リセットボタンを押したGoogle

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Googleはこれまで8年間にわたり、1年を通して最大のイベントであるI/O開発者会議をいつでもサンフランシスコで開催してきた。

しかし、今年はキャンパスのすぐ横にあるマウンテンビューの円形劇場に移動した(しかも屋外だ)。今振り返ってみれは、その動きは象徴的なものに感じられる。多くの点で、2016年は、Googleにとって変化の年だった:驚きをもって迎えられたGoogle/Alphabet再編成以降最初の1年が経過し、Googleがハードウェア、クラウド、そしてエンタープライズ真剣に取り組んだ年でもあった。業界全体を見ると、2016年はAIと機械学習の年でもあった、そしてGoogleはそこで最先端を走っていた。

ではここで、Googleのミスを正しく認識してみよう:メッセージングアプリのAlloDuoのローンチは皆を混乱させ、殆ど使われていない;スマートウォッチには苦労を重ね、そしてAndroid Wear 2.0のの出荷を来年1月初頭に遅らせたとしても彼らのウェアラブル戦略を助けるものにはならないだろう;GoogleのレゴのようなスマートフォンプロジェクトProject Araも突然の死を迎えた

しかしGoogleが提供するプロダクトの数を考えれば、同社がしばしば的を外してしまうのも無理はない。なので、良い部分に目を向けてみよう。

昨年Googleはプロダクトポートフォリオを明確化し、以前はふわふわとうろついていた、潜在的に収益性のある市場に狙いを定めた。ハードウェアがその分かりやすい例だ。様々なハードウェア製造業者たちと、実質的にAndroid携帯のレファレンスとなるNexusブランドを何年も造り続けて来たが、Googleは今年その努力を捨てて、自身の名前とブランドの下にPixel携帯電話を立ち上げた。

それ自身大したことだったが、GoogleはさらにGoogleホーム (Amazon Echoへの挑戦)、Google Wifi 、新しいChromecastドングル、そしてDaydream VRヘッドセットなども立ち上げている。これほどの量のハードウェアがGoogleから発表された前例はない、しかもこれらのほとんどすべてがゼロから開発されたものだ。

グーグル・ホームオレンジ

Googleが独自のハードウェアを作ることについて真剣に取り組んでいるという証拠が必要な場合は、そのリストをもう一度読み直して欲しい(そこにPixel Cタブレットを追加することもできるだろう、これは2015年後半にローンチされて以来ずっと残っているものだ)。

これらの沢山のプロダクトとGoogleの全体的なAIに関する野望の中核にあるのが、自社のプロダクトラインを横断して動作する会話型パーソナルアシスタントとしてGoogleが構築しているGoogleアシスタントだ。

機械学習とAIに対する同社の関心はもちろん、新しいものではない、このアシスタントは、長年にわたるGoogleナレッジグラフや他のプロジェクト(Google開発している独自の機械学習チップなども含む)の成果の上に構築されている。

しかし、2016年のGoogleは、消費者に役立つAIの賢さを強調するための、沢山の新しい切り口を見つけた。Googleホームのアシスタントは市場に最初に出されたものではないが、私はAmazonの現在の成果よりもよりスマートでより便利だと考えている。そして、GoogleはまたTensorFlowや他のプロジェクトで、自分自身の仕事を再現し改善したツールを開発者コミュニティにバラ撒くことで、最後には自分自身に成果の戻ってくる種まきを行う方法を習得した。

GoogleはまたMicrosoftやその他の競合相手に生産性の分野で戦いを挑む際に、そのAIを自身の生産性ツールに持ち込み始めている。これらのツールは、以前はGoogle Apps for Work(あるいはEducation)という名前で呼ばれていたものだ。今年、Googleはその名前があまり良いものではないと判断し、その代わりに「G Suite」という名前を使うようになった。私はその名前を気に入ってはいないが、これもまたGoogleが期待を上回ろうと努力している証拠の1つだ。

おそらく最も明確にGoogleに起きた変化を示す1つの領域は、Googleクラウド(これも新しい名前だ)部門である。Googleは9月後半の小規模の非公開イベントで、G Suiteならびに開発者と小規模ビジネスのためのすべてのプロダクトがGoogleクラウドのもとに収まったことを発表した。内部的には、Googleはこれらの活動のすべてを指す名前として「Googleエンタープライズ」を使用していたが、どういうわけかこの名前はお気に召さなかったようだ。

そうした多くの変化、そしてAmazonとMicrosoftがここ数年で大きな前進をみせる中で、生産性ツールとクラウドプラットフォームにあまり手を掛けてこなかったGoogleが、ついにエンタープライズ市場に真剣に取り組むもうとする明らかな新しい取り組みを受けて、2015年にGoogleはDiane Greeneを取締役として迎えることになった。彼女の参加で、Googleは競合他社にそうした儲かる市場を譲るつもりがないことを示したのだ。

昨年から、AWSとAzureに対する競争力を高めるためにGoogleはそのクラウドプラットフォームのためのより多くのデータセンターの開設を始め、沢山のクラウドプロダクトを立ち上げている(一連の機械学習に基づくサービスも含まれている)、そしてコアとなる開発者プラットフォームFirebaseを立ち上げ、企業ユーザーにG Suiteアプリの使い方を教えるための教育会社も買収した。さらには企業向けの省コードアプリ開発ツールもローンチした。また、大企業のためにより役立つように、G Suiteアプリに数多くのアップデートを施した。

これらのほとんどは小さな動きだが、これらすべてを合わせてみるとGoogleがエンタープライズ市場に対しての取り組みに対してリセットボタンを押して、その市場を真剣に追い始めたことがわかる。

Alphabet/Googleの再編成は、おそらくこの変化を後押しするものだ、しかしそのことで事態を複雑にもしている。例えば、以前はGoogleの自動運転車のプロジェクトとして知られていたWaymoは、現在はAlphabetの子会社である。しかしそれはGoogle自身のプロジェクトを探す目的のためのもののようだ、実質的にすべての収益の源となり続けている広告機械以外の収益を探そうとしているのだ。

来年はどうだろう?Google I/Oは再びモスコーンで開催される、しかしGoogle自身の再発明はまだ終わっていないと思う。

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(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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