中古車のC2Cマーケット「Ancar」に“いつ売れるかわからない”を解決する新サービス

中古車を個人間で売買できるマーケットプレイス「Ancar」を展開するAncarは2月22日より、車を売りたいユーザーが従来よりもスピーディーに現金を受け取れる新しい切り口のサービスを始める。

サービス名は「おまかせ出品」。その名の通り、純粋なC2Cの中古車売買ではなくAncarの運営に車の売却を“おまかせ”するような仕組みだ。

これまでのAncarはメルカリのようなフリマアプリと同様に「車を売りたいユーザーと買いたいユーザーをマッチングする役割」だったので、車の写真や情報の登録、売却の交渉は基本的にユーザー自身で行う必要があった。

一方で本日からスタートするおまかせ出品では、Ancarの運営が売買をサポートする。同社が売却を希望するユーザーから車を預かり、車両検査を実施。査定した最低買取保証金額を最短3日で支払う。

預かった車は運営側がAncar上に出品して従来の形式で売却を試みるのだけど、その際に30日間という期間が設定されているのがポイントだ。期間内に当初合意した買取保証金額よりも高い価格で売れれば、ユーザーは収益の一部を追加で獲得することが可能。反対に売買が成立しなかった場合でも、運営が買取保証金額で車を買い取る(手数料を払って返却を希望することもできる)。

「買取保証金額は一般的な買取相場と同等かそれ以上の金額を提示する。車を売りたいユーザーは中古車買取店で売却する金額にプラスアルファが見込めるようになり、単純な買取の仕組みを利用するよりもメリットが大きい」(Ancar代表取締役の城一紘氏)

売買が成立した際にシステム利用料と手数料6万円がAncarの収益となるビジネスモデル。同社では1月に自社整備工場を川崎市にオープンしていて、期間中はそこで車を管理する。

おまかせ出品の仕組み

さて、Ancarが今回おまかせ出品を始めるに至った背景にはどんな考えがあったのだろうか。城氏によると「いつ売れるかわからない」というフリマサービスに共通する課題が原因で、「けっこうな数のユーザーの離脱に繋がっていた」状況を打開したかったようだ。

「Ancarは腰を据えてじっくり車を売りたいユーザーには刺さっていたが、その一方で『駐車場を解約するから』『次の車がくると駐車スペースが足りないから』『新しい車を買うための頭金が必要だから』などの理由から、早く現金化したいというユーザーも一定数いる。一度出品してもこれ以上は時間をかけられないと売却を断念するケースも多く、それが機会損失になっていた」(城氏)

そんなユーザーに新たな選択肢としておまかせ出品を提供することで、上述したような課題の大部分は解消されそうだ。まずAncar側で車を預かるためユーザーの駐車場が空き、管理コストや駐車スペース不足の問題はなくなる。デポジットのような形で最低保証金額が振り込まれることで、スピーディーに現金化したいニーズにも応えられる。

加えて出品に必要な作業や、購入希望者との交渉も経験豊富なプロに任せられるので成約率が上がる可能性もあるだろう。もちろん成約すればユーザーはさらなる収益を手にすることもできる。

城氏は以前から、従来の中古車買取の仕組みでは買取業者や業者オークションなど複数の業者が介在して中間コストが多重に発生するため、買取価格も店頭販売価格に比べてかなり安くなるという話をしていた。これまでは素早く車を現金化しようと思えば、ある程度安い価格で売却せざるを得なかったところを、「(売りたいユーザーにとって)アップセルできる可能性のある」おまかせ出品で変えていくのが狙いだ。

成約率が上がればAncarの収益も増える。そもそもAncarのビジネスモデル自体も売買が成約した際にのみ手数料を受け取る仕組みなので、成約に至る前に離脱されてしまうのは同社にとって大きな痛手だった。

「これまで途中で売却を断念してしまっていた人たち全員が使うとは思わないが、そういったユーザーを繫ぎ止めるひとつの手段として自社にとっては重要な位置付けになる。実際に自分たちが車を預かり、C2Cで売れる前に最低保証金額を振り込むことで、コミュニケーションの仕方も変わる」(城氏)

おまかせ出品に近しい仕組み自体は「委託販売」という形で一般的な買取市場でも存在したが、Ancarの場合はオンラインのC2Cマーケットと組み合わせることで、「預かった車を全国のユーザーに対してオンライン上で販売できる」(城氏)のが特徴だ。

Ancarは2015年の創業。2018年10月にベクトル、AGキャピタル、クロスベンチャーズなどから4億円を調達していて、累計の調達額は7億円に及ぶ。

投稿者:

TechCrunch Japan

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