ポートランド市の顔認識技術禁止条例は民間企業も対象になる

米国時間9月9日、オレゴン州ポートランドの市議会は顔認識技術に対する禁止法案を可決した。地方自治体の禁止令としては、これまでで最も強力だと広く知られているものだ。

ポートランドは2つの法令により、市の各部局がこの異論の多い技術を使うことを禁じ(ポートランド市リリース)、また民間企業が公共の場でそれを利用することを禁ずる(ポートランド市リリース)。オークランド(Daily Beast記事)と、サンフランシスコ(Vox記事)、ボストン(Boston Globe Media 記事)も、行政府が顔認識技術を利用することを禁じているが、しかしポートランドの、公共の場での企業の利用に対する禁令は新しい視点だ。

民間に対して使用を禁じているその条例案は、顔認識システムに黒人や女性、高齢者などへの偏見が織り込まれているリスクに言及している。これらのシステムにおける偏見のエビデンスは、研究者が広範に観察しており(MITプレスリリース)、連邦政府ですら昨年発表された調査(米国立標準技術研究所資料)で認めている。これらのシステムにある既知の欠陥は、法執行機関による利用などで深刻な結果を招く偽陽性に導くこともありえる。

市議会の委員であるJo Ann Hardesty(ジョ・アン,ハーデスティ)氏は、ハイテクの法執行ツールに対する懸念を、3カ月以上前からポートランドで起きている抗議活動に結びつけている(Facebook投稿)。米国保安局は先月、小型の航空機使ってポートランドのダウンタウンにある抗議活動の中心地である、マルトノマ郡ジャスティスセンターの近くで群衆を監視した(Willamette Week記事)ことを認めた。

ハーデスディ氏によると、地方の法執行機関が顔認識技術を使うことを禁ずる決定は、ポートランドの現状においては「特別に重要」とのこと。

同氏は「自分の顔のようなプライベートなものが、写真に撮られ、保存され、利益のためにサードパーティに売られることは、誰においてもあるべきではありません。また、テクノロジーのアルゴリズムが罪のない人を誤認したために、刑事司法システムの中へ不正に押し込められるようなことは、誰においてもあるべきではありません」と語る。

ACLU(米市民的自由連合)も9月9日の票決を、デジタルプライバシーの歴史的な勝利として祝った。

ACLUのオレゴン州暫定取締役のJann Carson(ジャン・カーソン)氏は「本日の票決で、当市では真の権力を持つ者が私たちであることを、コミュニティが明らかにしました。私たちはポートランドを、警察や企業などが私たちを行く先々で追跡する監視国家には絶対にしません」とコメントした。

顔認識技術の使用を公共と民間の両方に対して禁ずるポートランドの二重の禁令は、同様のデジタルプライバシー行政を模索しているそのほかの都市にとって指標になり、プライバシーの擁護者が望んでいた結果が実現するかもしれない。

Fight for the FutureのLia Holland(リア・ホランド)氏は「今や全国の都市がポートランドに見習って自分たちの禁令を通すべきです。今の私たちには勢いがあり、この危険で差別的な技術を撃退する意志があります」とコメントした。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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