Uberの中国事業を買収した企業価値600億ドルの配車サービスDidi Chuxing(滴滴出行)は、新たな女性客殺害事件を受けてサービスの一部を一時停止する措置を取った。死者は5月の乗客殺害事件に続き今年2人目だ。
今週末、地元警察は、中国東部に位置する浙江省で金曜日にDidiの相乗りサービスHitchを利用した20歳の女性を暴行・殺害したとして男を逮捕した。ロイターの報道では、女性は失踪する前に友人に助けを求めるメッセージを送っていた。
温州市の当局は、Didiが中国全土でHitchを一時停止すると発表する前にサービスを一時的に禁止する措置を取った。Didiの他の(商業的な)相乗りサービスや配車サービスは、今回の一時停止には含まれない。
Didiは「遺憾な過ちによりHitchサービスを停止することを誠に申し訳なく思う」との声明を出した。
Hitchは、ドライバーが向かう方向へ乗客が無料で乗車できるというもので、ヒッチハイキングの現代版といえる。乗客は、ガソリン代に相当するチップを払うよう推奨されるが、考え方としてはそれぞれの乗車をより効率的にしようというものだ。Didiはこのサービスを営利目的で行なっているわけではなく、収益をあげている他のサービスへと乗客やドライバーをひきつけるための戦略の一環だ。
Didiによると、Hitchでは過去3年において10億回もの利用があった。しかし安全性において大きな問題があった。
今回の殺人事件は、Didiのドライバーだった父親のアカウントを使ってDidiのプラットフォームにアクセスできる状態にあったドライバーが、航空会社の客室乗務員を殺害した河南省での事件のわずか3カ月後に起きた。河南省の殺人事件を受け、DidiはHitchのサービスを6週間停止した。そして、多くの制限を設け、特に深夜の時間帯はドライバーは同性の乗客のみ乗せることができるという条件付きで、6月に再開したばかりだった。
警察によると、今回殺害された女性の乗車は深夜1時で、当然のことながら懸念すべき要素が余りある。
逮捕された殺人犯は前科はなく、事件の前日にDidiの安全チームに要注意扱いであることが周知されたばかりだった、とDidiは声明文で述べている。別の女性客が、ドライバーに助手席に乗るように言われ、降車した後にしばらくつきまとわれたとして、Didiに苦情を寄せていたのだ。
ロイターよると、この苦情に対応した安全センターの職員は、2時間以内に調査を開始するという社のポリシーに従わなかった。このポリシーは、5月に殺人事件を起こしたドライバーについて、別の乗客から不快な行為があったとして苦情が寄せられていたという事実を受け、サービスを一時停止している間に導入した。
「今回の事件は、我が社の顧客サービスのプロセスの欠如、特に前の乗客からの苦情に素早く対応できていないこと、警察とスムースに情報共有できていないことを示している。これはあまりにも手痛い代償だ。我々としては、犯罪を防ぎ、ユーザーの安全を守るため、より効率的かつ実用的な共同的な解決策を模索することで、司法当局や関係する皆さまに誠意をみせたい」とDidiは声明文で述べている。
Didiは今回の殺人事件を受け、2人の重役をクビにしたことを明らかにした。1人はHitchの統括マネジャーで、もう1人はDidiのカスタマーサービス担当副社長だ。
Didiはまた、一般人や専門家を交えて共同で業務プロセスを監査するシステムを間もなく立ち上げる、と発表した。
5月の殺人事件後、Didiは安全管理を向上させるために、“関係当局や専門家のプロアクティブなコンサルテーションのセッション”を予定している、と述べていた。
Didiは、2016年にUberの中国事業を買収・統合して以来、中国の配車サービス業界では事実上、独占状態にあった。しかし今年に入って、競合他社が増えている。
特に、ライバルのMeituan Dianping(美団−大衆点評)からのプレッシャーにさらされている。Meituan Dianpingはローカルサービスから始まったが、最近ライドシェアリングサービスを開始し、Mobikeの買収でドックレスバイクシェアリングにも参入した。Meituanは香港市場に新規株式公開を申請し、報道によれば40億ドルを調達する可能性があるという。
Meituanは、中国におけるローカルサービスマーケットの覇権をめぐりAlibabaと激しい戦いを展開しているーAlibabaは自社のEle.meビジネスのために30億ドルを調達したばかりだ。しかし、今回の事件を受け、Didiに取って代わる存在となるために、Meituanがこれまでの倍もの注意を安全策に向けることは疑う余地はないだろう。
Didiは、謝罪の声明の中にあえてHitchのこれまでの乗車回数を具体的に盛り込み、Hitchがかなり利用されているという点を強調した。しかし現時点では、いかにサービスが人気で、あるいは社会的意義があろうとも、全ての乗客の安全が確保できない限りはサービスを停止するのが最善の策のようだ。
イメージクレジット: Bloomberg
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(翻訳:Mizoguchi)