中国・アメリカを股にかける投資家のトランプ政権に対する思い

screen-shot-2017-01-25-at-3-58-07-pm

ドナルド・トランプ大統領は、中国に対して何度も貿易戦争をはじめると脅しをかけており、中国も段々それを真剣にとりはじめた

シリコンバレーに拠点を置きながら15年以上も中国企業へ積極的に投資を行ってきたGGV Capitalでは、マネージング・ディレクターのHans Tungが、その攻防を戸惑いながらもじっと見つめている。

Tungは、GGVがオフィスを置く上海や北京を含む、彼のネットワークから情報を集めているという。「中国は(まだトランプ大統領のことを)そこまで心配していません。トランプ大統領は今日右を向いていても、支持を勝ち取るためであれば、明日は左を向くような人物だと思われています。とりあえず実際に何か動きがあるまで静観しよう、というのが大方の考えのようです。私は(中国政府が)いかなるときも過剰反応したくないと考えているのだと思います」

Tungの世界の状況に関する考えは、初期にGGVから投資を受けていたEC大手Alibaba(GGVはAlibabaが2014年に上場する前に株式を売却した)のファウンダー兼CEOであるJack Maの考えと同じだ。先週ダボスで行われた世界経済フォーラムでMaは、「貿易戦争は世界全体に破滅的な結果をもたらすだろう」と述べ、中国はトランプが落ち着くまで少し待った方がよいと話していた。

さらにMaは、もしもAlibabaを存続させるか貿易戦争に突入するか選ぶならば「Alibabaをたたむ」とさえ考えるほど、この問題を真剣に考えていると語った。彼の発言に芝居がかった様子はない。Maは8月にもCNNで貿易戦争に関する不安を述べていた。「私たちはグローバリゼーションの道を進み続けるべきだと思います。グローバリゼーションは良いことですしね……貿易がストップすれば、戦争が起きるでしょう

昨日Tungは、トランプが中国をスケープゴートのように扱っているか、少なくともそうしようとしているように見えると示唆した。中国政府は「これまでアメリカ政府が、雇用の創出やラストベルトの復興の代わりに、イラク戦争やその他のことにどのくらいお金をつぎ込んでいるかを確認しています。中国はこれまで一度もアメリカ人から仕事を奪おうとしたことはありません。もしもアメリカ政府がうまく再投資を行い、多国籍企業が利益を母国に返還していれば、もっとアメリカは良い状態にあったはずです」

中国とアメリカの間にある、何十万マイルもの距離を毎年行き来しているTungにとって最も重要な問題は、トランプ政権と中国の冷え切った関係が、どのくらい急に彼の仕事に影響を及ぼす可能性があるのかということだ。

今の時点では彼は本当に心配していないようで、GGVは概ね「待ちの状態」にあると話す。さらにTungは、特にGGVが投資しているいくつかのEC企業については、地政学的にどのような状況の変化があっても「そのままにする」と語った。

彼の言うEC企業には、モバイルECアプリのWishも含まれている可能性が高い。Wishは主に中国から雑貨を底値で販売しており、投資家のJoe Lonsdaleによれば、年間「約50億」ドルのランレートを記録している。

さらにTungが早くから評価していたGGVの投資先企業には、英語でRed、中国語でXiaohongshu(小红书:小さな赤い本)と呼ばれるスタートアップがある。同社はソーシャルECプラットフォームを運営しており、中国のユーザーをターゲットに、海外からブランド品を割引価格で購入できるようなサービスを提供している。

Tungは、中国の現状は簡単に言えば「通常営業」だと話し、GGVはそれよりも、トランプ政権からのビジネスフレンドリーな話にフォーカスしようとしているようだ。

アメリカ国内からは、中国とアメリカの関係がどう動いているのかよくわからないが、「今後は規制が緩和され、業界統合が進んでいくと思います」とTungは語る。「M&Aはこれからやりやすくなるでしょうね」

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。