーンインテリジェンスプラットフォーム」の構築のため、シリーズAで1000万ドル(約10億6000万円)を調達したことを発表した。同社はその資金でサンフランシスコとロンドン、ベラルーシの首都であるミンスクのオフィスを拡張し、北米とヨーロッパではエンジニア、営業、マーケティング、オペレーションもすべてリモート化する。

この分野にはDun & BradstreetやBureau van Dijk、Thomson Reutersといった先行する大手企業が存在している。以前より彼らは、公開企業に関する財務データを主に提供しているが、データソースからのリアルタイムのデータ、生産や販売の現状データや人的資本、リスクの予想値などは得意でない。

Craftの考え方は、企業が自らのサプライチェーンとエンタープライズシステムをモニターし、最適化できるようにすることだ。今回の資金調達はHigh Alpha Capitalがリードし、Greycroftが協力した。その他の気前の良いエンジェル投資家はDeloitte Consultingの元CEOであるSam Palmisano(サム・パルミサーノ)氏、Oktaの執行副会長で共同創業者であるFrederic Kerrest(フレデリック・ケレスト)氏、そしてシードラウンドを担当したUncork Capitalなどだ。High AlphaのパートナーであるKristian Andersen(クリスチャン・アンデルセン)氏が、Craftの取締役会に加わる。

Craftが解決する問題は、複雑なグローバルサプライチェーンの可視性の欠如だ。当然ながら新型コロナウイルスはグローバルなサプライチェーンを混乱させ、多くのリスク、業界全体の構造的な弱点、そしれそれらがどのように関係しているのかということに対するインテリジェンスの欠如を明らかにする傾向があった。Craftのソリューションは、既存のエンタープライズワークフローに統合する独自のデータプラットフォームとAPI、ポータルだ。

ビジネスインテリジェンのプロダクトにはクライアントが自らのデータを用意しなければならないものが多いが、Craftのデータプラットフォームは機械学習と人による検証で更新される300以上のデータポイントなど、何千もの金融および代替ソースからのデータで事前に用意されている。公開された企業プロファイルは、5000万件の検索結果に表示されている。

Craftの共同創業者でCEOのIlya Levtov(イリヤ・レフトフ)氏は声明で「私たちは、エンタープライズのサプライチェーンに強力な追跡機能と可視性を導入することにフォーカスしている。私たちの究極のビジョンは、エンタープライズのテクノロジースタックにインテリジェンスのレイヤーを築くことだ」と述べている。

High Alphaのパートナーであるクリスチャン・アンデルセン氏は「エンタープライズソフトウェアの中で十分な投資がされておらず、サプライチェーンの管理に関する分野のイノベーションが遅れている」という。

Craftは2020年前半に売上が3倍近くにまで成長したと報告している。主な顧客はFortune 100社や政府および軍部機関、そして多くの中小企業だ。

カテゴリー:人工知能・AI

タグ:Craft 資金調達

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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