元ソニー・VAIO企画担当が開発した画像共有デバイス「Hale Orb」が40時間でIndiegogoの目標額を達成

離れて暮らす家族に写真や動画を共有する、という時に、どのような方法を思いつくだろう。PCやスマホ、タブレットを使い、メールやSNSを経由してやり取りする、というのが、現時点での主なやり方だろうか。ただし、シニア世代にとっては、スマホやPCを使うこと自体が難しく感じられる、という人も多い。このため紙にプリントした写真を郵送したり、動画ならDVDやBlu-rayディスクに焼いて送ったり、といった方法もまだまだ現役だ。そんな中、シニアでも操作が分かりやすく、テレビで家族から共有された写真や動画を見ることができる「まごチャンネル」のようなIoTデバイスも出てきている

今回、アメリカのクラウドファンディングサイト「Indiegogo」で、40時間で2万ドルの目標額を達成した「Hale Orb(ハレ・オーブ)」も、家族からメールやSNSで送られた写真やビデオをテレビ画面で簡単に表示できる、IoTデバイスだ。

Hale Orbは目標額を達成したことを受け、日本への配送予約も受け付けることになった。6月30日までプレオーダー受付を予定しており、プレオーダー価格はプラスチック製のLatteが139ドル、木製のDark Woodが199ドル(いずれも送料別)となっている。プロダクトは2017年12月、北米から出荷開始を予定している。

美しいコントローラーでテレビ上の画像を操れる「Hale Orb」

Hale Orbは、リモコンとなる「Orb」、テレビに接続するHDMIスティック、そしてアカウント管理やメディアを保存するクラウドサービスから構成される。HDMIスティックをテレビに差し込み、Wi-Fi接続を設定すれば、アップロードされた写真や動画をテレビで見ることができるようになる。

Hale Orbでは、家族がそれぞれのSNSに写真を投稿したり、メールに写真を添付することで、家族専用のプライベートアルバムをクラウド上に作成できる。アルバムの共有に特別なアプリは不要で、Google、Dropbox、Facebook、Instagram、LINEなどに保存した写真や動画を同期することが可能だ。今後、写真とビデオのアップロードをより簡単にするスマホアプリの提供も予定されているそうだ。

閲覧する側は、家族から投稿された写真や動画を見るだけであれば、メールやSNSのアカウントは不要。スマホやPCを使わずに、テレビに家族の写真やビデオを表示することができる。つまり、PCやスマホが苦手なシニア世代でも、家族からプレゼントされたHale Orbを使って、共有された画像を見ることが可能だ。

球体の独特の形をしたOrbは、新しい画像が共有されたことを光の点滅で通知し、テレビ画面上に並んだ画像を選択したり、表示したりするためのリモコンだ。最初の動画を見てもらえば分かると思うが、わずかに傾きのある球の上部を推すとスイッチが入り、回すとテレビ上で画像をスライドさせて選択できる。Orbにはプラスチック製の「Latte」と高級感のある木製の「Dark Wood」の2種類が用意されている。いずれも触った感じが気持ちよさそうで、デバイスというよりはリビングに置いておけるインテリアという雰囲気のデザインだ。

スマホの画面に縛られない新しい体験を作りたかった

Hale Orbを提供するのは、サンフランシスコを拠点とするDouZen。ソニーで「VAIO」や「CLIE」の商品企画を担当した後、「Misfit Shine」などのシリコンバレーのプロジェクトにも関わった日本人、三浦謙太郎氏が創業した企業だ。三浦氏は学生時代も含め、20年以上ベイエリアにいて土地勘があり、共同創業者で技術担当のJulian Orbanes氏(MITメディア・ラボでUIを研究していた)も米国在住だったことから、米国での創業を決めたという。

DouZenには、三浦氏、Orbanes氏のほか、電気設計技術者や車・医療関連機器の試作・製造のスペシャリスト、サーバーエンジニア、プロダクトデザイナー、UXデザイナー、組み込みソフトウェアエンジニアなどが集結。日米在住の日本人、アメリカ人が参加しているそうだ。

Hale Orb開発のきっかけについて尋ねると、三浦氏は「2014年の中頃から『スマホの画面に縛られない新しい体験』をデモ的に作ろうと考え始めていた。ちょうどその頃、TVにDouZenで開発した高速UIを表示できるコンピュータスティックの価格がこなれてきたこともあり、さまざまなコンテンツの可能性を考えたが、ファミリー向けのものがいいと感じた」と答えてくれた。

「自分自身、5人の家族が日米で常に遠く離れており、メール添付で写真や動画をたまに送っているだけではどうも物足りなさを感じていた。あまり楽しくないし(やり取りの)頻度も低い。しかしそれが唯一『みんなが使える』共通のやり方だったのでしょうがなかったのです。(共同創業者の)Julianに話すと、彼も似たような問題意識を自分の家族内での(写真)シェアについて感じていた。それなら製品にしない?というのが本格的なスタートです」(三浦氏)

Hale Orbの球状の独特の形は、どのように決まったのか。三浦氏は「もともと『ボワーっと光って通知する物体』というのと、『回転型のインターフェイスで、ものすごく簡単に高速にナビゲートできる』というのが漠然とあった」という。「加えて『家庭用なので温かみが欲しい』『あまりガジェットや工業製品感を出したくない』『とはいえ、あまりDIYのクラフト製品っぽくするとプロダクトとしての魅力がない』といったさまざまな議論の中で、『やはり球がシンプルで美しい』という思いが出てきた。すぐに知り合いのエンジニアの方にお願いをして、3Dプリントで試作品を作ったら、最初からその大きさが手のひらに収まって、ちょうど良かったのです。周りに触ってもらっても評判がよく、その後デザインの微調整はありましたが、外寸はほぼ当初のままです。我々はもともとはUI屋なので、当初から『回して横方向で気持ちよくスクロール』といったユーザーインターフェイス上のコンセプトがありました。それと円・もしくは球がマッチしたということですね」(三浦氏)

素材については「いろいろな物を検討したのですが、あまり最初からいろいろはできないので、当初のコンセプトどおり、まずは木材と樹脂の両方で行くという結論に至りました。今後はもっと増やしたいとは思っています」と三浦氏は答えている。

Hale Orbの機能についても聞いてみた。Google HomeやAmazon Echoなど、スマートホームのハブとして多機能のデバイスが登場している中で、「写真・動画の共有」に機能を絞った理由は何か。三浦氏は「まず、Orbを『汎用のマウス』的な立ち位置にしてしまうのは避けたかった」と説明する。

「メディアの音量をコントロールしたり、室温管理をしたり、フォトショップのブラシのサイズを変えたり、“なんでもIoTコントローラー”にすることで(汎用化すれば)、あくまでもサブのインターフェイスになる。また、一つ一つの操作が『浅い』体験になり、ユーザーに刺さらないのではと考えた。そこで、あえて専用の体験を深掘りするために、ゼロから作ることにこだわりました」(三浦氏)

三浦氏はHale Orbのユーザーエクスペリエンスについて、「コアにあるのは『大量のビジュアルコンテンツを、大画面で心地よくナビゲートしたり検索する体験』。当初は『狭く深い専用体験』を極めつつ、その後市場の要望に応じて進化させていきたいと思う」と述べている。

ちなみに、Google HomeやAmazon Echoに関しては、今後のHale Orbのアップデートで連携する予定もあるという。ホームコンピューティングのコントローラーとしての機能拡大も検討されているのだろうか。三浦氏によれば、「機能拡大は考えている。我々の考えではボイスコントロールは今後普通になるが、“ボイスだけ”ではある種のコンテンツに関しては限界があると考える。とっつきやすさという意味でもボイスコントロールはある層には問題があると思うので、『フィジカルなOrbのUI+ボイス』でいくのが良いだろうと考えている」とのこと。

「“Hale Orb単体での(独自の)ボイス体験”を加えることが本命ではあるが、ボイスアシスタントも今後増えていく中で『Alexa、Hale Orbで最新の写真のスライドショーを始めて』というような連携は比較的簡単なため、すぐにやりたいとは思っている」(三浦氏)

通常価格については今のところ、199ドルから399ドルが予定されている。リテラシーの低いシニアを含むファミリー層をユーザーとして見た場合、共有画像がテレビで見られるという機能だけの価格としては、少々お高いのではないか、と感じられる。

この点について、三浦氏に尋ねると「周辺機器として見てしまうとその通りだが、『楽しく簡単に、家族が全員飽きずに常に参加できる体験』という部分をいかに伝えられるかだと考えている。特に米国では100ドル以下を目指したいところだが、今は価格の最適化よりも、体験の最適化を重視している。今後、台数が出せればもっと価格も下げられる。また、月額制でサービスをプラスしていくなど、ビジネスモデルによってはハードの価格をもっと下げられるので、そうした可能性も検討している」ということだった。

投稿者:

TechCrunch Japan

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