本日開催された米国マイクロソフトのSurfaceイベントでは、Windows 11搭載となる新型Surfaceシリーズが発表されました。
中でも今回の話題の一角となりそうなモデルが、キーボード合体式の2-in-1タイプ『Surface Pro 8』です。
米国での価格は1099.99ドルから(日本では税込14万8280円から)。日本を含む各国で本日より予約受付を開始します。
最大の特徴は、ついに本体が完全新設計となった点。
Surface Proシリーズの12.3インチ・アスペクト比3:2画面をベースとした基本的な設計は、Surface Pro 3から“秘伝のタレ”のように引き継がれてきましたが(Pro 7でのUSB Type-C追加などはあったものの)、今回ついに基本設計レベルから大変更され、合わせて時代遅れ感のあった仕様が一気にアップデートされました。
その本気度は、マイクロソフト側が「Pro 3以来となる大規模アップグレード」とアピールするほど。
画面サイズは13インチに若干ながら大型化され、最高リフレッシュレートはゲーミングPC並みの120Hzに。さらに先行するSurface Pro Xのように、ナローベゼル化も進みました。
拡張端子もThunderbolt 4(兼USB Type-C)端子2基を搭載し、心臓部となるCPUはインテルのTiger Lake世代に。インテル提唱の”イマドキの快適PC指標”となるEvoプラットフォームにも準拠しています。
さらに別売りペンにはハプティック(触感)デバイスを搭載して、触感上でも紙とペンの書き味に近づけるなど、今後のトレンドともなりそうなアイデアも導入されています。
技術的な注目点の一つとなるのが、ディスプレイパネルの大進化でしょう。なんといっても目立つのが、最高リフレッシュレートが120Hzという点。これにより軽めのゲームなどでは表示が滑らかになり、視認性が向上します。また、ペンを使った描画などでも遅延(レイテンシ)を削減できます。
Windows 11は必要に応じてリフレッシュレートを高める「動的リフレッシュレート」に対応するため、多くのスマートフォンのように無駄な消費電力を抑えつつ、必要なときだけ120Hz表示を使えます。
サイズは13インチとわずかながら大型化し(Pro 7は12.3インチ)、合わせてナローベゼル化。とくに横置き時の左右側などはかなり狭くなり、外観上も格好良くなっています。
加えてHDR映像ソースに関しても、ドルビービジョンに対応。色表現に関しても、周囲の環境光に合わせて自動で色調整を行なうWindows機能『Adaptive Color Technology』に対応。なお同機能で必要となる環境光センサーは、顔認証カメラ部に搭載します。
解像度は2880 x 1920、画素密度は267dpi。この値はPro 4からPro 7と同じため、解像度は画面実面積分だけの拡大に留まっています。
こうした様々な改良により、公式Blog記事などでは「我々が作った中でも最も技術的に進んだディスプレイ」ともアピールします。
対する大きさと重さに関しては、本体のみでのサイズは287×208×9.3mm(幅×高さ×厚さ)で、同じく本体のみの重量は891g。Pro 7は292×201×8.5mm、775g~790gだったため、とくに重量は100gほど増しています。
画面周りと並んで大きなアップデートが、Thunderbolt 4(兼USB Type-C)端子を搭載する点。
CPU側に論理層コントローラーを搭載するTiger Lakeの機能を活かし、数も2基となっているため、これまでのSurface Proシリーズに比べて拡張機器の柔軟性は大きく広がっています。
ただし一方で、昨今のトレンドかUSB Standard-A端子は廃止に。良くも悪くもイマドキのモバイルPC的な割り切りとなりました。
なお電源兼拡張ユニットを接続するSurface Connect端子は、内部解説写真によれば継続採用。現時点では細かな互換性までは不明ですが、このあたりはSurfaceチームらしいところです(なお、他の端子は3.5mmヘッドホンジャックのみ)。
そして、基本的な処理速度の面もTiger Lake採用で強化。とくにGPUはPro 7で採用されたIce Lake(第10世代Core i)より、かなりの、と言って良いレベルでの高速化が期待できます(一方で、企業用モデル『Surface Pro 7+』とは同一世代となります)。
実際の処理速度に大きく影響するTDP値は15~28Wと、いわゆるモバイルノートPCの標準クラス。具体的なモデル名は、一般向けモデルが『Core i5-1135G7』と『Core i7-1185G7』。最廉価モデルでもCore i5となっている点が、ちょっとした(そしてお買い得度的には大きな)トピックです。
搭載GPUはCPU内蔵の『インテル Iris Xeグラフィックス』となります。
なお、企業向けモデルは『Core i3-1115G4』『Core i5-1145G7』『Core i7-1185G7』の3グレード構成です。企業向けモデルはLTEモデム搭載構成も販売されます(コンシューマー向けはWi-Fiモデルのみ)。
なお冷却機構などは、基本的な設計こそPro 7までを踏襲しますが、ヒートパイプなどの部品が順当に大型化している様子が見て取れます。
RAMはLPDDDR4Xの8GB/16GB/32GB。Surface Proも最大32GBに対応した点がトピックです。
ストレージは少々複雑で、交換可能タイプのSSDでは128GBか256GB。それとは別に単なる「SSD」があり、こちらは512GBか1TBという構成。おそらく後者は交換不可能な構成と思われます。
バッテリー駆動時間は公称「最大16時間」。バッテリー容量は内部写真で見る限り50.2Wh(11.38V/4414mAh)と、Pro 7の公称43Whより大幅な容量増になりました。
Pro 7の駆動時間は公称10.5時間だったため、容量増加分しっかりと駆動時間が延びたと呼べそうです。
またテレワークの普及に伴い、カメラも刷新。背面カメラが1000万画素(10MP)へと、解像度が向上しています(現行のPro 7は800万画素)。なおBlog記事では「10MP-4K」との記載もあるため、4K動画の撮影にも対応する模様。
なお前面カメラはPro 7と同じ500万画素でフルHD撮影に対応。Surfaceシリーズといえば、なWindows Hello対応顔認証も継承します。さらにユニットとしてみると、上述した環境光センサーが加わっています。
またマイクに関しては中・遠距離の集音にも対応するマイクロフォンアレイ構成を引き続き採用、内蔵スピーカーはドルビーアトモスに対応します。
そしてもう一つの注目点は、本体に合わせて刷新された、専用キーボードとペンです(両方とも別売り)。
キーボードは、Surface Pro X用で評価の高かった、ペン用の収納部を本体接続部付近に搭載する構造に刷新。名称もPro X版に合わせて、『Surface Pro Signature Keyboard』となっています(日本向けはまだわかりませんが、「タイプカバー」の名称が外れました)。
そして専用ペン『Surface Slim Pen 2』の特徴は、ハプティック(触感)振動に対応したバイブレーターを搭載している点。これにより使っている際、紙にペンを滑らすような感触をシミュレートします。
これまでのPC用ペンは、いわゆる「紙とペンのような書き心地」を追求すべく、ペン先の素材や画面側の表面加工、さらにはレイテンシ(遅延)の削減などに注力してきました。
しかし今回は「昨今技術改良の著しいハプティック系デバイスを使い、書き心地のシミュレートにより紙とペンの理想に迫る」という、良い意味で想定外の技術によるアプローチとなっています。
さらに描画時のレイテンシに関しても、Surface Pro 8側にも搭載されたMicrosoftの新世代カスタムコントローラーと、Windows 11での改良により、現行世代よりさらに低減。
画面の120Hz化による描画レイテンシ削減と合わせ(画面のリフレッシュレートが上がると、必然的にレイテンシも削減されます)、「これまで以上に自然で滑らかなインクとペンの体験を提供」とアピールします。
このようにSurface Pro 8は、OS側となるWindows 11の刷新に合わせて、ユーザー待望のメジャーアップグレードとなった待望のモデル。
実際に主要な特徴を見ていっても、120Hz画面やThunderbolt 4端子をはじめとするパワーアップ度合は顕著。確かにマイクロソフト側が主張する大幅な強化であることは間違いありません。
Surfaceはディスプレイに関しては並々ならぬこだわりを持ったシリーズですが(例えばあまり大きくアピールしていませんが、出荷時色調整の精度なども含まれます)、今回はWin 11で焦点となるはずのリフレッシュレートでライバルとの差を付けることとなりそうです。
そして「ペンを併用するためにSurface Proシリーズを使っている」という層にとっては、間違いなく注目点となりそうなのが、触感フィードバックを搭載したペンの使い心地でしょう。少なくともPC用でのペンとしては他にないアイデアだけに、ペンも使う層によっては、本体以上に見どころともなりそうです。
(Source:Microsoft 製品ページ。Engadget日本版より転載)