日本初の住宅ローン借り換えアプリとして6月に紹介した「モゲチェック」を提供するFintechスタートアップのMFSが、マネックスベンチャーズ、電通デジタル・ホールディングス、電通国際情報サービス(ISID)の3社から総額で約9000万円の資金を調達したとTechCrunch Japanに明らかにした。Fintechの、それもかなり特化型のアプリだから当然とも言えるかもしれないけど、いわゆる純粋なVCからの調達ではなく、事業会社とそのVCからの資金調達である点が興味深い。資金調達の発表と同時にMFSは、取締役COOとして元ボストン・コンサルティング・グループの塩澤崇氏を迎え入れたと発表している。塩澤氏はモルガン・スタンレー証券で住宅ローン証券化ビジネスに参画した後にボストン・コンサルティングへ移籍した経歴がある。
モゲチェックは返済中の住宅ローンを、条件の有利な他行のものへと変えることで数百万円程度、ローン支払い総額を減額できる消費者向けアプリ。借り入れの年月、当初借入額、金利タイプなど7項目を入力するだけで、全国120行1000本以上の住宅ローンをランキングして、どこの銀行に借り換えるといくら安くなるかが一目で分かる。
Androidベータ版を6月にリリースして以来1カ月半ほどの間に実際にモゲチェックを利用したユーザーのうち変動金利ローンのユーザー638人を対象に分析したところ、100万円以上の借り換えメリットがあるのは318件と約半数にのぼることが分かったという。
国土交通省のデータによれば、支払いを残す住宅ローンは現在市場で1200万件ある。このことからMFSでは600万件ほどの「借り換えメリットあり」のターゲットユーザーがいて、単純計算で600万件x100万円=6兆円の市場があるとそろばんを弾く。
8月4日にはiOS版のリリースと同時に正式版をローンチ。現在ダウンロード数は約4000件となっているという。ベータ版では住宅ローンの比較のみだったが、実際の借り換えのための銀行の申し込みにも対応し、現在、楽天銀行、ソニー銀行、住信SBIネット銀行、イオン銀行の4行と提携していて、モゲチェック利用者はランキングから、いちばん有利な銀行を選ぶことができる。
ちなみにモゲチェックの提携行にネット銀行が多いのは当たり前で、店頭に来店するタイプのメガバンク系は、モゲチェックで上位に出てくることは少なく、ケータイのMNPで言えば転出超過になることが見込まれるグループに属するからだ。MFS代表の中山田氏によれば、提携を模索してメガバンクにも話を持ち込んでいるものの反応はにぶめ、なのだとか。
ところでリアルなターゲットユーザーとなりそうな読者は気付いたかと思うけど、実際の借り換えは実に面倒だ。モゲチェックだけで借り換えが完結することはなく、実際には銀行のサイトや店舗へ行って自分で申し込むことになる。このときネット銀行だと入力項目は100項目くらいあるので、電車の中で気軽に入れるというわけにはいかない。住民票だ、源泉徴収票だ、と必要書類を揃えるのも手間だ。ネット銀行の場合、書類不備で送返された申込書が、そのまま再度申し込まれることなく放置されるという「離脱」も結構あるのではないか、とMFSでは考えているそうで、この辺の手間や面倒さを総合的に軽減できる方策もMFSで検討しているそうだ。
現在は歴史的な超低金利で借り換えメリットが大きい人が多いだろう。一方で、いまいまの状況としては物価や金利上昇の気配も見えてきている。家計に占める出費の比率として住宅ローンは大きいので、早めにモゲチェックでチェックしてみてはどうだろうか。
(情報開示:TechCrunch Japan西村とMFS代表の中山田氏は子を介した数年来の友人)