動画マーケ=テレビCMは古い、ウェブで成長の映像制作「LOCUS」が1.8億円調達

去年も聞いたかもしれないが、2014年は「動画元年」と言われる。調査会社のシード・プランニングによれば、2013年の国内ネット動画広告市場は、前年比329%の132億円に成長しているのだとか。いつが動画元年かはさておき、日本では広告以外にもサービスやアプリの紹介、求人、展示会などで動画の採用が進んでいるは確かだ。こうした動画マーケティングの波を受けてか、映像制作を手がけるLOCUS(ローカス)が15日、ニッセイ・キャピタルとみずほキャピタルから1億8000万円の資金調達を実施した。

クラウドソーシング×受託制作で競合優位

LOCUSの特徴は、審査を通過したフリーランス映像クリエイター400人超に制作を依頼できる「クラウドソーシング機能」と、従来型の「受託制作機能」のいいとこ取りをしていることだ。

実写やCG、アニメーションなど幅広い表現が可能なクリエイター、クライアントとの直接取引による中間マージンの排除、社員によるクライアントのヒアリングやクリエイターの品質管理――こうした強みで、競合となる制作会社や広告代理店、クラウドソーシングに優位点を出そうとしている。

8月には、ランサーズがパートナー企業向けに自社会員のデータベースを公開する「Lancers Open Platform」を発表するのに伴い業務提携。ランサーズに寄せられる動画制作依頼に対して、LOCUSが企画や要件定義、クリエイターのアサイン、ディレクションを行う取り組みも開始している。

制作の流れはまず、営業担当が映像を作る目的をヒアリングし、ぼやっとした要望を具現化して映像の企画概要を提案する。企画概要と見積りにOKが出たら、実際にLOCUSの営業とディレクター、フリーランスのクリエイター、クライアントがミーティングを実施。映像のシナリオ、スケジュール、役割分担、キャスティングなどをすり合わせた上で、撮影と編集に入る。

映像の初稿はクライアントと一緒に確認しながら修正し、その後はメールか電話でやりとりをして完成となる。映像修正のやりとりもオンラインでできれば便利そうだが、この点については今回調達した資金でシステムを強化する。具体的には、クライアントとクリエイターが同じ画面で動画を共有し、修正点をテキストで動画にかぶせることができる。当事者限定のニコニコ動画のようなイメージだという。

「動画マーケティング=テレビCM」の固定概念は崩れ始めている

サービスプランは映像編集やナレーションなどの限られた工程のみを請け負うパッケージ(19万円〜)とオーダーメイドがあり、2013年の制作実績は1000件以上。受注件数の6割以上を占めるオーダーメイドの料金は2万円〜1000万円とピンキリだが、発注件数ベースでは50万円〜60万円がボリュームゾーンだ。

これまでに、日本生命やすかいらーく、LINEといった大手企業から中小ベンチャーまで600社以上と直接取引。売上は2013年度が2億1000万円、今期はその倍近くの約4億円を見込んでいる。LOCUS代表取締役の瀧良太によれば、最近では初めてウェブ動画を作る大手企業からの引き合いが多いのだという。

「例えば、消費財メーカーが新商品を出すときに、反響が読めないテレビCMの予算枠を抑えるのはなかなか難しい。だったら、ウェブ広告の反応を見てからテレビCMを流すか決めよう、というメーカーが増えてきました。テレビ以外に動画を流せる面(ウェブ)が整ったことで、『動画マーケティング=テレビCM=高価』といった固定概念は崩れつつあります。」

入社1年目に社内ベンチャーで映像事業→黒字化→事業撤退→MBOで会社設立

2010年4月に設立したLOCUSは、映像制作に特化したクラウドソーシング「Viibar」の競合と言える。LOCUSもスタートアップのように見えるが、その歴史は少し長い。

瀧は人材派遣のビー・スタイルに新卒入社した2006年、社内ベンチャーとして映像制作の受託事業を発足。自社の顧客から採用に使う動画の受注が相次ぎ、その後は企業紹介や研修用の動画に横展開して黒字化を達成した。しかし、リーマンショックの煽りで新規事業を撤退することが決定。そこで瀧が自らMBOを行い、LOCUSを設立するに至った。

今回調達した資金では、先述したクライアントとクリエイター間で動画データの授受を行うシステムの強化に加えて、営業人材を増員。さらには、
動画コマースや動画クリエイター育成などの新規事業開発も進め、2019年までにIPOを目指すそうだ。


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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。