ランボルギーニは同社初のEVについて未だ思案中、4人乗りクーペになる可能性が有力

Lamborghini(ランボルギーニ)の会長兼CEOであるStephan Winkelmann(ステファン・ヴィンケルマン)氏は、超高級SUV「Urus(ウルス)」の需要に支えられて2021年の販売台数が過去最高を記録した自動車メーカーの指揮を執っているにもかかわらず、祝杯を挙げる暇もない。

このイタリアのスーパーカーメーカーを率いるヴィンケルマン氏は、販売台数が前年比13%以上増加したことや、1月が終わる前に2022年の生産台数をほぼ完売させた成功の余韻に浸るよりも、もっと差し迫った問題を抱えている。

それ以上にヴィンケルマン氏は、同ブランドを電動化の世界に導くことに集中しているのだ。これは、効率性よりも大げさなエンジンで知られるランボルギーニとは、相反する動きのように思える。

ランボルギーニは、2023年にハイブリッド車を投入するなど、いくつかの目標を設定している。しかし、そこから先のEV計画は不明瞭だ。

ガソリンの代わりに電気を使ってどのように車を走らせるのか、また、顧客にどのような体験を提供するのか、ランボルギーニは未だ決定できていない。

「私たちは、ランボルギーニのためのクルマを作るだけでなく、10年後にも対応するために、バッテリー技術やどのようなタイプのエンジンを搭載する必要があるのかということについて、よく検討しているところです」と、ヴィンケルマン氏はTechCrunchに語った。

「私たちには、EVを真っ先に採用する必要はないという利得があります」と、ヴィンケルマン氏はいう。それは、世の中の動きに目を光らせ、未来を見極めるようとしているという意味だ。EVの技術は急速に進化し続けているため、それは簡単なことではない。「もしかしたら、5年後には誰も気にしていないようなことを話しているのかもしれません」とCEOは認めている。

先行しようとする中で、自動車メーカーとしては、いくつかの点で間違っているかもしれないことを認めなければならないと、CEOは語った。それはつまり、適切なタイミングで適切な判断を下すことであり、あまり先を見過ぎてはいけないということだ。

「良いアイデアを持っていても、それが5年後、6年後、7年後、8年後には正しくないとわかるかもしれません」と、ヴィンケルマン氏は付け加えた。

ランボルギーニは、少なくとも全体的なデザインプランは持っている。

ヴィンケルマン氏によると、ランボルギーニ初のEVは2020年代の後半に登場する予定だという。それは現行モデルの「Aventador(アヴェンタドール)」や「Huracan(ウラカン)」のような純粋なスーパーカーではなく、(ウルスを除く)ランボルギーニに人々が期待する以上の地上高を持つ、より実用性が高い2+2シーターの4人乗り2ドアクーペになるとのこと。

もちろん、それはランボルギーニらしいルック&フィールを備えた車になるだろう。スーパーカーではないランボルギーニというものが冒涜のように感じる人は、同社が1968年から1978年まで、4人乗り2ドアクーペの「Espada GT(エスパーダGT)」を販売していたことを思い出していただきたい。

Lamborghini Espada GT(画像クレジット:Lamborghini)

そのクルマのデザインは、電気自動車であるがゆえに未来的になると同時に、ランボルギーニのDNAに沿ったものになると、ヴィンケルマン氏はいう。パワートレインも、EVならではの強大なトルクで、ランボルギーニ車のオーナーがこのブランドから思い描くパフォーマンスを実現するだろう。しかし、1つだけ決定的に失う要素がある。エンジンの咆哮だ。

「その代わりとなり得るスーパーカーとは何かという新しい見解を、どうやって示すことができるか、我々は見極めなければなりません」と、ヴィンケルマン氏は語った。ランボルギーニの魅力の1つは、そのエキゾーストノート(排気音)だ。これは、ランボルギーニの車を所有することで得られる「俺を見ろ!」という威勢の誇示に欠かせない。ランボルギーニには、ブランドに相応しい何かを考え出すための時間がある。それが車内にだけ聞こえる音なのか、それとも車外にも聞こえる音になるのかは、まだわからない。

今後のハイブリッド車については、まずアヴェンタドールのV12プラグインハイブリッドが登場する予定だ。PHEVパワートレインの採用は、特定の都市において排ガスを出さない電気駆動を求める規制の拡大に対応するためだ。

2021年発表された限定生産モデル「Lamborghini Countach LPI 800-4(ランボルギーニ・カウンタックLPI 800-4)」。2019年に発表された限定モデル「Sián(シアン)」のために開発されたスーパーキャパシタ技術とV12エンジンを組み合わせたハイブリッド・パワートレインを搭載する(画像クレジット:Lamborghini)

内燃機関については、2022年がランボルギーニにとって新型の非電動車を導入する最後の年となる。パワートレインの進化の始まりが、2023年に迎える同自動車メーカーの創立60周年と重なるのは、ある意味で相応しいとも言える。

ランボルギーニは、規制と筋金入りのファンの両方を満足させる方法として、今度のプラグインハイブリッド車をできるだけ長く製造したいと考えている。もし、合成燃料を使った低排出ガス化が実現すれば、2030年代に入ってもスーパーカーの導入と生産を続けることができるだろう。

しかし、最終的にランボルギーニとそのCEOは、同社初のEVとその後に続くモデルについて、決断を迫られることになるだろう。「この変化の一端を担えることを誇りに思いますし、光栄に思います」とヴィンケルマン氏は語る。

しかし、同氏はこれから起こることの重さを理解していると主張する。

「その一方で、私には当社で働く人々やその家族の将来に対する責任だけでなく、ブランドとその新製品という船を安全な場所に導き、対岸で待っているお客様の情熱的な手に引き渡すという、大きな責任があります」。

将来のランボルギーニの電気自動車に搭載されるバッテリーやパワートレインの技術について語るのは、少し時期尚早かもしれない。だが、ヴィンケルマン氏は、やや胸を張って次のように語った。「本当に信じられないほどパワフルで、ランボルギーニの精神に非常に忠実な車になると期待してください。まだ我々には時間が十分にあります。この車が発表されるときには本物のランボルギーニになっていると、私は強く確信しています」。

画像クレジット:Lamborghini

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(文:Roberto Baldwin、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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