人工知能を活用した位置情報分析プラットフォーム「SilentLog Analytics/SDK」を展開するレイ・フロンティアは2月14日、三井物産を引受先とする第三者割当増資により3億円を調達したことを明らかにした。
今回調達した資金を活用して組織体制を強化するとともに、国内外の企業に対し行動データの収集・分析サービスの提供を進める。三井物産とは注力分野のひとつとなるモビリティ領域において連携し、新サービスの開発などにも取り組む計画だ。
レイ・フロンティアは2008年の設立。2015年にICJとアドウェイズから数千万円規模とみられる資金を調達しているほか、2016年にもみずほキャピタル、イード、環境エネルギー投資、いわぎん事業創造キャピタルなどを引受先とした第三者割当増資を実施している。
収集から分析・活用まで、企業の位置情報活用をトータルで支援
アプリケーションやIoTデバイスなどから収集された“ユーザーの行動データ”を活用して、個々に最適化なサービスを提供しようという動きが年々加速している。レイ・フロンティアはその中でもユーザーを知る上で重要な要素となる“位置情報”にフォーカスした事業を展開するスタートアップだ。
位置情報を収集するための「Silentlog SDK」と収集したデータを分析する「SilentLog Analytics」を軸に、企業の位置情報の活用をトータルでサポートする。
もともとレイ・フロンティアはARアプリの開発からスタート。そこから位置情報に特化する形にシフトし、受託開発事業などを手がけていた。2015年に紹介した「SilentLog」は受託開発で培ったナレッジも活用して作った個人向けのライフログ管理アプリだ。
現在も約4万人のユーザーがいるという同サービスに蓄積された情報から、人の行動パターンを分析する独自のアルゴリズムを開発。そのアルゴリズムを始めとした知見は企業向けのSilentlog SDKやSilentLog Analyticsのベースにもなっている。
企業はSilentLog SDKをスマホアプリに組み込むことで、高密度な位置情報を取得することが可能。スマホに搭載されているセンサーデータを用いた独自技術によって、バッテリーの消費を一日平均3%にまで抑えながら数秒単位での位置情報を取得できる点が特徴だ。
このSDKを通じて収集した行動データやその他のデバイスから収集された情報をリアルタイムに匿名で分析するのがSilentLog Analyticsの役割。導入企業は機械学習処理が行われた位置情報分析データを基に、ユーザーの嗜好や行動特性などを踏まえた細かいペルソナを作成したり、個々に最適化した情報の配信したりといったことができるようになる。
同社の特徴はSilentLogを通じて自分たちで生のデータを集め、独自のアルゴリズムを作れること。そこに開発会社としていろいろな位置情報サービスの裏側を作ってきた経験を合わせることで「リサーチに近い段階からサービスの企画、アプリケーションの設計まで一気通貫で支援できる」(レイ・フロンティア代表取締役社長CEOの田村建士氏)という。
一例をあげるとイードと共同開発する燃費管理サービス「e燃費Ver.4.0」や宇都宮市の「うつのみや健康ポイント」を始め、災害時における人流分析や運転挙動システム、情報信託プラットフォームなど幅広いジャンルでなどでSilentLog Analytics が活用されている。
モビリティ分野では新サービス展開も計画
田村氏によると特に引き合いが多いのはモビリティ、ヘルスケア、都市開発といった領域。今回の調達先である三井物産はもともとモビリティ分野でレイ・フロンティアの事業展開をサポートしていたそうで、そこでの反応が良かったために出資へと繋がったそうだ。
近頃は「MaaS」という言葉を目にする機会が増えてきたけれど、レイフロンティアでは三井物産のモビリティ第一本部とタッグを組みながら、今後モビリティ関連の事業を手がける企業の位置情報活用を積極的にサポートしていく。
利用者の行動特性に応じた各種モビリティサービスの提供、行動変容を通じた混雑緩和や新たな移動・行動の創出、複数交通手段のシームレスな連携など、新サービスの開発も視野に入れながら各種サービスの展開を推進。国内に留まらず、海外企業へのアプローチも強めていく計画だ。
「ただの分析屋で終わるつもりはなく、リサーチから実際に作り込む部分までをしっかりサポートしていく。立ち位置としてはミドルウェアに近く、企業の位置情報活用に欠かせない重要な“モジュール”としての役割を担いたい」(田村氏)