テック大企業に対する、また別の独占禁止法違反疑いの調査が始まった。ロシアの公正取引委員会(FAS)は、3月にあったセキュリティ企業Kaspersky Labs(カスペルスキー研究所)からの申し立てを受け、正式にApple(アップル)に対する調査を開始した。
KasperskyのFASへの申し立ては、Kaspersky Safe Kidsという同社が提供するペアレントコントロールに対するAppleのポリシーの変更に関するものだ。同社のブログ投稿によると、Kasperskyのアプリは何の問題もなく3年近くAppleのストアで展開されていたが、2017年にAppleはコンフィギューレションプロファイルの使用がApp Storeポリシーに反すると通達してきたとしている。
AppleはKasperskyに、アプリからコンフィギューレションプロファイルを削除するように伝えた。これは、アプリコントロールとSafariブラウザブロッキングという、親にとって活用度の高い主要機能2つをなくすことを意味する。
同社はまた、アップルの異議のタイミングはiOS 12におけるスクリーンタイム機能の発表後だったと指摘している。この機能ではiOSユーザーは特定のアプリやウェブサイトに費やした合計時間をモニターしたり、時間制限をセットしたりできる。Kasperskyは、スクリーンタイムが「本質的にペアレントコントロール用のAppleのアプリである」ということに異論を唱えている。それゆえに、Appleがストアでフェアではない支配的パワーを働かせた、との申し立てにつながった。
FASの調査について、我々はAppleにコメントを求めている。同社はロイター通信に対し、他社からの苦情を受けて4月に出した、ペアレントコントロールアプリに対するポリシーに関しての声明文に言及した。
声明文では、Appleはそうしたアプリが「ユーザーのプライバシーとセキュリティをリスクにさらした」ためにApp Storeから除外した、としている。そして「モバイル・デバイス・マネジメント(MDM)と呼ばれるかなり侵略的なテクノロジー」の使用を指摘した。
しかしKasperskyは、同社のアプリはMDMを使用しておらず、過去においても使用していないと主張している。
申し立てと、Appleのペアレントコントロールアプリの締め付けに対するメディアの関心を受け、Appleはこの特異なユースケースに対するMDMへの姿勢を弱めたようだ。具体的には、App Storeレビューガイドラインをアップデートし、限定ながらペアレントコントロール向けにMDMの使用を許可した。
Kasperskyはまた、Appleのデベロッパー・エンタープライズ・プログラム・ライセンス・アグリーメントでは「ホームユーザー向けのアプリにおけるMDMプロファイルとコンフィギュレーションプロファイルの使用は書面でのAppleの同意があった場合のみ可能になる」と明言していると指摘する。
しかしながら、Appleのアップデートされたルールと規制はいまだに「こうしたプロファイルの使用を許可する明らかな基準と、使用に関するAppleの同意を入手するのにクリアすべき基準についての情報を提供していないとKasperskyは主張する。それゆえにKasperskyは申し立てを取り下げる気はない。
Kasperskyはまた欧州でもみられるこの問題に関し、独禁法違反で訴える準備も続けている。競争についての別の申し立てとしては、音楽サービスのSpotifyが最近Appleを提訴した。
ロシアの当局はこれまでテック大企業の独占禁止の苦情対処に比較的素早く対処してきた。最も知られているのが、2015年にロシアの検索大手Yandexが苦情を申し立てた数ヶ月後に、Googleに対しAndroidのサービス制限を是正するよう命令した件だ。
欧州規制当局の場合、Googleの競争阻害に関する似たような結論にたどり着くまでに、さらにもう数年かかっている。
イメージクレジット: EMMANUEL DUNAND/AFP / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)