ベンチャーキャピタル、IoT(モノのインターネット)に狙いを定める―過去1年で投資3億ドルに急増

編集部: この記事の筆者、Christine MageeはCrunchBaseのアナリスト

日本発のパーソナル・モビリティ、Whillからワイヤレス充電のuBeamまで、家庭や自動車やオフィスにイノベーションを起こそうとするIoT〔Internet of Things=モノのインターネット〕のスタートアップが何百万ドル単位の資金調達に成功する例が相次いでいる。Kickstarterなどのクラウンドファンディング・プラットフォームではスピーカーやバッテリー充電器にもなるスマート・クーラーボックスとかカスタマイズできるスマートウォッチなどがヒットを飛ばしている。

それにとどまらず、最近ベンチャーキャピタルもホームオートメーションやホームセキュリティーの分野への投資を急増させている。GoogleのNest買収SamsungのSmartThings買収といった大型買収に刺激されて、この分野へのベンチャーキャピタリストの関心がかつてなく高まっている。

過去1年でベンチャーキャピタルは97回のラウンドで3億ドルをIoTスタートアップに投資した。しかも案件の半数は最近の四半期に実施されている。四半期での シードラウンドの件数は過去最高を記録している。

この件数急増の一因はIoTを対象としたアクセラレーターの整備によるものだ。R/GA、TechstarsのニューヨークのIoTアクセラレーター、Microsoft Venturesがシアトルに開設したホーム・オートメーション・アクセラレーター、 グローバルなアクセラレーターのHAXLR8Rなどがその目立つ例だ。ベンチャー投資家がIoTスタートアップの動向を注視していることはシードラウンドだけでなくSeries Aラウンドの数も新記録だったことでも推測できる。

Galvanize VenturesのNick Wymanは「この分野への投資を決断したもっとも大きな理由はIoTこそ将来だというコンセンサスが出てきたことだ。ビッグデータの取得と利用、スマート・ホーム、ホーム・セキュリティー、いずれもIoTテクノロジーが中心的な役割を果たすことになる」と説明する。

先週、GalvanizeはIoTスタートアップのKeen Homeへの投資ラウンドを実施した。これには損保のAmerican Family Insuranceやコミュニケーション企業のComporiumが戦略的投資家として参加している。Keenの最初の製品はスマート換気システムで、家の所有者は部屋ごとに換気をコントロールすることで室温を快適に保ちながら省エネを実現できる。「われわれは今後新しく現れてくる市場に投資している」とWymanは言う。Galvanizeは室内ガーデニングのスタートアップ、Grove Labsや家庭でビールを醸造するキットを開発したBrewBotにも投資している。

Keen Home自体はパズルの小さなピースかもしれないが、家のスマート化というその全体像は巨大だ。個別システムが多数登場すると、それらを協調させるハブの存在が強く求められるようになる。

BoxGroupDavid Tischは現在の状況を「Apple (Homekit)にせよ、 (Nest)、(SmartThings)、GE (Wink)にせよ、こうしたホームオートメーション・プラットフォームが最終的にどのような形を取るのか、まだ見えていない。今のところIoTエコシステムはまったく不透明な状況だ」と考えている。

Tischは去る7月のSamsungの買収に先立って、SmartThingsの1500万ドルのラウンドに参加していた。しかしそれ以後はホームオートメーションの分野で大きな投資の決断をしていない。先行きへの不透明感が、件数は多いものの大型投資案件が比較的少ないという傾向を招いているようだ。IoT分野での大勢が決まるまではあまり大きなリスクを取りたくないというのが投資家の心理なのだろう。ただGoogleなりAppleなりによってホームオートメーションのハブの事実上の標準が成立すれば、投資家には朗報だが、一部の消費者は、そういった巨大プロットフォームにもっとも重要なプライバシー情報をコントロールされたくないと反発するかもしれない。

HAXアクセラレータから巣立ったForm Devicesはそういった懸念に答える形で、 「ソフト・セキュリティー」を提唱している。これは従来のセキュリティーがカメラやセンセーといったデバイスに依存する「ハード・セキュリティー」だったのと対照的なアプローチだ。今週、 Kickstarterでプロジェクトを公開しているが、このシステムは24時間常時セキュリティー情報を記録するのではなく、ソフトウェアによって「何らかの異変」が感知されたときのみ、情報の記録を開始する。ユーザーは大量のプライバシー情報が外部のシステムに蓄積されてしまうことに対する不安を覚えずにすむわけだ。

「いずれにせよ、IoTの進展によって収集されるデータの量は飛躍的に増加する。それにともなってこのデータを効果的に処理、分析することから大きなチャンスが生まれ、ビジネスのあり方に革新が起きる。家庭、自動車、オフィスからIoTが始まろうとしている。その影響はドミノ倒しのようにあらゆる分野に急速に広がっていくだろう。インパクトは巨大だ」とR/GAのConnected DevicesプログラムのJenny Fieldingは予想する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


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TechCrunch Japan

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