入院患者の健康回復は「歩く」ことから。歩行支援機器を提供するMobilizer Inc.は順調に成長中

入院患者の多くの人にとって、退院時期をはやめ、また血栓や褥瘡性潰瘍などのリスクを低下させる最善策は、とにかく「歩きまわること」であったりもする。

しかし酸素吸入を受けていたり、静脈点滴などいろいろなものが繋がっている状態では、看護師に手伝って貰っても準備に20分ほどもかかることになる。病院全体でみると、毎週数百時間もの無駄が生じることになったりもする。

病院としてはすべての患者の面倒を見る必要があり、せっかく歩行活動準備が整っても、病室のドアまでいってすぐに引き返すことになってしまったりもする。

この問題を解決しようと考えているのがMobilizer Inc.だ。医療機器関連のスタートアップアクセラレーターであるZeroTo510の出身だ。このMobilizer Inc.は6輪の歩行トレーニング支援機器を開発した。ここには各種医療機器を搭載することができ、したがって迅速な準備を行って、これまでよりもはるかに簡単に歩きまわることができるようになる。

Mobilizerのスタートは5月で、Innova MemphisおよびMB Venture Partnersから30万ドルの資金を調達している。また、来年中には40万ドルの資金を追加調達予定でもあるとのこと。CEO兼共同ファウンダーのJames Bellによると、機材の価格は1台あたり5000ドル弱で、これまでにMass General HospitalおよびVanderbilt University Medical Centerが購入しているとのこと。

Bellの予測によるとMobilizerは、本年末にはネットキャッシュ・フローでプラスになる見込みらしい。これまでの販売台数は合計で100台程度になるそうだ。

Mobilizerなどの医療系スタートアップは、さまざまな付加価値を生み出すこともある。たとえば今回の場合は、経済的な効果もさることながら、病院という仕組みに関わるいろいろな人の負担を減らす一助となる可能性もある。Scanadu SCOUTTeddy the Guardianのような医療用携帯分析装置なども、医療分析を患者本人が行えるようにし、結果として不必要に医者にかかることを防ぐという効果も狙っている。

Mobilizerの場合、患者の血流面からの医療ケアを行うことで、患者の滞在時間を減らすことができ、そして余計な医療費支出を低く抑える効果がある。もちろん医療スタッフも、より効率的に仕事ができるようになる。

医療系テック企業はFDAの承認を得るのに苦労するケースも多いが、MobilizerはFDA 510(k)プロセス免除機器に分類されるもので、一定レベルの品質保証と登録申請を行っておくだけで市場に出すことができるものだ。

Bell曰く、Mobilizerをさまざまな診療科で用いることのできる「プラットフォーム」として育てていきたいとのこと。つまり種々の診療機器を搭載できるようにしようと試みているところなのだそうだ。また病院内に拘らずとも、家庭用の診療機器としての活用も考えられるだろう。また、他の医療系テック企業とのパートナーシップについてもいろいろと考えているところなのだそうだ。

「他企業との関係も深めていこうとしているところです。たとえばMobilizerに搭載するのに適切なサイズであるポータブル酸素吸入器などを開発している企業などと組めば、関係者全員にとってメリットのあるプロダクトを提供できるようになるでしょう」とBellは言っている。

この分野にもやはり競合はある。しかし未だに病院における標準的プロダクトは存在しない。たとえば患者の移動に際して、ある医療センターでは装置を乗せるのにRadio Flyer(訳注リンク:www.radioflyer.com)を使っていたり、あるいはテープを使って酸素吸入器を患者の身体に巻きつけたりしているそうなのだ。もちろんこうした方法は非常に危険なものではある。

未だにそうした医療機関があるという事実だけでも、Mobilizerのようなソリューションが必要とされていることを意味するのだ。

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(翻訳:Maeda, H)


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TechCrunch Japan

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