配信者が視聴者とリアルタイムにコミュニケーションをしながら商品を売買する「ライブコマース」。新しいコマースの形として中国で普及し、日本でも昨年に入って続々と新たなサービスが生まれ、注目を集めてきた。
これまでTechCrunchでもいくつかのサービスを紹介してきたけれど、そのひとつでもある「PinQul」がクローズすることになったようだ。同サービスを運営するFlatt代表取締役CEOの井手康貴氏が8月16日に公開した自身のブログ記事で、背景なども含めてサービスのクローズを発表した。
井手氏はブログ内で「僕個人の目指すところとして日本を変えるために10年で1000億円、20年で1兆円規模の会社にならねばいけないというのは意識していました」とした上で、もともとPinQulではアパレルの委託販売を行うライブコマースのプラットフォームを作ろうとしていたこと、最適化を進めた結果、自社ブランドを自社在庫で売るアパレル屋になってしまったことに言及している。
既存の日本アパレル企業の多くがユーザーに向けてではなくバイヤーに向けた商売になっており、半分は在庫が残る前提での価格設定、同じOEMをつかって同じような商品を各ブランドが作り、売れ残りが生まれてはセールで売る、そういった現状に対して、KOLによるD2Cブランドは一定の解を示すことはできたし今後も増えていく流れなのではないかと思っています。 ただ、これだとアッパーとしては10年で300億くらいの会社を作るのが精一杯かなと感じました。(井手氏のブログより引用)
同社CCOの豊田恵二郎氏によると「数字としては悪くなく、(5月リリースの)Web版を出してからは当初の想定以上のMAUにもなっていた」とのことで、伸ばせる余地もあったという。
ただ最終的には事業の規模感(アッパー)が見えてしまったこと、そしてそれが自分たちが当初目指していた形ではないこともあり、サービスクローズを検討。シリーズAの調達を進める中で、株主とも相談し7月末に方針を決定した。
現時点で具体的な時期は言及されていないが、クローズは9月が目安になる模様。次の事業に関しても「(現時点では)完全に白紙」であるものの、また新たなプロダクトでチャレンジをしていくという。
なおPinQulの正式リリースは2017年の10月。運営元のFlattは2017年5月創業で、これまで11人の個人投資家から資金調達をしている。