出版社の教材を便利な「デジタル問題集」に進化させるLibryが3億円調達、全国数百の中高で活用進む

中高生向けのデジタル問題集「Libry(リブリー)」を開発するLibryは8月29日、グロービス・キャピタル・パートナーズ、みらい創造機構を含む複数の投資家を引受先とした第三者割当増資などにより総額約3億円を調達したことを明らかにした。

同社は今年3月に社名(forEst)とプロダクト名(ATLS)を共にLibryへと変更。資金調達は昨年forEst社の時代に数億円を調達して以来約1年半振りとなる。

Libryでは調達した資金を用いて人材採用を進めるほか、提携出版社およびサービス導入校の拡大、プロダクトのアップデートに向けた取り組みを強化する計画だ。

既存の問題集をデジタル化し、便利な形に進化させて提供

Libryは出版社が発行している既存の問題集や教科書、参考書などを電子化した上で、紙の教材にはないスマートな機能をいくつか搭載したデジタル問題集だ。別の表現をすれば「普段から使い慣れた教材を、より効果的な学習がしやすい形にアップデートするサービス」と言えるかもしれない。

ポイントは従来のやり方を大きく変えることなく使えること。Libryのコンテンツは出版社の教材のみで、普段学校で使っている教科書や問題集がほとんど。タブレットやスマホ端末で教材を開きながら、普段通り「紙のノートとペン」を使って問題を解いていくのが基本的な使い方だ。

それだけだと単なる電子書籍にすぎないけれど、Libryの場合はそこにデジタル問題集ならではの便利な機能が付いてくる。

わかりやすいのが学習の履歴がたまり自分だけのデータベースができる「学習履歴機能」。問題集のページにはストップウォッチが搭載されていて、それを使えば「自分がいつ、どの問題をどれくらいの時間で解いたのか」が自動で記録される。

  1. s1_問題集一覧画面 (1)

    問題集一覧
  2. s2_問題集紙面画面

    問題集紙面
  3. s3_問題回答画面

    問題解答
  4. s4_解答結果画面

    解答結果
  5. s5_学習履歴

    学習履歴

問題を解いたノートを撮影して学習履歴に紐付ける仕組みがあるので、具体的にどのようなアプローチで取り組んだのかまでしっかりと蓄積していくことが可能。自分の得意不得意や解き方の傾向、間違いっぱなしになっている問題などをいつでも確認しやすいのが特徴だ。

その履歴を基に以前学習した問題を忘れそうなタイミングでレコメンドする「復習支援」機能や、苦手そうな問題をレコメンドする「挑戦問題」機能を実装。分野・単元・使われている知識を軸に教材横断で類似の問題を検索できる仕組みなども取り入れている。

従来のタブレット版に加えて、3月にはスマホ版もリリース

現在Libryでは6社の出版社と提携し数学、英語、物理、化学、生物の5科目に対応。取り扱い書籍数は120冊を超える。

今のところ学校現場を通じてサービスを提供している例がほとんどで、トライアルでの利用も合わせると全国で数百の中学校・高等学校で活用されているという。一部の書籍のみが対象にはなるが、公式のオンラインストアで販売されているものについては誰でも購入・利用することができる。

「(生徒ユーザーからは)そもそも重たい紙の問題集を常にカバンに入れて通学する必要がなくなった、カバンが軽くなったという声が多い。その上で慣れ親しんだ教材や勉強方法を変えることなく、便利な機能が追加され効率よく学習できるようになったという点が好評だ。学校側・先生側にとってもこれまでの指導方法を大きく変えずに導入できる点は評判が良い」(Libry代表取締役CEOの後藤匠氏)

デジタル問題集のデファクトスタンダード目指す

Libry代表取締役CEOの後藤匠氏

近年は学校教育におけるICT活用というテーマが社会的にも話題になることが増えてきた。6月には教育情報化推進法も成立し、今後さらに教育現場でのICT環境整備やデジタル教科書などの活用が本格化していくはずだ。

後藤氏も「実際に学校現場に出向いていてもここ1年半ほどで空気感が変わり、確実にICT活用に前のめりになった人が増えている」と話す。

当初Libryはタブレット端末用のプロダクトとしてスタートしたこともあり、導入に至るのは生徒にタブレットを支給している私立校がほとんどだった。ただ今年3月のスマホ版リリースを機に公立校への導入が加速。実際に公立校の現場で、生徒各自のスマホを用いながらLibryが活用される事例も出てきている。

特に地方の公立校などでは、ICTを積極的に取り入れたい気持ちは強い一方で予算の関係上踏み切れないケースも多いそう。その点Libryは実際に教材が購入された際のレベニューシェアのみを収益源としているため(教材の販売代金を出版社とLibryでシェアするモデル)、学校側は無料で導入できるのもポイントだ。

後藤氏によるとLibryは生徒の学習を支援するだけでなく「先生側の働き方改革をサポートする役割」としても効果が出始めているそう。Libryには生徒側のメインサービスとは別に先生用の宿題管理ツールがあり、これを通じて膨大な時間がかかっていた宿題業務に効率よく対応することができるという。

「従来は『宿題を出して、回収して、分析する』という工程を全て手作業でやっていた。Libryでは各生徒がサービス上から宿題を提出するので、回収する作業は不要。提出されたタイミングで確認できるので、空き時間を活用して各自へフィードバックすることもできる。問題ごとの正答率まで自動で集計されるので、エクセルを使って自身で分析する手間もなくなる」(後藤氏)

生徒がアプリから提出した宿題が自動で集計・分析されていくので、エクセルなどに手動で打ち込みながら集計する手間もない。先生は生徒の正答率や解き方などをチェックして授業の内容を考えたり、個別のフィードバックに時間を使うことができる 

ある学校では先生の1日あたりの業務時間が2〜3時間ほど短縮された例もあるとのこと。宿題業務の時間を縮めることができれば、長時間勤務を減らすことに繋がるだけでなく、授業の準備に時間をかけたり、各生徒ごとのケアにより多くの時間を使えるようになるといった効果も見込めるだろう。

最近は出版社に対して先生側から「この教材もLibryで使えるようにして欲しい」と要望が届くことも増えているようで、出版社との連携強化を積極的に進めているとのこと。今後も提携出版社・コンテンツの拡充と導入校の拡大を大きなテーマに、調達した資金を活用しながら事業に取り組んでいく方針だ。

「各出版社と協力しながら学校市場を開拓できてきている。教科書や問題集は全ての生徒が使うものなので、そこにアプローチできる価値は大きい。まずはしっかりとユーザー体験を作り込み、市場に浸透させて『デジタル問題集のデファクトスタンダード』を目指す。ゆくゆくは蓄積された教育ビッグデータを使い、より豊かな学びを提供するチャレンジもしていきたい」(後藤氏)

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TechCrunch Japan

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