モバイル決済のコイニーが8億円の資金調達、AI使った与信サービスも金融機関向けに本格展開

コイニー代表取締役社長の佐俣奈緒子氏

コイニー代表取締役社長の佐俣奈緒子氏

Squareが日本に上陸するより以前、2012年10月にモバイル決済サービス「Coiney」をローンチしたコイニー。同社が2月6日、総額約8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

コイニーでは今回の資金調達において、産業革新機構(既存株主)、SBIインベストメントの手がけるFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合等のファンド、電通デジタル・ホールディングスが手がける電通デジタル投資事業有限責任組合を引受先とした第三者割当増資と、コイニーのパートナーとなっている西武信用金庫からの融資をそれぞれ実施している。同社は今回の調達をもとに自社サービスの事業拡大と、新サービス提供に向けた開発およびセールス、マーケティング人員の強化を進めるとしている。

当初コイニーが手がけていた決済サービスは、スマートフォンのイヤフォンジャックに挿して利用する小さなカードリーダーを使った、いわばSquareライクなものだけだった。その後2015年秋には、スマートフォンとBluetoothやWi-Fiで連携する手のひらサイズのICカード対応端末「Coineyターミナル」の提供を開始。2016年8月には、手軽に決済ページを作成できる「Coinetペイジ」を、同年9月にはAIとトランザクションデータを活用した企業評価・融資審査エンジンの「Coineyエンジン」を提供するなど、事業を拡大してきた。

「Coineyターミナル」

「Coineyターミナル」

「決済は積み上げていくサービス。サービスインから1年後に13億円を調達したのち、粛々とやっていた」——コイニー代表取締役社長の佐俣奈緒子氏はこう振り返る。

スマートフォンで決済できるようになることから、当初はCtoCを含む「小さな決済」の領域でサービスが広がるのではないかと考えていたコイニーだったが、その結果はあまり良いものではなかったという。「当時はファーマーズマーケットや、美容、グルメといった領域に営業していましたが、実はそれほど伸びていませんでした」(佐俣氏)

そこで方向を転換、病院をはじめとした医療領域や中古車販売店、整備工場といった自動車領域、リフォームやリノベーションといった住まい領域を中心にサービスを拡大させた。「ターゲットにしたのは、単価が高くて、クレジットカードを使いたいけれども現状は現金しか使えないところ。日本人は単価の安いものでクレジットカードを使わないのも分かった。中古車ディーラーが軒先で決済したり、提携するリクシルでは、営業マンが営業先で決済をする、といった使い方をしている。ポイントは『決済を簡単にする』こと。手数料を安くする(料率は3.24%〜)、入金を早くする(振込依頼から2営業日)といったことが重要」(佐俣氏)

勝負すべき領域は見つかったが、一方では課題も残っていた。「(スマートフォンのイヤフォンジャックに挿して使う)リーダーを使った決済は、読み取り精度もそうだが、それよりも(動作が)簡単すぎて不安という声もあった」(佐俣氏)。そこで、ICカードの読み取りにも対応した専用端末であるCoineyターミナルも提供するに至った。

具体的な金額は公開していないが、月間決済額もサービス開始から順調に伸びているとのこと。加盟店あたりの月間決済額(平均)も、当初は13万円ほどだったが、現在では70万円まで増加した。佐俣氏は国内のモバイル決済市場について「決済額ベースで現状が数千億円、2020年に1.5兆円くらいになるかと思う」と語っている。

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コイニーが現在注力しているのは、地方の金融機関との連携だ。業務提携するクレディセゾンを通じて西武信用金庫と事業面でもパートナーシップを結んでいるが、今後は金融機関の顧客向けにCoineyを展開。そのトランザクションデータをCoineyエンジンに利用することで、金融機関がスピーディーで正確な与信情報を提供することも狙う。「ひとことでFinTechといっても、さまざまな分野がある。(サービスを提供して)金融機関からお金をもらうFinTechベンチャーは多いが、コイニーはお金を流すようなことをしていく。金融機関にメリットがあるから、我々のプロダクトをもっと売って下さい、という考えだ」(佐俣氏)

佐俣氏は、コイニーの将来について次のように語る。「このビジネスモデルは5年前のモデル。次の5年のために作りたいことがある。今までも『現金がなくなる世界が来る』といわれていたが、将来はカードも、ひょっとしたらスマートフォンもなくなって、手ぶらで生活する社会が来ると思う。新しいサービスも開発していきたい」

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。