ユニコーン企業なしに業界は盛り上がらない。最近中国で投資が集中している、オンデマンドで自転車を借りられるサービスを提供する企業の中から、初めて評価額が10億ドルを超える企業が誕生した。
オンデマンドレンタサイクル業界には、今年だけでもこれまでに3億ドル以上のお金が集まっており(しかもその投資は1社に集中している)、Ofoはついに誰もが待ち望んでいた、この業界初となる評価額10億ドルを達成した。北京に拠点を置く同社は、DSTが中心となったシリーズDで4億5000万ドルを調達したと本日発表した。
配車サービスで中国トップのDidi Chuxingは、昨年Ofoと投資契約を結んでおり、今回のラウンドでもその存在感を発揮していた。Didi以外でOfoのシリーズDに参加した投資家は、全てDidiにも投資したことがある企業だったのだ。具体的には、リードインベスターのDST、Matrix China、CITICがそうで、今回のラウンドではDidi自体も投資を行った。
Ofoと競合サービスの戦いは、DidiとUberの戦いと似ている部分が多いため、Ofoへの投資はDidiらしく映る。なお、DidiとUberの対決の結果はご存知の通りで、Uberが負けを認め中国事業をDidiに売却することになった。
一方Ofoは、Tencent、Xiaomi、Sequoia China、シンガポールの政府系ファンドTemasekなどから資金を調達したライバルMobikeと、助成金・資金調達バトルを繰り広げている。Mobikeは、年明け1月にシリーズDで2億1500万ドルを調達し、その後FoxconnとTemasekからの戦略的投資として少なくとも8500万ドルを追加調達した。MobikeはOfoに先んじて、レンタサイクル業界でもっとも多くの資金を集めたスタートアップだと主張していたが、今度はOfoが「初のユニコーン企業」というタイトルで反撃した。
あまり深い意味を持たない形だけのタイトルや自賛は置いておいて、彼らのビジネスモデル自体にはさまざまな疑問が浮かんでくる。Uberが考案しDidiが中国でスケールしたライドシェアサービスには、長期的な利益率に関して問題があると思っている人もいるかもしれないが、MobileとOfoの話は全く別物だ。
両社とも表向きは、テクノロジーを使って誰でも自転車を借りれるような環境をつくろうとしている。自転車にはGPSチップが搭載されているので、どこかにまとめて駐輪しておく必要がなく、ユーザーはモバイルアプリを使って簡単に自転車を借りられる。この仕組みは、ロンドンの「Boris Bikes」や世界中の国々で公的機関が提供しているレンタサイクルサービスとほぼ同じだ。
仕組み自体は大変便利だが、1時間当たり1中国元(0.15ドル≒17円)という利用料でどのくらいの利益が出ているのかはよくわかっていない。さらに自転車を壊そうとする人(どこにでも嫌な人はいるものだ)の問題やデポジットの取り扱いに関する問題もある。TechCrunchのパートナーサイトTechnodeの最近の報道によれば、レンタサイクルを提供している規模の小さな企業の中には、デポジットを資金繰りに利用しているところまであるという。
スケールに関しては、昨年6月からこれまでに2000万人の登録ユーザーに対して、100万台を貸し出したとOfoは発表している。さらに同社は中国の40都市で営業しており、現在はアメリカ、イギリス、シンガポールなどへの進出に向けた初期段階にあるという。
一方Mobikeは、これまでに1000万人のユニークユーザーが、2億回以上も同社のサービスを利用したと最近発表した。彼らは大都市を対象にサービスをスタートさせたが、その後拡大を続け、今では北京、上海、広州、深センを含む国内21都市をカバーしている。さらにOfo同様、Mobikeも今年中にアジア、ヨーロッパ、北米といった海外市場へ進出しようとしている。
Uberの中国事業の買収によって、Didiはひとつの戦いを終わらせることができたかもしれないが、またすぐに新たな戦いが起きようとしている。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)