マサチューセッツ州の有権者が自動車データへの前例のないアクセス権限を与える「修理する権利」法案に賛成

マサチューセッツ州の投票者の75%が賛成した投票法案(ballot measure)によって、自動車業界にとって広範な意味を持つ可能性のある厄介な問題が決着した。ある人が車両を購入したならば、そのデータはすべて所有者のものとなるということだ。

投票用紙に第一項として(法案一覧サイト)記載されたその法案は、マサチューセッツ州の消費者に対して、所有している車両を修理する権利を与えている法律を、改定し内容を拡大するものだ。この法案決定により、マサチューセッツ州でテレマティクスシステムを備えた車両を販売する自動車メーカーは、2022年以降のモデルからは、標準化されたオープンデータプラットフォームを装備する必要がある。この標準化されたオープンデータプラットフォームは、車両所有者と独立した修理業者に対して、直接アクセスを提供し、モバイルベースのアプリケーションを通じて、自動車のデータを取得したり診断を実行したりできるようにする必要がある。

重要なことは、この法案が、テレマティクスシステムが収集しワイヤレスで送信するデータをも包含していることだ。また、機械のデータにアクセスできるだけでなく、オーナーや独立したメカニックが修理、メンテナンス、診断テストのために車両にコマンドを送ることも許可する。

マサチューセッツ州には、「修理する権利」(right-to-repair)を率先して訴えてきた歴史がある。2012年には有権者が、自動車メーカーが車載診断用ポートに非独自の標準規格を使用することを義務付ける法律を承認した。このポートとは、ディーラーがデータを取得するために使用している物理的なポートのことだ。その結果、車の所有者は、エンジンチェックのライトが点灯した場合、ディーラーに行く必要がなくなり、代わりに地元の整備士から診断を受けることができるようになった。この法律では、無線で送信されるデータは免除されていた。だがこの免除は、現代の車両のテレマティクスシステムがより高度化するにつれて、「修理する権利」支持者にとってより差し迫った課題となってきていた。

米国時間11月3日に通過したこの法案は、消費者保護の支持者によって称賛される一方、自動車メーカーだけでなく一部のデータセキュリティ支持者からは激しく反対されている。カリフォルニアに拠点を置くiFixitの創業者であるKyle Wiens(カイル・ウィンズ)氏は、「これは大きな前進です」と、TechCrunchへのメールで述べている。「もし自分で修理できないなら、対象を本当に所有していることにはなりません。メーカーが車両にテクノロジーを追加するときには、オーナーが自分で手を入れる権利と、地元の整備士が修理を行えるようにすることに注意を払う必要があります」。

それはまた、利益を生み出す可能性のある機会だともみなされている。

Gartner (ガートナー)のアナリストであるMike Ramsey(マイク・ラムゼイ)は最近のインタビューで、「これは、私たちが携帯電話上に持っているような、アプリの巨大なエコシステムを生み出す大きな可能性を秘めています」と語っている。例えば大規模な車両群を所有する企業が、車両をより適切にモニターし、管理できるようになるだろう。

一方、業界ロビー活動グループのAlliance for Automotive Innovation(AAI、米国自動車イノベーション協会)は、この法案はセキュリティと安全上のリスクを生み出すと主張している 。例えばCoalition for Safe and Secure Data(CSSD)を含む、同投票法案に批判的な人たちは、それはあまりにも範囲が広すぎると主張している。「カリフォルニア州では、より侵襲性の少ない類似法案が否決されました、不要かつ危険だと思われたからです」とTechCrunchへのメールで指摘するのはCSSDの広報担当者であるConor Yunits(コナー・ユニッツ)氏だ。

「自動車会社の懸念は理に適ったものです、つまり『車両に新しいソフトウェアを投入したら、車に変なことが起きるぞ、そいつ安全上まずい』ということなのです」とラムジー氏は語る。

AAIの協会長でCEOのJohn Bozzella(ジョン・ボゼラ)氏は、協会がリスクを軽減するためのなんらかの方策を探ることを、最新の声明として発表している。だが同協会が積極的に法案の範囲を狭めるために戦うかどうかははっきりしていない。

「The National Highway Traffic Safety Administration (米国運輸省道路交通安全局)は、私達の顧客の車両に真のリスクをもたらす、この法案への多大な懸念を示した多くの関係者の1つです。これらの懸念は残されたままです」とボゼラ氏は声明で述べている。「自動車メーカーは、車両に対して安全かつセキュアなサービスを行うために必要な、すべての診断および修理情報を入手可能にしています。消費者が選択できることは変わりません。今後も、自動車メーカーはお客様を保護し、安全性、プライバシー、車両のセキュリティを優先する取り組みを続けていきます」。

この法案の効力は、マサチューセッツ州内に限定されているものの、そうしたものが国内の残りの部分に拡大したという前例がある。最初の「修理する権利」法は、2013年にマサチューセッツ州で施行された。2014年までに業界は、その法案を拡大し、国の残りの部分もカバーするという覚書で合意した。Teslaはその覚書に署名しなかった唯一の自動車メーカーだと、ウィンズ氏は指摘した。

「再び同じことがおきる可能性はとても高いと思います」とウィンズ氏は語り「異なる法律のパッチワークは誰も望んでいませんけれどね」と付け加えた。

「いまこそスマートフォンから農業機械に至るまで、自動車からすべてのテクノロジーに対して『修理する権利』を拡大しべきときです」ウィンズ氏は語る。そして、マサチューセッツ州をはじめとする他の多くの州が、2021年には広範な電子機器「修理する権利」に関する立法の検討を行う準備が整っている、と付け加えた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:修理する権利

画像クレジット:Jackie Niam / Getty Images

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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