ミームはDNAと同じように環境に適合する。Facebookのデータサイエンティストらが証明

リチャード・ドーキンスは、ミーム(memes)を遺伝子(genes)になぞらえたが、Facebookによる最新の研究は、そのアナロジーがいかに正確であったかを示している。ミームは生存し続けるために環境に適合する ― 生命体と同じように。人は医療保険がないために死んではならない、というミームをリベラル派が投稿すれば、保守派はそれを変異させて、人はオバマケに医療保険を制限されたために死んではならないと言う。そしてオタクたちは、スターウォーズ版に作り変える。

Facebookのデータサイエンティストらは、匿名データを用いて「特定の遺伝子変異が特定の環境で有利に働くのと同じように、ミームの変異においても亜集団の信仰や文化と一致した変種は伝播のしかたが異なる。

このミームを見てみよう。

「人は医療保険料が払えないという理由で死ぬべきではなく、病気になったからといって破産すべきではない。これに同意した人は、今日一日自分のステータスにこれを掲示されたい」

2009年9月、47万人のFacebookユーザーがこれと全く同じ言い回しを近況アップデートに投稿した。しかしそこから12万1605種類の変種が総計114万件の近況アップデートを生みだした。例えば、「人はジャバ・ザ・ハットを買えないという理由でカーボナイトの中で凍死すべきではない」。なぜか? それはミームが聴衆に適合するよう人間が変異させるからだ。

下の表では、政治的傾向の違う人々が、どのようにミームを自分の見解、そしておそらく友達の見解に合わせて適合させているかがわかる。Facebookのあるデータサイエンティストは、「医療保険制度改革(オバマケア)を支持する元の変種が主としてリベラルによって伝播されたのに対して、政府と税金に言及しているものは、保守派に寄っていた。SF版の変種は僅かにリベラルで、アルコール関連のものは僅かに保守寄りだった」と述べている。これはドーキンスやマルコム・グラッドウェルの理論と一致する。

人は~べきでない」ミームの変種を投稿したユーザーの平均政治的偏向
(-2:極めてリベラル、+2:極めて保守的)

私がスタンフォード・サイバー社会学修士プログラムの研究論文に書いたように、ミームはリミックスしやすいほどシェアされやすい。もしミームに置き換え可能な変数の入ったわかりやすいテンプレートがあれば、人々はどうやって作品にひねりを加えればよいかがわかる。彼らが独自の修正バージョンをシェアする可能性は高くなり、それが元作品の認知度も高める。2009年にこれに気付いた私は、LolcatsとSoulja Boyを研究テーマにしたが、最近ハーレム・シェイクのミームが、私の正しさを証明した。

Facebookと私の研究結果は、マーケターあるいはメッセージをバイラルに広げたいと思っている人なら誰にとっても、非常に大きな可能性を示している。ミームが生来突然変異を起こす傾向を持ち、その変異がシェア回数を増やすことがわかっていれば、リミックスされやすくなるよう意図的にメッセージを構成することができる。種をまき、自分自身で変種をいくつか作ることによって、テンプレートがどのように働き、読者にリミックスを作るよう仕向けられるかを具体化できる。

私の論文にある下のグラフを見るとわかるように、Lolcatの “I can haz cheezburger” というフレーズの “haz” という単語は、数年間高い人気が続いた。一方、リミックスしにくいミームは、ほんの数日間しかピークを作らないことが多い。私は、このリミックスしやすさ ― あるいは適合しにやすさ ― が、ずっと長い間ミームの人気を支える要因であると推測する。

Facebookの投稿における “haz” という単語の伸びは、
この非常にリミックスしやすいLolcatsミームの継続的人気を示している
( 現在は使われていないFacebook語彙ツールによる)

Facebookのようなソーシャルネットワークは、ミームがどう進化していくかを理解するこのによって、ユーザーが確実に新鮮なコンテンツを見続けるようにできるはずだ。ニュースフィードで全く同じミームを何度も繰り返して見せる代わりに、Facebookのアルゴリズムを使えば、変異を起こした変種を意図的に探すことができるだろう。

そうすれば、医療問題を繰り返し聞かされる代わりに、こんなものが見られるかもしれない。「人はラジオでマイリー・サイラス聞くのを避けられないという理由だけで、激しく腰を振るべきではない。もし同意したなら、舌を口の中に安全にしまって今日一日静かに座っていること」

私のサイバー社会学に関する研究の詳細については、”The Science Behind Why The Harlem Shake Was So Popular” を参照されたい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


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TechCrunch Japan

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