膨大な量のノイズとわずかなシグナルを含む世界では、消費者の選択を簡単なものにするスタートアップの存在は理に適っている。Career Karmaは学生のテックブートキャンプ選びを手伝っており、Stackin’はネオバンクと節約アプリの世界でミレニアル世代を誘導している。そしてボストン拠点の新たな会社はマーケットに出回っている最新の医療機器の情報を医師が把握するのをサポートしている。
Mike Monovoukas(マイク・モノフカス)氏、Lee Smith(リー・スミス)氏、Robert Coe(ロバート・コー)氏によって2019年に設立されたAcuityMD(アキュイティエムディー)は、格納されていることが多い医療機器データを開放したいと考えている法人向けのソフトウェア企業だ。その目的を達成するために、同社は米国時間5月24日の週にBenchmarkがリードしたシードラウンドで700万ドル(約7億6000万円)を調達した。
資金調達の一環として、BenchmarkのゼネラルパートナーであるEric Vishria(エリック・ヴィシュリア)氏がAcuityMDの役員会に加わる。医療テック企業をサポートするために2019年に1億ドル(約109億円)をクローズしたAjax HealthもAcuityMDのラウンドに参加した。シード資金でAcuityMDは現在8人のチームを年末までに倍増させ、1つのとある分野に投資する計画だとモノフカス氏は話した。その分野とは何をおいても「プロダクト」だ。
AcuityMDは、アイテムの販売から術後患者のその後の経過まで医療機器のライフサイクル全般を追跡するデータプラットフォームだ。1つのプロダクトについてある種のメタデータを与えるべく、個々の医療デバイスについての産業・マーケットデータを統合している。
「毎年発売されるプロダクトが1000点以上あり、医師がフェローやレジデントとしての期間を終えた後にそこら中にある最新かつ最もすばらしい医療テクノロジーの情報についていくのはほぼ不可能です」とモノフカス氏は述べた。「当社はこれをソフトウェアと調整の問題だととらえています。そこら中にデータはあるが、意思決定者に辿り着くという点では非効率です」。
同氏は、自身の家族が連続で手術を受けなければならなかったときに医療デバイス管理の非効率さを直に体験した。
「私がすばらしいと思ったのは、メーカーが何を使うべきかについて多くの情報を持っているということでした。しかし、その情報は正しいタイミングで適切な医師に伝わっていませんでした」と同氏は指摘した。「私が持った基本的な認識は、この業界の情報フローはやや壊れているというものでした。それは有能な医師や外科医であるということの問題ではなく、情報移送が欠如していました。これはデータ主導の世界においてはクレイジーなことです」。
そしてBain & Companyや医療デバイス会社で以前働いたことのあるモノフカス氏は、医療デバイスを長期療養患者の経過により対応するものにするためにどのようにデータを使うかについて考え始めた。より多くの情報の恩恵を受ける主な関係者は医師である一方で、AcuityMDのチームは主要顧客としてデバイスメーカーにも目を向けた。
その理由の1つは、病院と医師は販売先としては面倒なことで悪名高いためだ。別の理由は、医療デバイスのパフォーマンスデータはメーカーの販売チームが販促したりターゲットを絞ったり、そして売り込んだりするのに使うことができるキー信号だからだとモノフカス氏は筆者に語った。自社のデバイスの中で多くの外科医が必要とするかもしれないものに関するデータから、特定のデバイスの長期的な結果に至るまで、メーカーが自社のプロダクトのためにマーケットの可視性をいかに欲しているか同氏は説明した。
データは販売チームが特定のプロダクトで10人の医師をターゲットとすることがいかにメーカーにとって財務的にそして残るマーケットとの文脈において影響を及ぼすかを先制的に理解するのに役立つかもしれない。
AcuityMDは医療デバイスのリアルタイムデータベースになることを目指している。長期的には、かなりの需要がある重要なトランザクションにおいてメーカーと外科医をつなげる同日配送サービス事業者と自社を位置付けることができるかもしれない。モノフカス氏はロジスティックと在庫が医療デバイス産業のための「内臓にダメージを与えるような」問題である一方で、まだソリューションがないと話す。AcuityMDが各施設で必要とされる在庫を予想することができるようにったときに出番だと同氏はみている。Chloe Alpert(クロエ・アルパート)氏によって共同創業されたMedinasのような一部の企業が病院のシステムの中でどのように運営・管理しているのかに似ている。
しかし差し当たってAcuityMDは、自社のプラットフォームとベンチャー資金をプロバイダーシステムの外で使うのがベストだと考えている。同社は病院と外科医に関する多くのデータをMedicare CMSと保険会社から仕入れていて、プロバイダー側でしなければならないことはない。
問題は、そうしたデータソースが本当の動向を引き出すのに十分よいものであることを確保することだ。この点についてAcuityMDは十分だとしている。
「デジタルヘルス会社はゆくゆくはヘルスケアデータ会社になると誰かがいうのを聞いたことがあります。当社はやや異なるアプローチをとっています」とモノフカス氏は話した。
カテゴリー:ヘルステック
タグ:AcuityMD、資金調達、医療
画像クレジット:akinbostanci / Getty Images
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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi)