毎年、われわれの妹であるTechCrunch Japanが同誌主催のテクカンファレンスTechCrunch Tokyoを行って、投資家と起業家をお見合いさせ、また合衆国やヨーロッパで成功しているスタートアップを紹介している。今年日本のステージに立ってお話したのは、PebbleのCEO Eric MigicovskyやProduct HuntのファウンダRyan Hoover、など、など、などなどだ。
TechCrunch Tokyoは新進スタートアップたちのピッチ合戦Startup Battlefieldも本家並に行った。もちろん賞金が出る。
今年のコンペは、参加プロダクトがきわめて多様だった。教育あり、中小企業のバックエンドツールあり、フードデリバリあり、企業のロジスティクスのアウトソーシングあり、等々。ぼくにとって面白かったのは、彼らが挑戦している開発課題が、合衆国でローンチしたものと、かなり同じだったことだ。
たとえばフードデリバリのBentoは注文を受けてから10分以内に500円の弁当を届けるが、サンフランシスコのSprigやSpoonrocketもそれと同じだ。また、クラウドからバックエンド管理ツールを中小企業向けに提供するBizerは、同じく中小企業に人事管理のプラットホームを提供しているZenefitsと、やり方が似ている。
日本人ユーザの問題解決を提供するスタートアップが多かったが、中にはもっとグローバルな視野を持つのもいた。今回入選はしなかったが、世界中の誰でも使えるデベロッパ向けのプロダクトを作った連中もいた。
というわけで、総論はこれぐらいにして、TechCrunch Tokyoのステージでバトルを繰り広げたスタートアップたちを紹介しよう。
Mikan
Mikanは英語を勉強している人がボキャブラリをはやく増やせるアプリだ。バイリンガルの日本人は2020年に1億人になるそうだから、そういう人たちのためにMikanは単語帳のようなアプリから単語のグループを見せ、それらの定義を教える。単語はユーザが知ってる語とまだ知らない語に分けられ、後者に属する語をユーザが覚えるまで出す。この覚え方だと、これまでの単語暗記方式に比べて、覚えるのがはやい。ファウンダは、24時間で1000語を覚える、と言っている。
Closet
ファッションアプリは新しいファッションをユーザに紹介するものが多いが、Closetはユーザがすでに持っている衣類の、斬新な組み合わせや着こなしを教える。ユーザはこのアプリに自分のワードローブの中身を教えるために、ひとつひとつ写真を撮ってアップロードする。
Akerun
スマートロックは合衆国でもいろいろ出回っているが、Akerunは日本市場だけをねらっている。売り方は、消費者に直接売る、レンタル店やホテルや、スマートロックを必要とする企業にも売る、というやり方だ。この種のイベントではよくあることだが、Akerunはステージでのデモで失敗したので、実際に使われるところは見られなかったが、でも、少なくとも、デザインはクールだ!
Wovn
Wovnは、Webサイトのオーディエンスを世界に広げる。ユーザが自分のサイトのコードに1行書き加えるだけで、各国のオーディエンスはそのサイトのページの言語をローカライズできる。日本語が読める人は世界の人口の5%しかいない、というから、メインのWebサイトを日本語で作っている人にはとくに朗報だ。ユーザはまた、Wovnを利用して最初から他言語にローカライズされたサイトを作れる。その場合、機械翻訳なら無料、プロの翻訳者にやってもらうと有料だ。
Match
Matchはモバイルのクイズアプリで、ゲームみたいな教育ツールだ。QuizUpと同じく、対戦式でさまざまな話題のクイズに答えていく。こういう、教育のゲーム化により、児童生徒は楽しみながら知識を習得する、と期待される。そう、楽しくない勉強は、身につかないもんね。
Bizer
日本には約300万の中小企業があり、Bizerは彼らの日常事務を助ける。毎月2980円の会費を払うと、Bizerは主に新規雇用関連のペーパーワークをやってくれる。それによって、雇用関連の費用を低減する。
FiNC
FiNCに毎月会費を払うと、ユーザ各人の健康状態やフィットネスの状態などを評価して食生活の指導やジムのプログラムなどを提供してくれる。つまり、健康改善のための個人化されたプログラムをもらえるのだ。
Spacemarket
Spacemarketは会議スペースのためのAirbnbを目指している。つまり専門業者からではなくピアツーピアで、空きスペースや空き時間を提供/賃借するのだ。ユーザが今後の会議予定を登録しておくと、それらに対するスペース提供者からの情報が寄せられ、ふだんは使えないような場所でも利用できたりする。合衆国ではPeerSpaceがこれと同じサービスをやっているが、Spacemarketはもっぱら日本だけが対象だ。
Bento
そう、日本にもフードデリバリサービスはある。モバイルアプリBentoは、500円(5ドル弱)という超お安い弁当を超早くお届けする。今後は同社は、コーヒーなどにも手を広げたい意向だ。さらに将来的には、企業のロジスティクス全般に対応し、食べ物に限らず何でもお届けするサービスに変身することを考えている。
yTuber.tv
このスタートアップはYouTubeの人気に便乗して、ビデオの視聴をソーシャル化することをねらっている。yTuber.tvでは複数の人びとが“ビデオ視聴パーティー”を催して、オンラインのビデオ体験をもっと楽しく、もはや孤独でさみしい行為ではないものに変える。パーティーを盛り上げるためのビデオの選択、みんなで長時間楽しめるような長編を見つける、などはサービス側がやってくれる。
OpenLogi
eコマースサイトやサイト中で物販/通販をやってるところがOpenLogiと契約すると、顧客の注文に応じた最適最安の配送方法を選んで決めてくれる。OpenLogiはそのために、複数の運送企業との関係を構築している。同社は受注のフルフィルメントを単純化するだけでなく、配送用ラベルの印刷もする。これらのフルフィルメントの過程は、Amazonでやるとマウスクリックを10回以上しなければならない。OpenLogiのプラットホームを利用すると、2〜3の情報を入力し、ほんの数クリックで終る。
そして優勝は…
AgIC
今はハードウェア方面の起業家が増えているから、デバイスを制御するためのチップセットを自作したいというニーズも増大している。でもカスタムASICの開発は、たいへん面倒で時間のかかる作業だ。
ところが、今回の優勝者AgICを使うと、チップのプロトタイプを紙の上に伝導性インクで印刷できる。プリンタは、ふつうのインクジェットプリンタでよろしい。伝導性インクのカートリッジは2万円ぐらいするが、一回のプリントアウトの費用は約200円だ。
そこらのプリンタでASICのプロトタイプを作れるこの安上がりな方法は、低開発国も含め、世界中どこでも使える。そして、ハードウェア方面の起業家の数を、一挙に増やすだろう。おもしろいものが、続々登場することが、期待される。
そこでDisrupt Tokyo Battlefieldの審査員たちは、グローバルなリーチとインパクトが最大である、という理由からAgICを優勝とした。上の写真では、賞金100万円をもらった方だけでなく、あげた方も満足して喜んでいるのだ。〔訳注: 同社サイトより…「AgICはAg Inkjet Circuit の略であり、…」。Agは銀の元素記号、伝導性インクの原料は主に銀。〕
〔ここにスライドが表示されない場合は、原文を見てください。〕
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))