仮想通貨の時価総額合計が最近1000億ドルを突破した。しかも、価格が急上昇したのはここ数か月のことで、4月1日時点の時価総額合計が250億ドルだったことを考えると、たった60日間で仮想通貨の価値が300%も上がったことになる。
その一部はビットコイン(上記期間の値上げ幅が160%)によるものだが、Ethereum(439%の値上げ幅)をはじめとする他の仮想通貨も時価総額の上昇に貢献している。
多様化が進む仮想通貨市場の様子を確認するには、ビットコインの”支配度”を見るのが1番だ。つまり、全仮想通貨の時価総額合計に占めるビットコインの割合をチェックすれば良いということだ。しばらくの間、ビットコインの支配率は80%を超えていたが、この2、3ヶ月でEthereumやRippleといった新興通貨が台頭しはじめたこともあり、その割合は50%以下まで下がってきた。
これはバブルなのか?
経験豊富なプロの投資家であれ、別の仕事を持つパートタイムの投資家であれ、数か月のうちに400%も時価総額が上昇した資産を見れば、ものすごいバブルだと考えるのが普通だろう。歴史を振り返ってもそれは明らかで、これだけ急激に価格が上昇していれば、ほぼ確実にそのうち値崩れする。結局のところ市場はそこまで合理的ではないのだ。
そのため、何らかの補正が今後起きても驚かないでほしい。実は数週間前に、既に価格補正は起きており、ビットコインの価格は最高値の2700ドルから約2000ドルまで下がった。しかし、その後値段を戻し、本日(米国時間6/7)の時点では史上最高額の2850ドル前後で取引されている。
とは言っても、1年というスパンで仮想通貨市場を見てみると、ここ数か月の異常とも言える価格上昇は、バブルというより仮想通貨全体の復活なのではないかと気づく。
ビットコイン以外の通貨が全体の価格上昇に貢献していたというのも、これがバブルではなく仮想通貨一般への興味が再燃したことを意味している良いサインだ。さらに、Ethereumがその先頭を走っているというのにも納得がいく。技術的な面ではビットコインをも凌駕するこの通貨では、ブロックチェーン内に直接スマートコントラクトを埋め込めるようになっているため、全く新しいトークンを発行したりICO(イニシャル・コイン・オファリング)を開催したりできる。
仮想通貨ほど大きな可能性を持っていながら成長過程にあるテクノロジーに、一般の人々が直接投資できる機会はこれまで全くなかった。
同様に、銀行間の決済を主なユースケースとするRippleは、既に世界中の100社以上の金融機関で採用されている。たとえ実装までに時間がかかったとしても(金融機関で働いたことがある人であればよくわかるはずだ)、この具体的なニュースに心躍らせる人がいるのもよくわかる。
その一方で、上記のような仮想通貨の進化をもってしても、60日間で400%という価格上昇を説明することはできない。EthereumもRippleもリリースからしばらく経っており、これらの通貨を公開企業として考えると、株価が劇的に上昇する理由が(ほぼ)ないのだ。しかし、仮想通貨自体が新しい概念であり、EthereumやRippleなどはもちろんのこと、ほとんどの人がビットコインが何であるかさえもよくわかっていないというのもまた事実だ。
仮想通貨ほど大きな可能性を持っていながら成長過程にあるテクノロジーに、一般の人々が直接投資できる機会はこれまで全くなかった。
例えば1990年代であれば、インターネットが今後発展していくと予想していた人もいたかもしれないが、彼らは直接インターネットに投資することなどできなかった。また、保管・送受信されるデータを暗号化するというのも比較的新しい考え方だ。つまり、暗号技術によって守られた上記のようなブロックチェーンを支える仮想通貨を誰でも直接購入できるということは、黎明期のインターネットに投資するチャンスを掴んだようなものなのだ。
値付けの難しさ
もしも本当であれば、主要仮想通貨の急騰を説明できるような考え方がある。それは、もしかしたらこれらの仮想通貨には本当に時価総額分の価値があり、今後さらに何倍にも価格が上昇していくのではないかというものだ。
しかし、この考え方の問題は、仮想通貨の価値を割り出す方法がないということだ。企業と違い、仮想通貨には売上やコスト、一株当たり当期純利益といった価格の根拠となるものがない。Appleを例に考えてみると、彼らの会計報告をもとに簿価(会社を清算したときの価値)を算出することができる。そして、Appleの業績が今後も上がっていき、簿価も上昇すると考えている人がいるので、もちろん株価にはプレミアムが含まれる。
このような考え方は仮想通貨には当てはまらない。できることと言えば、通貨流通高や金の供給量との比較からその価値を推測するくらいだ。もしあなたが、仮想通貨を価値の貯蔵手段として考えているのであれば、世界中にある金の時価総額8兆ドル強というのが目安になるだろう。つまり、もしも将来的にビットコインが金に取って代わるとすれば、現在の時価総額はまだかなり低いと言える。
仮想通貨を本当の通貨のように考えている人であれば、M2と比較してみるといい。M2とはアメリカの通貨流通高のことで、ここには現金や当座預金のほか、貯蓄口座、投資信託、短期金融資産など”現金に近い”資産も含まれている。M2の総額は約13.5兆ドルにのぼり、この場合も上記と状況は同じだ。
仮想通貨のことをよく理解した”投資家”であれ
私は、仮想通貨の価値が上昇してくのを見て楽して儲けようと考えている読者(そして友人)に対し、仮想通貨の購入を控えるよう伝えてきた。過去数か月の価格急騰により、仮想通貨に興味を持つ人の数は一気に増え、CNBCやCNNといった主要メディアもビットコインをはじめとする通貨に”投資”する方法について説明するほどだ。
しかし、私は正しい理由で仮想通貨を購入してほしいのだ。仮想通貨自体について学ぶためや、仮想通貨を決済手段と見ている場合は全く問題ない。さらに、このテクノロジーが下記のような変化をもたらし、世界を変えていくと考えている人にも仮想通貨の購入は適しているだろう。
- 価値の貯蔵手段として金を代替するような存在になる
- 銀行間決済を変える
- 海外送金にかかる費用を下げる
- 資金調達やIPOのプロセスに革命を起こす
上記の変化は全体の一部に過ぎず、仮想通貨の動向を追っている人であれば無限大の可能性に気づいているだろう。そのため、何もしなくても価値が上がっていき、”投資”に対する十分なリターンが得られそうという理由ではなく、長期的な展開(もちろん表面上は金銭的なメリットを享受できる可能性もある)が望めるからこそ仮想通貨を購入するようになってほしいのだ。
注:筆者はビットコインやEthereum、さらに小規模な仮想通貨を複数保有している。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)