Hindenburg Research(ヒンデンブルグ・リサーチ)がNikola Motor(ニコラ・モーター)を告発した報告書は、米国証券取引委員会(SEC)が調査を行い、創業者が会長職を辞任する事態を招いた。この投資会社は今度、別の電気自動車会社に狙いをつけている。
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今回の標的となったオハイオ州のLordstown Motors(ローズタウン・モーターズ)は、特別買収目的会社であるDiamondPeak Holdings Corp.(ダイアモンドピーク・ホールディングス)と合併した後に上場し、市場価値は16億ドル(約1744億円)に達している。
ヒンデンブルグ・リサーチは米国時間3月12日の報告書で、ローズタウン・モーターズのショートポジションを取ったと発表。同社の株価は21%急落した。翌日にはわずかに回復し、前日の15%安となった。ヒンデンブルグのショートポジションは「収益と販売可能な製品がなく、その需要と生産能力の両方について投資家に誤解を与えたと思われる」会社であるという根拠に基づく。
この12日に発行された報告書の中でヒンデンブルグは、ローズタウンが電動ピックアップトラックの予約を10万台受注したという2021年1月の発表に異議を唱えている。この空売り投資会社は「広範な調査の結果、同社の注文は大部分が架空のものであり、資本調達と正当性を付与するための小道具として使用されているようだということがわかった」と述べている。ヒンデンブルグはさらに踏み込んで、ローズタウンの創業者Steve Burns(スティーブ・バーンズ)CEOが、Workhorse Group(ワークホース・グループ)を率いていた2016年の時点で、トラックの予約注文が入るごとにコンサルタントに報酬を支払っていたと主張している。
またこの報告書には、1月にローズタウンの試作車が試験運転中に炎上した事件の写真と911番通報も掲載されてる。
TechCrunchがローズタウン・モーターズにコメントを求めたところ、同社広報担当者は12日午後「当社では今後数日以内に完全かつ詳細な声明を発表する予定です。その際には、ヒンデンブルグ・リサーチの報告書に絶対に反論するつもりです」と、eメールで返答した。
バーンズ氏は、Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)へのコメントで、この報告書には「真実と嘘が半分ずつ」含まれており、上場企業として初めての四半期決算報告を前に、ヒンデンブルグがローズタウンの株価に傷をつけようとしたものだと述べている。
このスタートアップは、2019年に生産を休止した旧General Motors(ゼネラルモーターズ)の完成車組立工場を買い取り、その場所であるオハイオ州の町の名を会社名とした。この取引によって、GMはローズタウン・モーターズの少数の株を取得した。
ローズタウン・モーターズは、設立2年に満たない会社としては興味深い歴史を持っている。同社はバーンズ氏のもう1つの会社であり電動輸送機関技術を手がける上場企業のWorkhorse Group(ワークホース・グループ)から分離した会社で、ワークホースはローズタウンの10%の株式を保有している。
ワークホース自体も1998年に設立された小さな会社であり、これまでさまざまな局面で財務的に苦労してきた。最近では、米国郵政公社へ電気自動車を供給する事業の入札に敗れ、そのニュースを受けて株価は15%近く下落した。現在、ワークホースの株価は16.58ドル(約1800円)前後で推移しており、2月4日の記録的な価格である42.96ドル(約4680円)と比べると60%も下がっている。
ローズタウン・モーターズは、2019年にGMから取得したオハイオ州ローズタウンにある620万平方フィート(約57万6000平方メートル)の組立工場で、2021年から年間2万台の電動商用トラックを生産する計画だと言っている。
ローズタウンは2020年6月、派手で政治色の強いセレモニーで、電動ピックアップトラック「Endurance(エンデュランス)」を公開した。だが、同社はその時、生産を計画しているこの電動トラックの内装や性能、バッテリーなどの詳細な情報は明らかにしなかった。この発表イベントの後半はトラックから一転して、特別ゲストとして出席したMike Pence(マイク・ペンス)元副大統領が中心となり、Donald Trump(ドナルド・トランプ)元大統領の雇用と製造業に関する政策、中国や新型コロナウイルスへの対応について25分間の演説を行った。
このように詳細は不明にもかかわらず、バーンズ氏は6月に「2万台の予約注文を受けた」と発表。これは予約した顧客の全員が購入した場合、初年度の生産量が完売することを意味する。ローズタウン・モーターズは当時、多くの潜在的顧客が購入の意向を示す通知を送ってきており、その中にはAutoFlexFleet(オートフレックスフリート) 、Clean Fuels Ohio(クリーン・フューエルズ・オハイオ)、Duke Energy(デューク・エナジー)、FirstEnergy(ファーストエナジー)、GridX(グリッドX)、Holman Enterprises(ホルマン・エンタープライズ)とARI、Summit Petroleum(サミット・ペトロリアム)、Turner Mining Group(ターナー・マイニング・グループ)、Valor Holdings(バローホールディングス)、さらにいくつかのオハイオ州の自治体が含まれると述べていた。
バーンズ氏は後に予約注文が10万件に達したと述べているが、ヒンデンブルグはこれらの主張に異議を唱えている。
以下、ヒンデンブルク報告書より。
我々の調査によると、ローズタウンの受注簿は、その多くが車両フリートを保有してさえいない顧客からの、偽装またはまったく拘束力のない注文で構成されていることが明らかになった。同社の元従業員やビジネスパートナーによると、CEOのスティーブ・バーンズ氏は、顧客の属性を問わず、単に資本調達と正当性を付与するための手段として注文を受けようとしていたという。さらに、同社が企画しているクルマに需要があると主張するため、苦し紛れに顧客に金銭を支払って、価値のない拘束力のない予約注文をさせたこともあった。
また、話を聞いたローズタウンの「顧客」には「購入の意向を示す通知」が「宣伝用」であることを熱心に説明する人や「何も約束していない」と断言する人、そしてローズタウンが記録した予約注文の規模は「まったくあり得ない」と確信を持っていう人もいた。ある「重要な」顧客のCEOは、我々の働きかけで初めてローズタウンとの取り決めを知ったと語った。
バーンズ氏はWSJに対し、ローズタウンがコンサルタントに報酬を支払い、拘束力がないと了解済みの予約注文を作成したことを認めた。同氏は、これが「市場の需要を査定するため」と説明し、このような行為が会社の予約記録を偽るためであるということは否定した。
カテゴリー:モビリティ
タグ:Lordstown Motors、電気自動車
画像クレジット:Lordstown Motors
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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)