ロスコスモス、衛星打ち上げ失敗は初歩的エラーとの説を否定――ロシアの宇宙ビジネスには打撃

先月、ロシアはアムール州に新たに建設されたヴォストチヌイ宇宙基地から多数の衛星を積んだロケットを打ち上げたが軌道投入に失敗した。このほどロシアの宇宙開発組織ロスコスモスが発表したところによると、この失敗はこれに先立ってロシアのドミトリー・ロゴジン副首相が示唆していたのとは異なり、初歩的なプログラミング・エラーによるものではないという。

11月28日の打ち上げはロシアの宇宙事業にとって重要なビジネスで、4500万ドル相当のロシアの気象衛星Meteor-M No. 1およびNo.2に加えて18基の小型衛星を搭載していた(SpaceNewsのリスト)。この打ち上げはヴォストチヌイ基地からは2回目で、前回の打ち上げは1年半以上前のことだった。

Soyuz-2.1Bロケットの発射自体は正常に見えたものの、数時間後にロスコスモスはMeteor-Mが「所定の軌道上にないためコンタクトを取れなくなった」と発表した。その後、ロケットの2段目とペイロードの衛星はすべて太平洋上で失われたことが確認された。

当然ながら、何億ドルもの損失に「いったい何が起きたのか?」という声が起きた。ロスコスモスのアレクサンドル・イワノフは「ソフトウェア・アルゴリズムに誤りがあり、新しいヴォストチヌイ発射基地の位置とが予期せぬ複合を招いた」と説明した。

ところが昨日、国営テレビ、Rossiya 24のインタビューでロゴジン副首相が思いがけないヒューマン・エラー説を述べた。

Reutersによれば、「あのロケットは打ち上げ地点が(カザフスタンの)バイコヌール宇宙基地に設定されていた。打ち上げ地点の設定が誤っていた」と述べた。

これが本当ならロシアの宇宙事業には大恥辱だ。バイコヌールはロシアの主要な宇宙基地だが、何千キロも東のヴォストチヌイで発射されるロケットにバイコヌールの位置が入力されたというのも驚きなら、その間違いが最後まで訂正されなかったとすればそれ以上に大きな問題だ。ロスコスモスが異例に早く反応してロゴジンの主張に反駁したのもそれが理由だろう。

RIA Novostiの記事(原文ロシア語、RTの英訳による)によれば

今回の飛行ミッションはすべてヴォストチヌイ・スペースドロームを基準としており、実証済みの方法により専門家がチェックを行った。今回の事故の原因は、ヴォストチヌイ宇宙基地の特異性による[もので]既存のいかなる数学的モデルによっても予測不可能だった。

要するに「衛星打ち上げは難しい。しかしわれわれは間抜けの集まりではない」というこだろう。ロスコスモスは衛星打ち上げで最近まで成功を繰り返しており、発射位置というような初歩的なミスで失敗するというのは辻褄が合わない。どんな高度な数学モデルも失敗することはあるだろう。

しかしたとえそうであっても、この失敗はロシアの宇宙事業にとって高くついた。失敗の原因を巡る今回のような論争も決して好感を与えない。全体としてロスコスモスに対する信頼感は大きく低下した。SpaceXのような民間宇宙企業が衛星打ち上げを連続して成功させている状況を考えると、、先月の失敗はこれまで多額の収益をもたらしてたきたロシアの宇宙事業に対する深刻な打撃となりかねない。

画像:: Roscosmos

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

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TechCrunch Japan

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