フリマするほど暇じゃないOLに訴求、中古ブランド品委託販売「RECLO」

大手ネット企業やスタートアップが次々と参入するフリマアプリ。ユーザーにとっては、スマートフォンで撮影するだけで気軽に出品できるのが魅力だ。その反面、商品の撮影や配送に手間がかかったり、購入者の中には「ブランド品は偽物かもしれない」と不安を抱く人もいるかもしれない。4月9日に正式ローンチする「RECLO」(リクロ)は出品の手間がかからず、安心してブランド品を売買できることをうたうブランド品の委託販売サービスで、フリマアプリが取り込めないユーザーを獲得しようとしている。

フリマアプリとターゲット層や流通アイテムでは重なりが小さくなさそうだけれど、RECLOがフリマアプリと違うのは、出品価格を出品者自身が決めるかどうかだ。フリマでは出品者が価格を決めたり、購入者と交渉したりするのが一般的。これに対して、RECLOはどちらかと言うとブランド買取に近い。

RECLOで出品するユーザーはまず、宅配キットを取り寄せて商品をRECLOに送る(ここは無料)。すると、そのアイテムはRECLOの鑑定士によってブランド品の真贋判定を含めた査定が行われて、そこで値段が決まる。この値段付けは、中古市場が確立しているブランド品だから可能なことだそうだ。RECLOは鑑定士に相場データを伝えつつ適性な価格を決める。といっても、実は最初は少し高めに設定される。査定は質屋と似ているが、店舗や人件費などの中間コストを抑えることで、高めに設定できるのが特徴なのだという。ちなみに、この設定金額に同意しないのであれば、ユーザーは出品を取り下げることもできる。金額に同意すれば、RECLOが商品を撮影した上で出品する。

出品後の仕組みもちょっと面白い。値段が少しずつ下がっていくのだ。出品後には、5日おきに自動的に5%値が下がる。これで「1点モノがSOLDになる危機感」を与えて購入を促すのだという。値下げの下限は出品者の自由だが、初期設定では半額まで。程良い価格設定から半額まで落ちるので、ほとんどのアイテムは売れるということらしい。商品が落札された場合は、金額に応じて出品者はRECLOから50%~70%の手取り額を受け取る。これは、ブランド買取業者よりも2~3割良い条件になるようだ。

お小遣い稼ぎという点では、出品金額が自由に設定できて、販売手数料がかからないLINE MALLやメルカリなどのフリマアプリに分があるかもしれない。その一方で、RECLOはフリマアプリで必要な商品の撮影や配送を肩代わりし、ユーザーとの交渉さえもしないでいいっていうところがポイントだ。RECLOでは「フリマアプリで出品したい商品はあるけど、そこまでヒマじゃない」というユーザー、特にブランド品を頻繁に購入する25歳から45歳の女性を取り込みたいという。サービス名称は、「クローゼットをスッキリさせる」という意味の「re-closet」にちなんだもの。サービス運営元のアクティブソナーの青木康時社長は、「女性のクローゼットの中に眠る宝の山を有効活用してもらいたい」と話している。

6月には、スマホで商品を撮影してアップロードするだけで出品価格の相場がわかるiPhoneアプリ「かんたん査定」をリリースする。同アプリでは出品者が登録した「ブランド名」「カテゴリー」「状態」と、RECLOのデータベースをマッチングして査定を行う。もちろん、写真ではわからないようなダメージがある商品は、事前の買取価格よりも下がることはある。こうしたケースでは提携業者による買取価格が提示され、その金額に納得がいかなければ無料で返送してもらえる。

アメリカで活況のブランド品委託販売、日本でも大手参入の噂

日本で馴染みのないスマホを活用した中古ブランド品のオンライン委託販売サービスだが、アメリカでは活況を呈している。例えば、セレブ御用達の高級ブランド委託販売サービスとして知られる「RealReal(リアルリアル)」は、シャネルやエルメス、カルティエなどを中心としたラグジュアリーブランドのリセール商品を扱う。2013年8月には日本進出を果たし、女優やモデルを起用したプロモーションを展開している。そのほかにも、800万ドルを調達した「Threadflip」や、日本人が立ち上げたニューヨーク発の「Material Wrld」などがある。日本ではRealRealが当面の競合となりそうだが、青木氏は次のように勝算を語っている。

「RealRealはセレブが出品する派手な商品が中心。エルメスのバーキンが60万円で売っていたりして、見ているのは楽しいかもしれないが、普通のOLには手が届かない。ハイエンドにシフトしすぎている印象があってスケールしにくいのではないか。客単価で言うとRealRealは4~5万円と見ている。RECLOはその半額に抑えてでも客層を増やしていく。」

アクティブソナーの青木康時社長

競合という意味では、大黒屋やコメ兵、ブランドオフなどのいわゆる質屋型サービスや、テレビCMを展開しているブランド買取サイト「ブランディア」なども含まれるかもしれない。これらのサービスについて青木氏は、即座に現金化できるメリットがある反面、「買い叩かれて儲からない」「そもそも質入れする行為がクールじゃない」と指摘していて、買い取りよりも高く売れたり、安く買えるのがRECLOの優位点だと語る。

ユーザー獲得の施策としては、4月30日までに会員登録したユーザーに、購入・出品時に使える4000円相当のクーポンを配布。ユーザーは商品購入時にクーポンを適用したり、出品時に還元される金額にクーポン分の金額を上乗せできる。あわせて、出品者を紹介した人に対しては、一定マージンを還元する代理店施策も実施中だ(紹介料はRECLO側の取り分から支払われる)。現在は青木氏自らが代理店を開拓。ブランド品を大量に買う女性が多く在籍する飲食店や芸能プロ、引越し時にブランド品を処分する可能性がある人と接する不動産賃貸会社などにアプローチし、出品者を増やしているのだという。

青木氏は2012年11月にアクティブソナーを設立する以前は、ミュージシャンとして吉本興業に所属。「原宿の竹下通りでCDを手売りしていた」という異色の経歴の持ち主だ。その傍らで2004年には知人と携帯電話・通信機器の販売会社を立ち上げ、5年で年商約50億円にまで事業を拡大。その後は、2008年に天然水宅配サービスのウォーターダイレクトの営業部長として年商約30億円を経験し、2010年には同業のファインスプリングスを設立し、2年でグループ年商約40億円を達成するなど、営業やマーケティング畑を歩んできた。前述した代理店営業は、「ウォーターサーバーの代理店施策では常套手段」と語る。

なお、RECLOやRealRealのようなサービスは国内でもアツいジャンルと言う話は漏れ伝わってきていて、ゲームやSNSを運営する大手企業が参入するとの噂もある。青木氏はこれを認めた上で、「彼らは出品するサイトだけを用意して、鑑定や撮影・配送といった部分は他社に代行してもらうケースが多いはず。飛込み営業も含めた泥臭い作業も含めてスピーディーにやることでパイを取って行きたい」と話す。2015年9月には常時出品数5000点、年間販売アイテム数4万5000点、会員数30万人を目標に掲げる。将来的には、日本のユーザーがブランド品をアジアに出品する「逆BUYMA的なビジネスモデル」も視野に入れているそうだ。


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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。