今週のまとめ―来週はiPhone 6発表、スマホカメラの進化続く、ゲームはクラウド化へ

iPhone 6いよいよ来週9/9(火)に発表、iWatchは?

Apple、プレスイベントへの招待状を発送―いよいよ9月9日に新iPhoneのお披露目ということになった。イベント開始は日本時間では9月10日(水)の午前2時くらいからになる。

会場は昨年までのサンフランシスコのイェルバ・ブエナ・センターではなく、サンノゼのフリント・センターだ。フリント・センターは1984年にスティーブ・ジョブズがMacを発表したAppleにとって由緒ある会場で、イェルバ・ブエナの収容人が757人なのに対してフリント・センターは2405人と3倍近い。Appleは今回のイベントに例年以上に力を入れているようだ。

ビデオはフリント・センターでMacを発表する若きジョブズ。

現在、確実となっているのは、次世代iPhoneの4.7インチ版とiOS 8の公開だ。iPhoneの5.5インチ版とウェラブルデバイス、いわゆるiWatchが開発の最終段階にあることは確実だが、9日のイベントで発表されるかどうかについては説が分かれている。発表されたとしても年内の出荷はなさそうだという見方が強い。iPhone 6 4.7インチはイベント後、1週間から10日程度で出荷される見込み。

Androidのフラグシップ機がほぼすべて4.7インチ以上になったのに、Appleが長らく大型化を拒んでいたのはiPad、特にiPad mimiとの「共食い」を恐れていたからだろう。しかし、タブレットの売上は先進国市場で早くも横ばいへ、騒がれたわりには…という記事にもあるように、タブレット市場の拡大に急ブレーキがかかり、Appleとしても本丸のiPhoneのシェアを守るためには背に腹は代えられなくなったものとみられる。iWatchは心拍、血圧、歩数などのセンサーを備え、ヘルス、フィットネス機能を目玉にするらしい。

大型プロダクトのローンチといえば、Microsoftは、Microsoft、Windows 9プレビュー版を9月30日に公開のもようだ。

Google、Amazonともにドローンに本気だ

ジェフ・ベゾスが昨年12月のチャーリー・ローズ・ショーで配送用ドローンを開発していることを公表したときには「クリスマス商戦向けの話題作りだろう」と眉唾に見る声が多かった。しかしドローン配送のPrime AirにAmazonは本気だという記事によるとベゾスはNASAの宇宙飛行士やGooglen Earthのベースになった衛星画像サービスのスタートアップ、Keyholeのファウンダー、Avi Bar-Zeevなどトップクラスの人材多数をドローン・プロジェクトのためにスカウトしていた。これからすると単なる話題づくりではなさそうだ。

一方、GoogleもProject Wingというデリバリー・ドローンを開発していることが判明した。Google Xが開発中のドローンは4つのローターで機体を浮上、コントロールする点はクアドコプターだが、機体デザインはむしろオスプレイのようなティルトローター方式だ。ただしエンジンナセルを傾けるのではなく機体全体を傾ける。離着陸時は垂直だが、移動は飛行機のように水平飛行する。

デリバリー・ドローンの実用化に向けての大きなハードルが人間の歩く歩道などにドローンが離着陸する際の安全性の確保だ。Googleドローンはこの問題をユニークな方法で解決しようとしている。上のビデオで分かるように、配送先で離着陸しないのだ。ドローンは安全な高度にとどまって細いワイヤで荷物を吊り下ろす。ちなみにGoogle Xの責任者アストロ・テラー(エリック・テラー)は水爆の父、エドワード・テラーとノーベル賞を受けた経済学者、ジェラール・ドブルーの孫にあたる。

3Dプリンターで世の中の鍵の半数が開く?

3Dプリンターで銃を製作したとして大学職員が逮捕される事件があったが、実のところ3Dプリンターが銃の製作を特に容易にしているわけではない。ホームセンターで買えるドリルや旋盤の方がよほど効率的かつ強力な銃を作れる。しかし解錠工具となると少々話は違ってくる。脅威! ピンタンブラー錠を瞬時に解錠できるバンプキーが3Dプリンターで簡単に作れるという記事には、3Dプリンターで出力したバンプキーでピンタンブラー錠を瞬時に解錠するビデオがエンベッドされている。2005年以降日本で販売されているピンタンブラー錠の大部分はバンプキー解錠の対策済みということだが、現在使われている錠前の多くは未対策のはずだ。合鍵作成業者から鍵サイズのデータが流出すると誰でも3Dプリンターで簡単にピンタンブラー錠の解錠工具を出力できるようになってしまう。

タイムラプスとステディーカムでスマホカメラますます進化

スマートフォンのカメラに押されてカメラメーカーの作るコンパクト・デジタルカメラの市場が恐ろしいほどのスピードで縮小している。どうやらそのスピードはさらに加速することになりそうだ。先週、Facebook傘下のInstagramはモバイルで安定したタイムラプス動画が撮影できるアプリHyperlapseをリリースした。iOSデバイス内蔵のジャイロセンサーを利用して動画を強力に安定させる。Android版はしばらく後になりそうだ。

一方Googleは8月に入って自動で360°全天球パノラマを撮って共有できるカメラアプリPhoto SphereのiOS版をリリースした。カメラを顔の前で構えると画面に白いリングとオレンジ色の丸が表示される。ユーザーがカメラを動かして白いリングをオレンジの丸に重ねると自動的にシャッターが切られる。表示されるオレンジの丸をすべて撮影すれば全天パノラマの完成だ。水平パノラマが撮れるアプリは何種類か出ているが、こちらはGoogleストリートビューのような全天球写真が撮れる。またパノラマの自動合成能力も非常に高い。

Twitterはアナリティクス提供、Facebookはクリック稼ぎの取り締まりへ

既存の大手ソーシャルメディアも進化を続けている。これまでTwitterへの投稿のパフォーマンスを調べることができるのは広告主と認証ユーザーだけだったが、Twitterがアナリティクス・ダッシュボードを一般ユーザーに公開した。ツイートごとに何人が読んだか、何人がリンクいをクリックしたかなどユーザーのパフォーマンスが細大漏らさず分かる。ページは日本語化されている。またFacebookはクリック稼ぎの釣りネタ投稿の排除するために表示アルゴリズムを調整していくことを発表した。今後は「内容について有益な情報を与えずに人々に記事をクリックさせようとするような見出し」は表示に関してペナルティーを受けることになる。

ゲームはクラウド化する

8月26日にAmazonはゲームストリーミングの有力スタートアップ、Twitchを9億7000万ドルで買収した。5月にGoogleはTwitchを10億ドルで買収することが確実視されていたので、土壇場でAmazonがひっくり返すことに成功したことに業界では驚きの声が上がっている。

Amazonがゲームビジネスにどう取り組んでいくのか、まだ不明だが、ゲームがクラウド化していくことは決定的なようだ。ゲームのストリーミング化には多くのメリットがある。HDビデオがストリーミング再生できさえすればどんなデバイスでも使えるし、専用機がアップデートされるより、クラウドやモバイルデバイスの技術的な進歩の方が速い。またゲームがどんなに巨大化しようとダウンロードせずにプレイできる。近い将来、カジュアルゲームだけなく、コアなゲームもNetflixやhuluのようにストリーミングで楽しむことになりそうだ。

またMicrosoftがゲームを完全にクラウド化しても遅延が生じないネットワーキング技術“DeLorean”を発表したことも注目される。DeLoreanは推論型実行エンジンで、プレーヤーが次の瞬間に取ることが可能なアクションを推測し、それらを事前にプレーヤーのデバイスのメモリに送信する。実際のアクションの直後にクラウドからでなくローカルメモリから、最適画像をレンダリングするという手法だという。このテクノロジーが普及すれば、カジュアルゲームだけでなくコアゲームもクラウド化が可能になる。任天堂やソニーなど日本のゲーム企業についても、クラウド化に対応できるかどうかが重大な影響を与えそうだ。

滑川海彦@Facebook Google+


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TechCrunch Japan

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