タクシードライバーは、長年の経験と勘を頼りに乗客を探しているだろう。しかしそう遠くない未来には、人工知能が乗客のいる場所を予測し、最適な運行ルートを提案するようになるようだ。本日NTTドコモは未来シェアと「AI運行バス」の実現にむけた共同開発を行うと発表した。交通事業者が運行する「AI運行バス」では、AIが事前に移動需要、時間、乗車人数を予測し、それに応じて最適な走行ルートや配車数を決定するという。
未来シェアは公共交通や移動をスマート化するSAV(Smart Access Vehicle)技術の実用化を目指し、公立はこだて未来大学から2016年7月に発足した大学発ベンチャーだ。彼らが手がけるSAVは、同じ方角に向かう乗客をバスのように複数人乗せ、それぞれを目的地まで送り届けるためのシステムだ。乗客が専用アプリで乗車位置と降車位置を指定すると、ドライバーはアプリで迎車と行き先、運行ルートなどの指令を受け取る。この仕組みは、タクシー配車サービスUberが提供するuberPOOLのライドシェアと似ている。
一方、NTTドコモでは以前よりタクシーの移動需要予測技術の開発に着手している。2016年5月には、東京無線協同組合、富士通、富士通テンと協力して、リアルタイムでの「移動需要予測技術」の商用化を目指した実証実験を開始すると発表した。この技術では、ドコモの携帯電話ネットワークから得られるエリア毎、属性毎の集団の人数といった人口統計と東京無線が持つタクシーの運行データ、時間や季節での変動傾向、エリア特性を組み合わせて解析することで、30分後のタクシー需要を予測する。
今回NTTドコモと未来シェアが協力し、互いの持つノウハウを組み合わせることで、2018年度中にも「AI運行バス」によるモビリティサービスプラットフォームの実現を目指すという。2016年12月には、NTTドコモが主催したデマンド乗合い車両の実証実験に未来シェアも参加し、東京お台場での実証実験を行っている。
NTTドコモは今回の共同開発について以下のようにリリースでコメントしている。「AI運行バス」の提供を通じ、交通事業者利用者の更なる利便性の向上や交通サービス事業者の高効率な経営の一助となる「技術」「ノウハウ」を確立することにより、社会課題である「少子高齢化」「人口減少」から生じる交通課題の解決に貢献してまいります。
今のところ、この「AI運行バス」は人間のドライバーに対して最適な運行データを提供することを想定しているようだ。けれど、グーグルやテスラをはじめ、各自動車会社が研究を進めている自動運転車にも組み込まれる日が来るのもそう遠くないかもしれない。