医療分野・産業分野でのAIソリューション開発を手がけるHACARUS(ハカルス)は11月16日、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先は、既存株主の大原薬品工業、みやこキャピタル、中信ベンチャーキャピタル、またMTG Ventures、りそなキャピタル6号投資事業組合、PARKINSON Laboratories。京都銀行、日本政策金融公庫からの融資も実施している。今回の資金調達は、2020年4月に実施したシリーズBと同じラウンドで、これにより累積資金調達額は約13億円となった。
調達した資金は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)および創薬支援のR&D強化、大手企業との共同事業を推進するビジネス開発・コンサルタント人材の採用、日本国内向けに開発されたAIソリューションの欧州、北米、東南アジア地域での展開に用いる。
情報科学を用いた材料開発の手法MIでは、近年、AIの適用が進んでいるものの、AIや提示した新材料の有効性確認には実験が必要であり、ひとつの実験には数ヵ月かかる。このため、いかに少ない実験で最適な新材料に辿り着けるかが課題となっているという。
HACARUSが注力するスパースモデリングは、この課題に対する解決策を提供。ヒトが持つ経験・勘とスパースモデリングを組み合わせることで、短時間で最適な新材料に辿り着くための手法の研究開発に取り組んでいる。
MIおよび創薬支援のR&D強化
創薬分野においても、MIと同様AIが提示した化合物の有効性・毒性の確認には実験が必要であり、ヒトでの治験を含めると数年単位の時間がかかり、いかに少ない実験で最適な化合物に辿り着けるかが課題となっている。
さらに近年では、ゲノム創薬と呼ばれる、ゲノム情報と患者の反応性情報から、副作用の少ない薬の開発する手法が注目を集めている。また既存の化合物から、様々なデータベースを網羅的に探索することでターゲット疾患の候補を導き出す手法も注目されている。HACARUSは、これら分野においても、スパースモデリングを用いた独自の創薬支援の研究開発に取り組んでいるとした。
AI導入のためのコンサルティングを強化
HACARUSは、100社超の企業・団体に対してAI技術の開発・実用化を行ってきた知見を活かし、企業へのAI導入を支援するコンサルティング業務の強化も行う。AI導入前のビジネスインパクト解析、要件定義、データ解析、アノテーション、モデル開発、アプリケーションのプロトタイプ開発など、AI導入に必要な作業をすべてワンストップで提供する。
AI導入の失敗原因の大半は、AI導入により得られるビジネスインパクトが小さすぎること(誤った課題設定)、AIに対する現実的ではない期待(誤った目標設定)が占めているという。同社はこれまで培ったAI導入の成功事例のノウハウを駆使して、企業でのAI導入を成功に導くとしている。
またAI導入後の運用に必要な人材の育成についても、サービスの強化を実施。企業において不足するデータサイエンス人材をトレーニングプログラムを通じて迅速に育成することで、企業はAIを自社で運用する人材を自社で確保できるようになり、さらに企業内での他の課題に対してAIを適用可能となる。
東京R&Dセンター
HACARUSは2020年10月、東京R&Dセンターを開設。これまでは本社機能を京都、アプリケーション・システム開発をフィリピン子会社(マニラ市内)に持たせる2拠点体制を採用していたが、これに加えてHACARUSが今後注力する分野の研究開発を東京にて実施する。
東京R&Dセンターでの活動は、論文やセミナーなどを通じて発信。国際的な視点を持ったサービス開発に取り組み、将来的に世界進出を行う足掛かりにする。
HACARUSは、AIベンチャーとして、2014年に京都で創業。同社の強みは、少量のデータからの特徴量抽出に優れ、解釈性の高いスパースモデリング技術にあるという。HACARUSでは、このスパースモデリング技術をAIに応用している。
現在、AIの主流技術となっているディープラーニングは、学習に大量のデータが必要であり、AIの意思決定の過程がブラックボックス化されてしまうという課題を抱えている。また、学習フェーズにおいて大量の計算資源が必要になることから、分析に膨大な時間がかかったり、電力の消費量が多いという課題もある。
HACARUSは、このようなディープラーニングが抱える課題を独自のAI技術によって解決。また、スパースモデリングを使うことにより幅広い業種・業態のAIに関連する課題解決を実現しており、これまで100社を超える企業・団体に対してAI技術の開発や実用化に取り組んできたという。今後も、AI技術基盤のさらなる強化と既存サービスの拡販に注力し、さらなる事業拡大を目指すとしている。
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