マンション売却2日後に即入金、すむたすが開発した驚速買取スキーム

services_thumb_01.png東京都内を中心に中古マンションの買い取り、販売を手がける「すむたす」は10月9日、500 Startups Japanから5000万円の資金調達を発表し、「すむたす買取」というサービスを同日に正式ローンチした。調達額は驚く額ではないが、注目したいのは同社が開発した最短2日での売却を実現するという買い取りスキーム。

一般的に中古マンションは、売り主が仲介会社に売却を委託して買い主を探してもらう媒介契約を結ぶ。そして売り主は、仲介会社が査定した売却金額を基に実際の売値を決めて売り出す。

物件や仲介会社にもよるが、短期間で売れる確率が高い最安値と売却可能と考えられる最高値の推定価格を提示してくれることが多い。実際に中古マンションの売却を経験したことがあるのだが、仲介会社が提示した最安値と最高値の差額は500万~600万円程度。このとき仲介会社は「REINS」と呼ばれる不動産の取引情報データベースや自社の売買実績、自社に登録している顧客(買い主)のステータスなどを勘案して推定価格を割り出す。

売り主が売却を依頼→仲介業者が査定額を提示→売り主が売却(販売価格)を決定→仲介業者が売り出す——という流れとなるため、売却を決意してから実際の売り出しまでは最短でも1週間程度かかってしまうのが通常だ。

services_thumb_02

自らが買い主となって売主からマンションを買い取る仲介会社や専門の買い取り業者もある。すむたすも専門の買い取り業者の1社となるが、査定と支払いのスピード感がまったく異なるのだ。

一般的な仲介会社や買い取り会社であっても、2日もあれば査定を済ませて詳細な資料を渡してくれるところが多い。一方すむたすは、REINS上の売買情報に加えて独自のアルゴリズムを駆使して査定金額を最短1時間で算出。そして実際に売却を依頼されると、最短で2日後には指定した銀行口座に現金が振り込まれる。

スマホなどの買い取りとは異なり、マンションは多くの場合で住宅ローンが組まれており、銀行が抵当権を設定している。また、不動産は登記することで所有権を主張できる。そのため、すむたすと売り主の間で現金を受け渡すだけでは買い取りは完了しない。売却の意思が決まると、司法書士による抵当権の抹消や不動産登記の手続きが必要。さらに売り主が依頼したとおりの物件がどうかを現地で確認することも欠かせない。そのあとにようやく現金の受け渡しなどの買取契約が可能になる。すむたすはこれらの作業をたった2日でやってのけるのだ。

sumutasu04すむたす代表取締役を務める角 高広氏(写真左)によると「売却査定を受けた時点から、司法書士が必要な書類の作成などを同時並行で進めるため最短2日間というスピードでの売却を実現できた」とのこと。司法書士事務所とは特別な契約を結んでおり、実際に売却に至らなかった場合は全額ではなく進捗度合いによる歩合で事務所に作業料が支払われるという。

気になる売却価格については、買い主が見つかっていない時点で買い取るため、リスクをとって市場価格よりも数百万円低くなる。しかし、仲介会社ではないので通常は売却価格の3%程度に設定されている仲介手数料の支払いは不要。つまり、売却価格が高いマンションほど仲介手数料の額も上がるので、すむたすのスキームが生きてくる。

すむたす買取は、2018年7月にプレビュー版をリリースしてサービス事前登録を開始したところ、オンラインでの査定申し込みは150件、そのうちすでに買い取りの申し込みが5件来たことで手応えを感じていたそうだ。ターゲットとなるユーザー層は、海外転勤や離婚などでマンションを早急に手放したい人だが、実際には中古マンションを買い替える際にすむたす買取を利用した人もいたという。

今回の資金調達で「買い取り物件数の拡大と査定額算出のアルゴリズムにさらに磨きをかけたい」と角氏。また今後の展望としては、買い手側のニーズを汲み取れるシステムも開発したいとのこと。買い主を早急に見つけることができれば買い取りリスクは低下し、売り主はより高い価格でマンションを即売却できるようになる。

米国では、すむたすと同様のスキームで不動産を買い取る「Opendoor」(オープンドア)が未上場ながら時価総額が1000億円を超えたユニコーン企業に成長している。最近は、ソフトバンク・ビジョン・ファンドから約450億円(4億ドル)の出資を受けるなど注目だ。日本でこのような不動産買い取りが根付くかどうか、すむたすの今後に期待したい。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。