暗号資産取引所は、一部のメジャーな暗号資産を個人投資家にとって親しみやすいものにしてくれたが、分散型金融(DeFi)がたくさん抱えている込み入った複雑性はその提供実体があまりにも多様なせいもあり、ベテランの投資家すらよくわかっていないことがある。
分散型金融の「インターフェイス」で暗号資産の投資家に提供するZerionが、最近の成長によりVCたちの関心を集めている。暗号資産の新たなゴールドラッシュの中、同社は2021年に行われたこれまでの取引量で約6億ドル(約660億円)を処理し、今や月間アクティブユーザーは20万を超えているとCEOのEvgeny Yurtaev(エフゲニー・ユルタエフ)氏はいう。
同社はまた、Mosaic VenturesがリードするシリーズAのラウンドで820万ドル(約9億円)を調達した。これに参加した投資家は、Placeholder、DCG、Lightspeed、そしてBlockchain.com Venturesなどとなる。Zerionによると、MosaicのToby Coppel(トビー・コッペル)氏とPlaceholderのBrad Burnham(ブラッド・バーナム)氏が同社の取締役会に加わった。
Zerionは同社のアプリを通じて顧客に、Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーン上の5万件あまりのデジタル資産と60のプロトコルへのアクセスを提供し、それによってDeFiのUIを簡素化している。ユーザーはそのアプリから、CoinbaseやGeminiなどの取引所と同じ感覚でトークンにアクセスして投資するが、そこで使うのはMetaMaskのような自分のパーソナルなウォレットだ。そのため、ユーザーの資金と秘密鍵をZerionがコントロールしたりアクセスすることはない。長年、暗号資産の普及に努め、その作者でもあるユルタエフ氏が、最もこだわるのはその点だ。
ユルタエフ氏は「DeFiの世界は、トークンやプロトコルの種類が非常にたくさん存在します。理論的には、それらのナビゲートは容易なはずですが、現実はその全体が混乱しています。もっと、わかりやすいものにしていきたいと考えています」という。
イーサリアムとビットコインの価格の大きな成長により、DeFiの扱い額は2021年に急騰し、年初の200億ドル(約2兆1980億円)弱から5月には900億ドル(約9兆8900億円)近くになった。しかしDeFiの市場が全体としてはビットコイン並に不安定であることが立証され、マーケットの大きさは過去2カ月で35%ほど縮み、わずか570億ドル(約6兆2640億円)弱になった。
同社のiOSとAndroidアプリは、暗号資産の投資家たちにとって、マーケットと彼らが支持しているトークンの現状を追跡するための、特に人気の方法になっている。平均的ユーザーは、1日に9回以上アプリを開くと同社は述べている。
2021年の暗号資産の復調により、財貨そのものだけでなく、取引の便宜を提供するプラットフォームにも、投資の対象としての関心が集まった。2021年6月はVCのAndreessen Horowitz(a16z)が、分散型金融も含め、暗号資産分野のプロダクトを開発するスタートアップに投資するための、22億ドル(約2420億円)ほどのファンドを構築している。
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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Zerion、暗号資産、分散型金融(DeFi)
画像クレジット:Zerion
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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)