再編の必要性に迫られるスマホ業界を牽引する見本市MWCは、また同じことの繰り返しになるのか?

いつからこうなったのか正確なところはわからないが、Mobile World Congress(モバイルワールドコングレス、MWC)はある時点でスマートフォンの展示会になった。テック見本市の世界に身を置くのはすばらしい。携帯電話のインフラの世界ではほとんど欠けている、外向きの興奮があるのは確かだ。

大手の携帯電話会社の大きなブースと派手なプレスカンファレンスは、それこそニュースを生み出すコンテンツであり、そうでなければ取引だけのイベントになってしまうかもしれないものに世界中の目を向けさせる。ハードウェアメーカーは、こうした展示会と連動した発表サイクルに組み込まれてきた。CESでは、家電製品、ウェアラブル製品、食器洗い機、そして自動車までもが発表される。しかし、MWCでは携帯電話が主役だ。

ただ、ここ数年、スマートフォン業界は大きく冷え込んでいる。斬新なものから必需品への移行は避けられないが、世界的なパンデミック以前から、スマートフォンの販売はすでに停滞傾向にあった。ユーザーが通信会社のアップグレードサイクルについていかなくなり、購入習慣が鈍化した。また、プレミアム端末の価格が1000ドル(約11万5000円)超と高騰するにつれ、アップグレード必須の機能のペースもゆるやかになった。

マーケティング部門がいくら説得しようとも、家電においては世代を超えた技術の革新が毎年起こるわけではない。このような状況では、皮肉なことに意図しない方への展開もある。スマートフォンは、各社がしのぎを削っているうちに全体的にかなり良くなってきた。500〜600ドル(約6〜7万円)以上も出せば、最近では失敗することはまずない。

もちろん、一部のデバイスは他のデバイスより優れているが(そうでなければ、筆者は仕事を失うことになる)、業界の進歩により、製品は耐久性が増し、バッテリーは長持ちし、スペックも向上している。その結果、製品の寿命を人為的に短縮するような計画的陳腐化も以前のようではない。確かに、仕様に関係なく(筆者はおそらくそうした一部の仕様について書く)、毎年アップグレードを要求する熱狂的な人たちが常に少なからずいる。しかし、全体として、携帯電話はより良くなっていて、人々は長くそれらを保持する。埋立地にとっては純粋に良いことだが、販売面では踊り場となる。

これらのことは、成熟したカテゴリーでは予想されることだ。iPhoneが登場して2022年で15年だ。Android端末も来年15年目を迎える。しかし、販売台数の減少傾向は、パンデミックによって加速した。まず、人々が家から出られなくなったという単純な事実がある。ある人は職を失い、また別の人は休業を余儀なくされ(その後の大辞職はいうに及ばない)、可処分所得が端末買い替えを促すものになった。家電製品に使っていた金を、代わりにホームオフィス改装に使うようになった。

そして、サプライチェーンが滞り、チップ不足に陥った。つまり、多くの市場で、アップグレードをしたい人がそうすることができなかった。そして当然のことながら、これらの問題は、チップメーカーや部品メーカーに対する影響力がはるかに小さい中小企業に不釣り合いな影響を与えた。

どう考えても変なMWCになる運命だった。2020年には、CESがぎりぎりで開催を終えた1カ月半後に、主要テックイベントの中で最初に開催を取りやめたものの1つになった。2021年の展示会は、かなり規模を縮小して行われた。2022年は、CESとMWCの運命が少し逆転し、MWCはオミクロン変異株による最悪の事態から逃れたようだ。一方、CESでは、開催を前にしてテック界の大手ブランドがオミクロン変異株の影響で二の足を踏むことになった。影響力の大きな他の主要グローバルイベントはいうまでもない。

筆者は2022年の展示会には参加しない。バルセロナで1週間過ごせなかったことは今も悲しいが、結局、参加はさほど理にかなうものではなかった。展示会はこの仕事の大きなやりがいの1つだった。世界有数の都市で、TechCrunchの奇妙な冒険の数々が繰り広げられるという魅力的な展示会だ。そんなことに興味を持ってくれる8人の人たちのために、いつか回顧録を書くかもしれない。

聞いたところ、数日後に迫ったこの大きな展示会は、あまり話題になっていないようだ。大規模な対面式イベントに対する一般的な違和感に加え、世界最高のスマートフォン発表の場としてのMWCの終わりの始まりを示しているような要因が重なっている。モバイルネットワークとインフラに関する主要イベントとしての命は、たとえ外見上の輝きが失われたとしても、確かに残されている。

Apple(アップル)のように、各社が独自に開催するイベントでデバイスを発表する傾向が広がっている。この動きは、やはりパンデミックによって加速した。企業は遠隔プレゼンテーションのために独自のインフラを整備することを余儀なくされたからだ。Samsung(サムスン)は今月初めにS22を発表し、まさにそれを実現した。もちろん、すべての企業がAppleやSamsung(あるいはGoogle)のような影響力を持っているわけではなく、MWCやCESのようなイベントに自社を結びつけることはまだ意味がある。

モバイル業界全般も、ここ数年で目覚ましい変貌を遂げた。LGは携帯電話の製造をやめた。HTCはまだ製造しているかもしれないが、少なくとも劇的な方法でこのカテゴリーから手を引いている。同社は前述の最初のAndroid携帯のメーカーであるため、これは注目に値する。一方、Huawei(ファーウェイ)は、Android OSとQualcomm(クアルコム)のチップの使用を禁止する制裁を科されるなど、最近多くの問題に対処している。しかし、現実のものとなったHarmonyOSの携帯電話をいくつか見ることができるかもしれない。

後者については、QualcommのSnapdragonのリリースサイクルが、展示会会場Fira de Barcelona以外のところ息づいていると言ってもよいだろう。最新のSnapdragonフラッグシップの使用は、実際には差別化要因ではないが(Qualcommは世界のモバイルチップ市場の3分の1弱を占めている)、企業はそれを使っていち早く市場に参入することで、若干のアドバンテージを得ることができる。Qualcommの大きなイベントはいま毎年12月に開催され、発売時期はどんどん早まってきている。

Lenovo(レノボ)は、Motorolaの新しい携帯電話Edge Plusを発表したばかりで、主に低価格志向のこのブランドは1000ドルの大台にのせないようにしている。つまり、Motorolaの親会社はノートパソコンに固執する可能性が高いということだ。同様に、SamsungはGalaxy S22をすでに発表しており、この展示会で新しいGalaxy Bookを発表するものと思われる。どちらも技術的には「モバイル」と言えると思うが、スマートフォン展示会としてのMWCのイメージをさほど高めはしない。

そのため、主要なプレイヤーはあまり残っていない。Huawei陣営が泥沼から抜け出そうとしていることに加え、他の中国メーカーもこの空白を埋めることができるかもしれない。Oppo(オッポ)のOnePlusブランドは、CESを前にフラッグシップ端末を発表したが、親会社は展示会の場を利用して何らかの発表を行う可能性が十分にある。

TCLも同様で、独自のブランドを確立しようと引き続き取り組んでいる。一方、Xiaomi(シャオミ)とVivo(ビボ)は、母国とインド以外の市場での地位確立に取り組んでいる。ただし、世界1位と2位のスマートフォン市場は成長の余地が十分にある。

MWCは来週開催されるが、この展示会、そして業界全般の行方を断言するのは時期尚早だ。せいぜい、ハードウェアメーカーにとって奇妙な時期の移行期間、つまり、業界が次の大きなディスラプターにぶつかることを期待して地平線に目を向けているぎこちない過渡期だ。

画像クレジット:Pau Barrena/AFP / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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