ポストコロナ時代に向けDenizenが1人で仕事に集中できるハイテクなオフィスポッドを開発

タイニーハウス(小さな家)と呼ばれるムーブメントは、新型コロナウイルスが流行してから輝きを失ったかもしれないが、リモートワークの未来を改めて想像してみると、タイニーオフィスの必要性が浮かび上がってくる。

Denizen(デニズン)を創業したNick Foley(ニック・フォーリー)CEOによると、人々は最近、落ち着いて考え事ができる空間を求めており、そのためには喜んでお金を払うという。

フォーリー氏は、2018年にUber(ウーバー)が2億ドル(約220億円)で買収したレンタル自転車サービス企業「Jump Bikes(ジャンプ・バイクス)」の元チーフプロダクトオフィサー兼インダストリアルデザイン担当ディレクターを務めていた人物だ。同氏はDenizenで、ある疑問に答えることを目指している。それは「1人の人間が完璧な就業日を過ごすための驚異的な体験を提供する製品として、オフィス空間を構築することができるか?」というものだ。

フォーリー氏は、コワーキングスペース企業のWeWork(ウィーワーク)が仕事環境を最適化する方法に関して、いくつかの点で間違っていたと考えている。多くの人がコワーキングの社会的メリットを享受する一方で、異なるプロジェクトに集中しているワーカーで賑わう環境は、ある種の仕事に必要とされる精神的集中に有害となる可能性がある。

画像クレジット:Nick Foley and David Krawczyk

Denizenの考え出したソリューションは、10平方メールに満たないスペースに、コンセント、USBプラグ、カメラ(ビデオ会議用)、スピーカー、ルーター、ホワイトボードウォールなどがあらかじめ組み込まれた、小さな独立型オフィスの小部隊を作ることだ。Denizenのオフィスポッドは美しくデザインされており、プライバシーを守るために数秒で不透明にできる窓、リサイクル可能な素材、そして建築デザイン雑誌「Dwell(ドウェル)」に掲載されているような美的感覚を備えている(実際にDwellに掲載されたばかりだ)。

「天井はとても高く、ガラスが周りを取り囲んでいて、とにかく広々としていて巨大な感じがします」というフォーリー氏は、Denizenが人々に「インスピレーションを得て、生産的な仕事時間を過ごす」ために必要なツールを提供することを目的としていると付け加えた。彼らは単に美しいコンセプトイメージを見せただけではない。NASAのジェット推進研究所に勤めるフォーリー氏の友人が、Denizenで作られた自分のマイクロワークスペースのバーチャルツアーを披露してくれたのだ。

Denizenは当初、プレハブ式のオフィスポッドを企業に提供し、企業がそれらを月極めでレンタルできるようにする形を構想していた。しかし、自宅で仕事することに行き詰まっている人々からの要望が非常に多かったため、現在では個人向けに、自宅敷地内に設置できる車輪付きの独立型オフィスとして販売することを計画している。Denizenの美しくハイテクな小型オフィスは、個人で購入すると約5万5000ドル(約608万円)ほどの金額になる。

フォーリー氏は、Denizenのモデルが、新型コロナウイルス時代における企業の不動産計画に合致すると考えている。オフィスに通勤してくる従業員の数が減るにつれて、企業はこれまで長いこと「会社」というものを定義づけていた高価でむやみに広大な社屋を縮小し、未来の仕事のあり方に合った、より柔軟で専用に設計された選択肢を模索している。フォーリー氏によれば、企業が一括して契約する場合、スマートポッドのレンタル料は1台あたり月額1000ドル(約11万円)程度になると予想されるという。

画像クレジット:Nick Foley and David Krawczyk

このポッドは、従来のオフィスを補完し、刺激的な1人用のオフィス環境を提供するが、フォーリー氏は、いつか企業や市政府がDenizenのオフィスポッドを緑地に設置し、1日単位で予約できるようにしたいと考えている。

「本当の夢は、正直なところJump Bikesとよく似ています。本当にすばらしい共用施設を作るためには、近隣レベルでどのように協力し合えるかを考えることです」と、フォーリー氏はいう。

同社は現在、シードラウンドの資金調達を行っており、2022年初頭に複数ユニットのテストを開始するために、ベイエリアおよびカリフォルニア州内の企業と契約を結んでいるところだ。ゆっくりと規模を拡大していく方針で、来年には100台程度の販売を目指す一方、その間にも製品の製造工程を効率化していくという。

Denizenはこのスマートポッドを車輪付きにすることで、チームが泥沼にはまるような許認可の問題を賢く回避している。Jump Bikesでキオスクや駐車場を設置した経験を持つフォーリー氏は「それがどれほどビジネスモデルを複雑にするかを理解しています」と語る。

迷路のような地域の規制に入り込むことなく、約3.6メートル×2.3メートルほどのスペースと資金に余裕があれば、誰でもこの小さなポッドオフィスに入って仕事をすることができる。つまり規制の観点からは、基本的には美しい小さなRV車に、配管を施したものということになるわけだ。

フォーリー氏は、自分のビジョンが未来の仕事のスタイルにどのように適合するかということに興奮しているようだが、同時にDenizenの小さなオフィスがどのように組み立てられるかということにも興奮している。このポッドオフィスの製造には、大規模な自動制御CNC、3Dプリント、洗練されたプロダクトデザインが融合されており、西海岸の初期の顧客には、車輪も含め工場組み立て済みの状態で、そのまま出荷できる製品となっている。

画像クレジット:Nick Foley and David Krawczyk

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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