代替肉をおいしくする非動物性脂肪をNourish Ingredientsが開発

植物ベースの代替肉は、Beyond Meatのような新興企業が突然登場して以来、10年以上にわたって投資家から莫大な資金、そして消費者の注目を集めてきた。

これら新興企業は何十億ドル(何千億円)もの資金を調達し、不快な環境ダメージを与えることなく肉のような味の肉を世界中のスーパーマーケットの棚やレストランに持ってこようとしていて、今や少なくとも2000億ドル(約21兆8590億円)規模の産業となっている。

植物ベース食品への切り替えは、温室効果ガスを抑制するのにおそらく個人レベルで最も貢献できるものだろう(電気自動車の購入や屋根へのソーラーパネル設置をせずに)。

業界に付きまとっている問題は、スタートアップがこれまでよりも良いタンパク質や、Impossible FoodsのHemeのような新しい添加剤を作ることでどれだけ進歩を遂げても、代替肉の味と実際の肉の味の間にまだかなり大きな隔たりがあることだ。今日では、代替肉の企業は脂肪としてパーム油やココナッツ油に頼っている。

Nourish Ingredients(ノーリッシュ・イングリーディエンツ)を紹介しよう。同社はタンパク質ではなく、肉をおいしくする脂肪にフォーカスしている。脂肪なしに、本当に美味しいベーコンはありえない。同じく、脂肪なしに見事な霜降りステーキの代替もありえない。

オーストラリア拠点のThe Canberraは、香港の富豪Li Ka-shing(レイ・カーセン)氏が出資しているHorizons Ventures、オーストラリアの国立科学機関が設立した投資会社のMain Sequence Ventures、Commonwealth Scientific、そしてIndustrial Research Organisationから1100万ドル(約12億円)を調達した。

The CanberraはNourish Ingredientsの2人の共同創業者、James Petrie (ジェームズ・ペトリー)氏とBen Leita(ベン・レイタ)氏がサイエンティストとして働いていた2013年に出会った場所だ。作物開発が専門のペトリー氏はオメガ3キャノーラ油の開発の先頭に立っていた。一方のレイタ氏は化学とバイオプラスチックのキャリアを持っていた。

2人は以前、植物でオイル生産を増やそうと試みていた企業で働いていた。CSROが2017年ごろ特に興味を持っていた分野だ。代替肉のマーケットが立ち上がろうとしていたとき、2人の起業家は動物性脂肪の命題に取り組むことに注意を向けた。

「人々に話をしているときに、こうした代替食品分野は植物のような動物性脂肪を必要とするだろう、ということに気づきました」とレイタ氏は話した。「魚油のための、そしてキャノーラ油からのスキルセットを使うことができるかもしれません」。

Nourishの発明は、植物からバクテリアへの移行だった。「反復速度が速く、誤魔化しているかのような感覚です」とペトリー氏は述べた。「商品のコストをかなり下げることができます」。

Nourish Ingredientsは、トリグリセリドや脂質を大量に作るバクテリアや微生物を使っている。「ヤロウイアも含まれます。テーラードの油の生産に使われているものもあります。当社はこれらの油脂性生物を調整して、素晴らしい味と経験を与えてくれる動物性脂肪を作ることができます」とペトリー氏は説明した。

両氏が指摘したように、味のために脂肪は本当に重要だ。異なる肉を異なるものにするという点で主な差別化要因だと両氏は話した。

「牛は牛脂を作ります。それが牛です。しかしそれが必ずしも植物性タンパク質にとってベストな脂肪ということではありせん」とペトリー氏は述べた。「我々は模倣から始めます。元の生物に取り組まない理由はありません。我々は新しいエクスペリエンスを作ろうとしています。手に入れる新たなエクスペリエンスがあります」。

Nourish Ingredientsは、植物と組み替えタンパク質の生産分野ですでに顧客を数社持っている。現在従業員18人の同社は遺伝子組み換えと、非CRISPR(ゲノム編集)で作られた最適化された脂肪の両方を生産している。

他のスタートアップや既存事業者も新しいマーケットへの参入を可能にするかもしれないテクノロジーを持っている。たとえば現在コラーゲンに注力しているGeltor、さまざまなバイオベースの油や化学薬品をつくっているSolazymeなどがある。

「代替プロテイン分野における活発な投資家と同様、我々は従来の肉、鶏肉、魚肉製品の味を再現する非動物性脂肪は産業における次の突破口だと理解しています」とMain Sequence VenturesのパートナーであるPhil Morle(フィル・モール)氏は話した。「Nourishはどうやって持続可能で驚くほど美味しくできるか、その方法を発見しました。アーリーステージでNourishに加わることができてこの上なく幸せです」。

カテゴリー:フードテック
タグ:Nourish Ingredients代替肉

画像クレジット:Enrico Spanu/REDA&CO/Universal Images Group via Getty Images / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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