Qonceptの技術とプロジェクションマッピングを利用したデモ。リアルタイムでプレイヤーの打った球の軌道をトラックできる
C向けの顔認識でARを楽しめるアプリはいくつかあるが、スポーツ分野でもARの活用が進んでいるようだ。4月24日、画像処理技術を開発する大阪大学発のベンチャーQoncept(コンセプト)は、データスタジアムと共同研究機関「Ath-Tech Lab(アステック・ラボ)」を設立した。それと同時に、Ath-Tech Labの第一弾プロダクトである「卓球トラッキングシステム」が国際卓球連盟に採用されたことを発表している。
この卓球トラッキングシステムは、その名前が示すように、卓球のボールの軌道をトラックするプロダクトだ。ボールの軌道と速度が分かり、そうしたデータから選手がどこに打ち返しているか、ボールにスピンがかかっているかなども算出できると、Qonceptの代表取締役社長兼CTOを務めるのは林建一氏は説明する。この技術は、今年の世界卓球選手権デュッセルドルフ大会の国際映像での採用が決定している。
卓球トラッキングシステムは、2台のカメラでボールの3次元の移動方向や速度をトラックしている。これまでこうしたトラッキングを実現するには、高性能なパソコンやカメラが必要だったが、彼らのプロダクトは、Mac1台の処理能力があれば十分にトラックできるのが特徴だという。以下の動画はバレーボールでの軌道トラックの様子だ。
2008年7月に設立したQonceptは、スポーツに限らず、建築や自動運転でも活用できる画像処理技術を開発していると林氏は説明する。一方、データスタジアムはメディアやスポーツチーム向けにデータ分析のソリューションを提供している会社だ。Ath-Tech Labでは両社が協力し、スポーツ領域でのAR技術の研究開発を進めるという。
こうしたスポーツのトラッキングシステムはプロ向けに制作しているものだが、今後の展開として、スマホで使えるC向のトラッキングサービスを展開することも考えていると林氏は言う。例えば、草野球でも手軽に選手のデータを分析できるプロダクトを想定しているそうだ。
「広告などでAR技術が使われるようになってきましたし、SNOWといった動画アプリも基本的にはARです。ARが少しづつ浸透していきていて、それが動画でもっと応用されるようになると思います」と林氏は話している。
先日、Facebookは自社の開発者カンファレンスF8でARプラットフォームを発表したのも記憶に新しい。すでに広く普及しているスマホでARが気軽に利用できるようになるなら、もしかするとARはVRより早く人々が身近に利用するものになるかもしれない。