中国で個人情報の保護を義務付ける法案が可決されたと、国営メディアの新華社が報じた。
この法律は「個人情報保護法(PIPL)」と呼ばれ、11月1日に施行される予定だ。
2020年提出されたこの法案は、ユーザー情報の収集に法的な制限を加えることで、商業分野における無節操なデータ収集を厳しく取り締まろうとする中国の共産党指導者の意図を示している。
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新華社によると、この新法はアプリメーカーに対し、個人の情報をどのように使用するか、あるいは使用しないか、そして使用する場合は個人の特性に基づいてマーケティングを行うか、あるいはマーケティングの対象としないか、といったことについての選択肢を、ユーザーに提供するよう求める。
また、この法律は、生体認証、医療・健康データ、財務情報、位置情報など、センシティブな種類のデータを取り扱う場合、個人から同意を得ることをデータ処理者に要求する。
ユーザーデータを違法に処理したアプリは、サービスの停止または終了を強いられるおそれがある。
中国でビジネスを行う欧米企業が、市民の個人データの処理をともなうビジネスを行う場合、この法律の域外適用に対処しなければならない。つまり、外国企業は、中国国内に代表者を配置し、中国の監督機関に報告しなければならないなどの規制上の要件に直面することになる。
表面上は、中国の新しいデータ保護制度の中核となる要素は、欧州連合(EU)の法律に長年にわたり組み込まれてきた要件とよく似ている。EUの一般データ保護規則(GDPR)では、個人データに深く関係する包括的な権利を市民に提供している。例えば、健康に関するデータなど、EU法が「特別なカテゴリーのデータ」と呼ぶ個人情報を処理する際には、同意に高いハードルを設けている(ただし、どのような個人情報が取り扱いに最も細心の注意を要するとみなされるかについては、各国のデータ法によって違いがある)。
また、GDPRの適用範囲も域外に及ぶ。
しかし、中国のデータ保護法が施行される状況の背景は、当然ながら欧州とは大きく異なる。特に、中国国家が膨大なデータ収集活動を利用して自国民の行動を監視し、取り締まっていることを考えるとなおさらだ。
PIPLが中国政府の各部門による市民のデータ収集に何らかの制限を課すとしても(この法律の草案では、国家機関も対象となっていた)、それはほとんど上辺だけの取り繕いに過ぎない可能性がある。中国共産党(CCP)の国家安全保障組織によるデータ収集を継続させ、政府に対する中央集権的な統制をさらに強化するためであると考えられるからだ。
また、中国共産党がこの新しいデータ保護規則を利用して、どのように国内のハイテク部門の力をさらに規制しようとする(「飼いならす」と言ってもいい)かも注目される。
中国共産党は、規制の変更をTencent(テンセント)のような大手企業に対する影響力として利用するなど、さまざまな方法を使ってこの分野を取り締まってきた。例えば今月初め、北京市はTencentのメッセージングアプリ「WeChat(ウィーチャット)」の青少年向けモードが、未成年者保護法に準拠していないと主張し、同社に対し民事訴訟を起こした。
PIPLは、中国政府に国内のハイテク企業に制約を加えるための攻撃材料を豊富に提供することになる。
また、欧米の大手企業では当たり前のように行われているが、中国国内の企業が行うと摩擦が大きくなりそうなデータマイニングの実行に対しても、一刻の猶予も与えず攻撃している。
Reuters (ロイター)によると、全国人民代表大会(全人代)は同日、この法律の成立を記念して、国営メディア「人民法院報」に論説を掲載した。この論説では、この法律を称賛するとともに、レコメンドエンジンのような「パーソナライズされた意思決定」のためのアルゴリズムを使用する事業者は、まずユーザーの同意を得るよう求めている。
論説には次のように書かれている。「パーソナライズはユーザーの選択の結果であり、真のパーソナライズされたレコメンデーションは、強制することなくユーザーの選択の自由を確保しなければならない。したがって、ユーザーにはパーソナライズされたレコメンデーション機能を利用しない権利が与えられなければならない」。
中国以外の国でも、アルゴリズムによるターゲティングに対する懸念は、もちろん高まっている。
欧州では、議員や規制当局が行動ターゲティング広告の規制強化を求めている。欧州委員会は、デジタル市場法(Digital Markets Act)とデジタルサービス法(Digital Services Act)という、この分野を規制する権限を拡大する新たなデジタル規制案を2020年12月に提出し、現在協議を行っている過程にある。
インターネットの規制は、明らかに新しい地政学的な戦いの場であり、各地域はそれぞれの経済的、政治的、社会的な目標に合ったデータフローの未来を形作るために争っている。
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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)