フリークアウトは19日、自社開発するDSP「FreakOut」において、広告主のイメージ低下を招くサイトへの広告配信を除外するアドベリフィケーション機能を搭載した。FreakOutを利用する広告主は今後、自らが指定する不適切なサイトに広告が掲載されるのを防げるようになる。サイトを判定するアルゴリズムは、「はてなブックマーク」のスパム対策に使われている機械学習エンジンをもとに、フリークアウトとはてなが共同開発した。アドベリフィケーション経由の売り上げは両社でシェアする。
DSPで広告主のブランドが毀損するケースも
DSP(デマンドサイドプラットフォーム)は、広告主が広告を配信したいユーザー層を定義し、必要な広告枠をRTB(リアルタイム入札)で買えるプラットフォーム。フリークアウトは2010年に国内初のDSPをスタートし、現在の広告主は通信や航空会社、トイレタリーブランドなど約4500アカウントに上る。アドベリフィケーション機能は、ナショナルクライアントと呼ばれる、全国規模で広告・マーケティングを展開する企業が利用することが想定される。
フリークアウトによれば、広告主はFreakOutを通じて国内数千万サイトに広告を配信できるが、その中には自社ブランドを毀損するサイトが紛れ込んでいることもあるのだという。例えば、アダルトサイトや著作権を無視した違法サイトなどだ。FreakOut経由の広告かはわからないが、実際にこうしたサイトで一部上場企業の広告を見ることもある。FreakOutでアドベリフィケーションを導入したところ、全ドメインのうち0.17%がアダルトサイトだったのだという。
広告配信先サイトの内容は事前に審査しているが、対応しきれていないのが現状だ。その理由についてフリークアウトの溝口浩二氏は、「審査通過後にサイト管理者が故意にコンテンツを変えるため」と説明する。「不適切なサイト」の管理者からすれば、審査通過後に違法コンテンツを掲載してアクセス数を増やし、FreakOutやその他のDSPからブロックされるまでに、広告料収入を稼ごうとしているのだろう。
はてなと共同開発したアドベリフィケーション機能「BrandSafe はてな」は、広告主にとって意図していないサイトに広告が掲載されるのを防ぐものだ。広告配信先サイトの内容をリアルタイムに判定し、広告主が指定する不適切なサイトへの広告掲載を抑える。広告主は「アダルト」「違法ダウンロード」「2chまとめ」の中から、広告を配信したくないカテゴリーを選べる。
現時点ではすでに8社の広告主が導入している。その反応を見ると、アダルトや違法ダウンロードだけでなく2chまとめを遮断する広告主が多いのだという。「コンテンツ自体はひどくなくても、そこに出ている広告がアダルトだったり、アフィリエイトで肌の露出の多いフィギュアが出てきて『うっ』と来たりするんですよね」(溝口氏)。
3カテゴリーに絞ったのは「広告主のニーズが最も多かった」ため。今後、ニーズが高まれば「事件・事故に関するニュース記事にクルマの広告を出さない」「酒やタバコに関するページに子供向け商品の広告を出したくない」といった要望にも応えたいという。
フリークアウトは同機能の提供にあわせて、ネット上の違法・有害情報の通報窓口「インターネット・ホットラインセンター」(IHC)とも連携。広告料収入を目的とした違法・有害サイトのURL情報を提供してもらうことで、該当するサイトへの広告配信を自主的に停止する取り組みも始める。
なぜフリークアウトは「はてな」を選んだのか
ところでなぜ、フリークアウトはアドベリフィケーションの共同開発の相手にはてなを選んだのか。
フリークアウトはこれまでも欧米企業が手がけるアドベリフィケーションを試験的に導入していたが、「日本語の壁を超えられなかった」と溝口氏は語る。「例えば、2chまとめ系サイトだと、掲示板独特のネットスラングには対応できない」。そこで目を付けたのが、日本特有のネットカルチャーに強い「はてなブックマーク」(はてブ)のスパム対策技術だったわけだ。
はてブでは、広告・宣伝を目的として、新着エントリーや人気エントリーへの掲載のために行われる不正な行為を「スパム行為」とし、表示制限措置や利用停止措置の対象としている。
スパム判定をするにあたっては機械学習エンジンを活用。過去のデータから導き出したルールを、新たに収集したデータに適用することで、そのサイトが不適切かどうかを判定している。はてブのタグやコメント、キーワード、はてなキーワードも考慮して判定するため、日本特有のネットスラングにも最適化されているのが強みなのだという。
はてなというと、はてブやはてなブログなどのコンシューマー向け事業が中心。しかし、最近では、企業のオウンドメディア構築支援「はてなブログMedia」や、ベータ開発中のクラウドサーバー管理ツール「Mackerel」を投入するなど、自社サービス開発で培った技術やノウハウを法人向けにも提供する動きが目立っている。アドベリフィケーション機能もその一環だ。今後はフリークアウト以外のDSPへの技術提供も視野に入れているといい、B2B向け事業が新たな収益の柱として育つのか注目だ。