「バズワードとして常に疑っているのは『ディスラプション』(破壊)という言葉。やたらポジティブに使われているけど、ベンチャー企業が持つべきマインドセットじゃない」。
著書「ゼロ・トゥ・ワン」のPRキャンペーンで来日中のピーター・ティールが2月23日、楽天主催の「楽天金融カンファレンス2015」に登壇してこう語った。
ゼロから1を生み出せば市場を独占できる
シリコンバレーでバズワードとなっている「ディスラプト」に否定的な見方を示したティールは、音楽業界を「破壊」したNapsterを引き合いに出して、次のように続ける。
「Napsterは音楽業界を大きく壊したけど、ビジネスとして成功したわけじゃない。既存企業を壊すことよりも、まだ注目されていない問題に着手するほうがよっぽど健全だよ」。
さらにティールは、著書のテーマでもある「ゼロから1を生み出すこと」が、市場の独占につながるメリットがあると強調する。
「1からnへ向かうことは、コピーにほかならない。一方、ゼロから1を生み出すのは、何もないことからイノベーションを起こすこと。これを正しく行えば、独占企業になれる。2002年以来、Googleが検索で競合がないのが良い例。ひと言で言うなら、競争するのではなく、誰もやってないことをやれということだ。」
三木谷氏「日本の起業家にとってバイアウトは賢い選択」
ティールとともに登壇した楽天の三木谷浩史会長は、日本の起業家が「バイアウト」を目指すようになってきたと、持論を展開した。
シリコンバレーでもそうだが、eBayやYahoo!がアクティビスト(モノ言う株主)に苦戦しているのは事実。だからこそ、多くの起業家がIPOではなく事業売却を目指しているのだと、実際にいくつかのベンチャーを買収してきた三木谷氏は語る。
「バイアウトは賢い選択。とはいえ、日本の起業家はまだまだ、売却したがらない。小さな時価総額でもIPOしようしていて、少し頑固なんじゃないか」。