2017年は国内ライブコマースの“黎明期”と言える1年だった。多くのサービスが立ち上がり、「ライブコマース」という概念が一気に拡大。TechCrunch Japanでも11月に開催したTechCrunch Tokyo 2017でパネルディスカッションのテーマに取り上げ、関連するニュースも度々紹介してきた。
2018年は他の業界がそうであるように、各企業の優劣がはっきりしてくるのではないだろうか。昨年の秋には先駆者ともいえる「Live Shop!」運営のCandeeがプライベートブランドを始めるなど、新たな取り組みもみられた。存在感を増す事業者がでてくる一方で、撤退を決めるところもでてきそうだ。
「PinQul(ピンクル)」を提供するFlattもこのライブコマース市場で事業を展開する1社。昨年10月にアプリをリリースし、11月からはプライベートブランド「P.Q. by PinQul」を始めた。
そんなFlattが次に取り組むのは、自社商品を販売したい事業者とタッグを組むことによるPinQulの本格的な拡大だ。
同社は2月16日、PinQulにてTOKYO BASEの新ブランド「SOCIAL WEAR」のライブ販売を実施することを明らかにした。ライブを行うのはInstagramのフォロワーが22万人を超える「にょみ。」さん。自身がプロデュースした洋服を2回の放送で販売する予定。1回目の配信は本日21時からだ。
Flattでは今後アパレル商材に限らず、自社商品を販売したい事業者や個人の募集を進めるという。
従来のメディアとは異なるライブコマースの可能性
今回ライブコマースに取り組むTOKYO BASEのSOCIAL WEARはかなりエッジの効いたブランドだ。
コンセプトは、日本生産がシュリンクしていく中「日本のファッション製造業を活性化させ、強い日本産業を取り戻す」こと。日本製にこだわり、生産は受注ベース。実店舗を持たずEコマースに特化したブランドで、60%の原価率を誇る。
これまではZOZOTOWNでのみ販売をしていたが、新たなチャネルとしてPinQulが候補にあがった。ライブコマースの特徴はテキストや画像に比べて、リッチでインタラクティブなコミュニケーションが可能になること。SOCIAL WEAR自体がユニークなストーリーを持つブランドということもあり、TOKYO BASEとしてもライブコマースとは相性がいいと踏んだようだ。
特に今回ライブ配信をするにょみ。さんが売るのは自らプロデュースした洋服。PinQulではすでに自身で手がけた商品を販売した配信者が複数人いて、約30分で1万1800円のセットアップが40着以上売れたという事例もある。FlattのCCOを務める豊田恵二郎氏も「語るべきストーリーがあるものほど向いている」と話す。
人とものを増やし、本格的に規模拡大を狙うフェーズへ
Flattではこれまで、ライブ配信を行うキー・オピニオン・リーダー(KOL)についても、扱う商品についてもかなり限定していた。
代表取締役CEOの井手康貴氏や豊田氏も以前から「実際に売れるか」を重視していると話していて、単にSNSのフォロワー数が多いだけの「インフルエンサー」ではなく、ファンからの信頼があり実際にものを売ることができるKOLを直接キャスティングしてきた。商品についても、あくまで「自分の気に入ったものを紹介してマネタイズできる仕組み」を目指して、むやみに広げることはなかった。
その考えを突き進めたひとつの結果が配信者によるプライベートブランドであり、実際にCVRも10%〜20%と「商品が売れる」仕組みができ始めているという。
その反面、今のやりかただけでは同社が目指す規模までは大きくならないという話もあった。そこで次なる一手として始めるのが、TOKYO BASEのように自社商品を販売したいと考える事業者との協業だ。
「これまでクオリティコントロールをものすごく大事にしてきて、実際CVR的にもいい数値がでている。今後もPBには力を入れていくが、それだけでは難しいのでB向け(事業者)にも拡大しないといけない。直近は配信者のハードルを下がるために裏側のシステムや体験の改善に全振りしてきて、ようやく拡大に向けた準備が整ってきた状況だ」(井手氏)
現時点でもすでに複数の企業からPinQulで商品を販売したいという問い合わせがきているそう。「ライフスタイル」などある程度の基準は設けつつも、アパレル業界以外の企業にもPinQulの提供を進める方針だ。共同でプライベートブランド商品を開発したり、熱量のある社員が販売をしたりといった可能性もあるという。同様にライブ配信者についても公募を開始し、放送数の拡大も目指す。
「今後企業がどのライブコマース(プラットフォーム)がいいかを比較するようになっていく。結局のところ『売れるかどうか』が見られているので、CVRを下げないという部分は徹底した上で規模を広げていきたい。特にファッション領域のKOLは自分たちがしっかりと巻き込み、ものについても『PinQulなら売れる』という状況を作っていきたい」(井手氏)