健康保険事業者同士のAPI連携を実現するNoyoが13億円超を調達、時代遅れだが収益性の高い巨大ヘルスケア市場へ挑む

米国時間9月28日朝、健康保険業界のプレイヤーをつなぐAPIを提供するスタートアップのNoyoは、1250万ドル(約13億2000万円)のシリーズAラウンドの資金調達を完了したことを発表した。今回の資金調達は、プレシードとシードの資金で約400万ドル(約4億2200万円)を調達後、同社の製品が市場に出回ってから1年も経たないうちに実施された。

当時、Noyoがヘルスケアの世界の一部に注力していることは明らかだった。それから1年近く経った今、新たな資金調達をめぐる会話の中で、同社は今のところそのその焦点を維持していることをTechCrunchに話した。つまり、ほかの保険業界のキャリアやプラットフォームとの連携はもう少し待たなければならないだろう。

Noyoは巨大な市場、すなわち米国の健康保険の世界で活動しており、この世界は今後何年にもわたって成長していく余地を与えてくれる可能性がある。健康保険の加入者は同社が提供するAPIを利用することで「各保険会社への会員取引の履歴の参照や追跡、確認ができる。

Noyoの製品は、共同創業者であるShannon Goggin(シャノン・ゴッギン)氏とDennis Lee(デニス・リー)氏が、規制当局や顧客と同様に問題を抱えていたHRテックのユニコーンであるZenefitsで働いていたときに直面した問題から生まれた。この話の詳細については、当社の事前レポートを読むとよくわかるだろう。特筆すべきは「サービスとしてのコンプライアンス」を提供するAgentSyncもZenefitsの卒業生によって設立された、もう1つのAPIスタートアップ企業であることだ。同社は、保険会社や保険代理店が保険ブローカーのライセンスデータを追跡するサービスを提供している。

米国のヘルスケア市場は巨大で収益性が高いが、非効率性と時代遅れの技術を抱えている。ヘルスケア市場の保険部分も同様に巨大で壊れており、既存の企業のスピードアップとコスト削減を支援できるテクノロジーを擁するスタートアップには非常に大きなチャンスだ。

さて、Noyoの新規資金調達イベントは、Costanoa VenturesとSpark Capitalが主導した。先行投資家であるCore Innovation Capital、Garuda Ventures、Webb Investment Network、Precursor Ventures、Homebrewは今回の新規ラウンドで投資額を増やした。

HomebrewのSatya Patel(サトヤ・パテル)氏は「Noyoの技術と戦略的なビジョンは、業界の主要なリーダーたちが門戸を叩いてすぐに参加すべきことを確信させた」と語る。これは同社が保険会社のAmeritasやHumanaと新たなパートナーシップを結んだことを含む、同社の発言と一致している。パテル氏はまた「Noyoは保険会社と成長を続ける保険技術のエコシステムを結びつけるのに貢献している」とも話した。

新しい資金を調達する前に現金口座をゼロ近くにしていないスタートアップに聞くべき良い質問は「なぜいま資金を調達したのか」ということだ。私はNoyoの場合、何がきかっけで資金を調達したのかが気になった。

ゴッギン氏によると、Noyoは「初期の顧客やパートナーから本当に良い反応とフィードバックを得ていた」とのこと。「何をすべきか、どうすれば将来のビジョンを実現するために事業を加速できるについて非常に明確でした。そこで、よし、落ち着こう、これはうまくいっている。いまが大きく動く時期だ」と感じたそうだ。こうしてシリーズAの調達が進められた。

Noyoは雇用を続ける計画も持っている。現在スタッフは約20人だが、2021年のキックオフ時には約30人になるとのこと。ゴッギン氏は新たな資金調達について「素晴らしいこと」として、スタートアップが「新製品を展開したい」と思ったときに資金調達は「人手不足の制約」を受けないことを付け加えた。これによりNoyoの開発ペースは加速していくだろう。

「開発が加速すれば、より多くの収益を生み出すことができるはずです」とゴッギン氏。「Noyoは収益性を目指しているのではなく、同時に『現実的なビジネスモデル』なのです。シリーズAの段階で成長指標について創業者に圧力をかけるには一般的には少し早いです。しかし、幸いなことにNoyoがシリーズBを調達するころには、有用な前年比較のための十分な収益履歴を持っているはずで、私たちはそれを要求するでしょう」とのこと。

今回のNoyoラウンドは、APIを利用したスタートアップが市場の牽引力を得ていること、そして投資家が注目していることを示すもう1つのポイントだ。今後数週間のうちに、さらにいくつかの関連企業から情報が得られるだろう。

画像クレジット:TechCrunch/Bryce Durbin

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。