編集部注: Elizabeth Coatesは、中国における人権およびインターネット検閲の研究者。
中国の検索巨人Baiduは、先週ブラジル市場に参入し、ポルトガル語にローカライズした検索エンジン、Baidu Buscaを提供開始した。これは、同サイトにとって2番目の海外版(日本語サイトは2007年に公開)であり、さらにエジプトおよびタイ版も計画している。
中国共産党の熱烈な支援を受けるBaiduは、アメリカ企業の優位性に挑戦する中国IT巨人の一社だ。
IT企業の世界進出を支援することは、中国指導部にとって経済的計算によるものだけではない(ただし、実際に得るものも大きい)。より重要なのは、政治的見返りと国際世論に影響を与える機会だ。中国国家インターネット情報室のWang Xiujun副主任は、「わが党とわが国の未来」は「思想的侵攻の戦い」の勝利にかかっていると言う。国家に好意的な中国インターネット企業は、思想の世界戦争における中心的存在であると見なされている。
そう考えれば、、ポルトガル語版Baiduが、中国指導部にとって微妙な話題の検索結果を厳しく検閲することは驚くに当たらない。
ポルトガル語版のGoogleとBaiduとで検索結果を比較してみよう。Google.br.comでは、戦車男(”o homem do tanque”)を検索すると、1989年に天安門広場へ向かう戦車の行く手を遮る孤立した反抗者の、写真やドキュメンタリビデオ、ニュース記事等が見つかる。
同じ検索をbr.Baidu.comで行うと、無名のブログやスパンデックスを纏った音楽アンサンブルのYouTubeページが見つかる。結果のトップはエジプトについてだ ― 天安門広場ではない。同じ内容の画像検索結果は、Tシャツの写真だ。そして、Googleが280万件の結果を返したのに対してBaiduはわずか5万件だった。
時として、Baiduの検索結果は、共産党のニュースソースのみからなる、極度に選別されたホワイトリストに基づいて生成されていると思われる。
Googleで “Falun Gong”(法輪功)を検索すると、瞑想の画像やブラジル及び国際法輪功ウェブサイト、さらには中国政府による人権侵害の説明へのリンクが生成される。
Baidu Buscaは全くの別世界であり、わずか66件しか検索結果を返さない(Googleは130万件)。その一つ一つが、国家が運営する人民日報へのリンクで、「法輪功の反人道性の決定的証拠」あるいは「法輪功、精神的アヘン」などの見出しが掲載さられている。中には、血の中傷にも似た、法輪功の施術者たちを恐怖の殺人者と糾弾する記事もあれば、国が認めた拘留者への拷問や虐待に関する記事を否定することに特化したページもある。
もし、Baiduが検索の国際市場の確保に成功すれば、われわれが中国について何を知り、どう考えるかに影響を与える強力なプラットフォームを持つことになる。しかし、もし同社の日本における経験が何らかの兆候であるなら、それは起こりそうにない。2007年の開業以来、Baidu Japanは毎年損失を出し続けている。日本政府は、同社製プログラムがユーザーにスパイ行為をしていると警告しており、YahooやGoogleに挑戦するには程遠い状況だ。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)