マーケットプレイスの階層、レベル3支配とは?

【編集部注】本稿は米国スタートアップやテクノロジー、ビジネスに関する話題を解説する ポッドキャスト「Off Topic」が投稿したnote記事の転載だ。

自己紹介

こんにちは、宮武(@tmiyatake1)です。これまで日本のVCで米国を拠点にキャピタリストとして働いてきて、現在は、LAにあるスタートアップでCOOをしています。Off Topicでは、D2C企業の話、マーケットプレイスの作り方、最新テックニュースの解説をしている記事やポッドキャストもやってます。まだ購読されてない方はチェックしてみてください!

はじめに

今回も引き続き、Sarah Tavel(@sarahtavel)さんから許可をいただき、「Hierarchy of Marketplaces Level 3」を翻訳させていただきました。前回を読まれてない方はこちら(レベル1レベル2)から読めます。

レベル3の「支配」とは?

レベル1とレベル2は何か1つのことにフォーカスが必要だった。

レベル1:Minimum Viable Happiness(実用最小限の満足・喜び)の達成
レベル2:市場が自分のマーケットプレイスに傾けさせる

レベル3に入るタイミングでは、コホートのパフォーマンスがどんどん強くなっていて、徐々に競合・代替品からあなたのサービスへ移行し始めている。ただ、ここで満足するのは早い。

ノルウェーのコングロマリットであるSchibsted(シプステッド)が自社で持っている複数のマーケットプレイス企業を分析したところ、1つの地域・カテゴリーのマーケットプレイス市場では、1位と2位の差が圧倒的だったことがわかった。

そして1位になるだけでは足りない。2位との差が大きいほど、無駄に投資しなくてよく、より多くのバリューを取り込める。

結局一つの市場やカテゴリで競合に勝つだけだと足りない。勝ち取る各都市やカテゴリ自体が新たなティッピングループを作り上がる。例えば1つの地域で1位になると、そこで黒字化して、その利益分をほかの地域に投資できて、そのほかの地域が後々改善されて1位になるという拡大サイクルが生まれる。さらに、1つの地域やカテゴリーを勝ち取れるとVCからの出資も受けやすくなり、その出資を拡大戦略に使える。

そのため、レベル3に入ると市場全体の支配へ走り始めなければいけない。ここでの「支配」とは、三つの戦略がある。

  1. もともとスタートした市場・カテゴリーで圧倒的に1位になること
  2. スタートした市場から縦展開して、買手側の課題・ユースケースを広げる
  3. レベル1とレベル2での学び・プレーブックを活用して横展開する

すべての戦略を同時にする必要はない。3つの戦略をどうバランスするかは競合との兼ね合いによって変わる。レベル3はさまざまなトレードオフを行って支配できるチャンスを最大限上げるためのものである。そして勝ったと思っても、その後に競合が勝ち抜くこともある。常に競合と自社の立ち位置を把握しなければいけない。

競合がいないマーケットの拡大戦略

競合がいない市場であれば、どれだけ先に市場を取れるかが勝負。

ただ、最初は焦らずに、レベル1とレベル2をクリアするのが大事。ゆっくりでもちゃんとレベル1とレベル2をクリアできれば、その後は加速する。

地域別のマーケットプレイスであれば、出来るだけ多くの地域でティッピングループを回し始め、そこからの利益を使って新しいユースケースを作り行くことを考えよう。

Uber、Airbnb、Etsyはまさに買手側のユースケースと利用頻度を上げることにフォーカスした。Uberの場合は、もともとプレミアムタクシーだったのが、Uber Xで一般のタクシーと競合になり、その後はUber Poolで公共交通機関と競合サービスを作り、ラグジュアリー層からマス化して手頃なサービスへ拡大。Airbnbでは、ベッドやマットレスだけを用意していたのを、サービス展開してホテルと競合になる家やアパートなども対応、そして国際マーケットにさらなるユースケースと利用頻度を増やした。Etsyは、手作りからなんでもありのプラットフォームになってしまったため、逆に苦しんだ。

この拡大戦略で重要なのは、自社のブランドミッションと伴っていないとダメなことと、買手側から見てブレてないことを気をつけなければいけない。UberはコアなSKUを拡大しているものの、すべて交通手段として一貫している。Etsyは拡大戦略を失敗した事例だ。

IPO直前にEtsyは恐らく数字(GMV)を追いかけるために手作りの物以外もサプライ側に載せるのを許した。結果として、WIRED記事によると買手側は手作りの物か大量生産した物を見ているのかが分からなかった。さらに手作りしているクリエイターの多くは以上に安い価格の大量生産グッズと競争をしなければいけないことに怒り、Etsyへの信頼性と満足度が売手側と買手側の両サイドで下がった。

Etsyは自社のミスに気づき、サプライ側を整理して、信頼性と満足度の低下を止められた。ただ、この一例でわかるのはいくら大手ブランドでも、満足度ではなくGMVを追ってしまうと潰れてしまう危険性があること。

競合がいるマーケットの拡大戦略

競合がいる時は、まず自分のマーケットプレイスに次に大きいサービスより2倍以上の大きさであるかを確認するべき。もし2倍以上でなければ、まだ勝ち取れてない場所やカテゴリーで切るか、勝てるところによりフォーカスするかが大事。まず勝てるところ圧倒的な差をつけて、そこからの利益を使って徐々に拡大するべき。

2倍以上の大きさであれば、競合がいないときの拡大戦略と似た様に、ユースケースを広げていくのがベスト。もちろんそのまま勝っているところはリードを保てる様にして、地域別のマーケットプレイスであれば、新しい地域へ展開するべき。

勝ったと思っても、どのタイミングで新しい競合が勝ち抜くかがわからない。

HomeAwayは、バケーション用の家のレンタル業界ではトッププレーヤーだった。Airbnbが市場に入り込んだ時も拡大をせず、そのおかげでHomeAwayのユーザーはAirbnbのより幅広いユースケースに対応できるサプライサイドに満足して、HomeAwayから離れていった。

Grubhubは自社でデリバリーしているレストランだけターゲットしていた。Postmates、DoorDash、Uber Eatsなどではよりレストランのセレクションを対応していたため、Grubhubを使う時の満足度を超えられた。

GOATのアイデア自体が創業者がeBayで買った靴が偽物だった時に考えた物だった。GOATは信頼性(本物の確証)を売りにしてeBayの平均満足度を超えられた。

こちらスティーブ・ジョブズのインタビュー動画でこのコンセプトと似たことを話している。結局、ユーザーの満足度を上げて会社を成功させたのがプロダクトだったのに、大きい会社になってしまうとプロダクトではなく、営業・マーケティング重視になってしまう。そうすると新しいプレーヤーが入り込んで大手を潰しに行けるチャンスが出てくる。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。